THE EPOCH TIMES

欧州支援の見返り要求に警戒論 専門家「中国も困窮」

2011年11月05日 07時27分
 【大紀元日本11月5日】ヨーロッパの信用不安を食い止めるために、中国が救いの手を差し伸べるのか。フランスのカンヌで開かれた第6回主要20カ国・地域(G20)首脳会議でそんな駆け引きが繰り広げられた。

 欧州金融安定基金(EFSF)の支援機能を現在の4倍の1兆ユーロ(約108兆円)に拡大すると先週のEU首脳会議で合意された後、世界一の外貨保有国である中国がその拠出先として注目を集めている。

 チャイナマネーへの期待感が寄せられる一方、中国政府が投資をカードに、ヨーロッパに見返りを要求することへの警戒感も広まっている。

 中国政府が求める「見返り」

 3日付けの読売新聞(電子版)は、EU外相のキャサリン・アシュトン氏は、中国がEUに求めている対中武器禁輸措置の解除について、前向きに検討していると伝えている。アシュトン氏は、「EUは中国との強固で建設的な関係を望んでいる。中国の主張に耳を傾けることに前向きであることが重要だ」と述べたという。

 対中武器禁輸は1989年天安門事件に抗議してEUが発動した措置だ。これまでも中国は解除を求め続けてきたが、今回は欧州支援のカードの1つとして使われた。武器禁輸解除により、中国はヨーロッパから先端的な武器を仕入れることができ、それにより、アジアや世界で軍事的な優位を確立し、自身の「核心利益」を拡張させることができる。

 当然、中国の狙いは対中武器禁輸の解除に止まらない。「市場経済国」への早期承認や、人民元切り下げ問題や人権問題への批判を抑制するなど、目論みは多岐にわたる。

 これらの狙いを警戒して、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は1日と3日にそれぞれ、「EFSFは中国に距離をおくべき」との評論を掲載した。

 2つの評論とも、ユーロ圏を全体的にみる場合、輸出入額も出入りする資金量も均衡していると指摘し、同盟国の債券もほとんどその他の同盟国が所持しているという。そのため、今回の金融危機はユーロ圏の「内政問題」であり、その本質は内部の「強勢国が弱勢国を助けたがらない」ところにあるという(WSJ)。その状況下で、中国に投資を求めるのは「利点はない」としている。

 中国にも投資する動機はあるが、その動機はEUの問題をいっそう深刻化する恐れがある、とWSJは分析する。ヨーロッパは中国にとって最大の輸出市場だ。ユーロの切り下げは人民元の相対的な切り上げに当たるため、ヨーロッパ向け輸出は悪影響を受けることは必至。つまり、ヨーロッパ経済が傾けば、中国も痛手を負うことになる。WSJは、中国が投資する動機の1つに「ユーロの切り下げを阻止する」ことだと分析する。

 だが、ユーロ高はギリシャやポルトガルなどのEU加盟国の貿易収支に悪影響を与えることになる。つまり、チャイナマネーの流入は、逆にユーロ圏の「弱勢国」の経済状況をさらに悪化させる可能性があるということだ。

 FT紙も同様な理由で、中国からの投資で「手に入る経済的な恩恵が単なる幻想」になりかねないと指摘。さらに、中国側が求めようとする「人民元切り下げ問題や中国国内の人権状況に対する批判の抑制」という見返りは、「対価として割高である」と断じた。「ユーロ圏全体は中国資金を必要としないし、むしろ距離をおくべきだ」とFTは主張した。

 中国が望む見返りの1つは、9月の夏季ダボス会議ですでに温家宝首相は提起していた。早期に中国に完全な「市場経済国」の地位を与えることだ。この地位を獲得すれば、中国は貿易交渉でより有利な立場に立つことができる。だが当時、EUの政府関係者は、中国は基準の多くを満たしてないため、早期承認の可能性は低いと応じた。

 先月末には、ユーログループのユンケル議長(ルクセンブルク首相)も、中国がEFSFに投資しても「中国に何か見返りを与えることを前提にした交渉という形にはならない」と明言し、中国を特別扱いをする意思はないとしている。

 そもそも中国に欧州支援する力はあるのか

 中国の3兆ドルを超える外貨準備高は、EU支援に期待される財源となっているが、在米の中国人経済学者・何清漣氏は、中国が実際に動かせる外貨は5000億ドルに過ぎず、EUが期待する1兆ドルの投入はそもそも不可能だと見ている。

 何氏によると、中国が保有する外貨のうち、「米国債が1.15兆ドル、ユーロ建て債券が5000億ドル、日本国債は金額が不明」だという。さらに中国はロシアやアセアン諸国との間に通貨スワップ協定を結んでいる。これらを除くと、中国の流動可能外貨は5000億ドル水準であり、非常時に必要な流動性外貨枠とほぼ等しいという。

 さらに、「中国自身の経済困窮が始まったばかりだ」と何氏は指摘。中国政府の金融引き締め政策や不動産取引制限策(限購令)により、多くの不動産開発業者は苦境に陥っており、また、土地譲渡金を重要な財政収入源とする地方政府は負債額が膨らむ一方だ。さらに、金融引き締めが原因で金融機関からの融資を受けられない中小企業は、民間の高利貸しに手を出すが、返済できずに破産する事態となっている。さらに、融資元は焦付きで元本が戻ってこないという大きなリスクにさらされている。

 国際政治評論家の林保華氏はいくつかの具体例を挙げて、中国は「自身が吹聴するほど経済状況がよくない」との見解を示した。7月に発表された北京新空港(首都第二空港)の年内着工の建設予定は、10月下旬になると延期が決められている。原因は北京市の4兆5千億円を超える巨額の財務残高。

 また、青海省とチベット自治区を結ぶ青蔵鉄道は中国の「核心利益」に触れるにもかかわらず、一部のトンネル工事は資金不足のためすでに半年中断している。さらに、中国の西北と西南を貫通する蘭渝鉄道(蘭州ー重慶)も資金繰り問題で9割が休止している。その両路線を管轄する中国鉄道部は今年の6月末までに2兆900億元(約25兆円)の負債総額を記録した。

 これらの状況を踏まえて林氏は、「中国政府は(EUより)もっと手を焼いているはずだ。EUの救世主になれるわけもない」と結んだ。

 (翻訳編集・張凛音)
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