巨額の補助金、過剰な漁…中国の遠洋漁業が世界にダメージ 米海洋安全フォーラム

2020/01/09
更新: 2020/01/09

ワシントンのシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は7日、「海洋安全フォーラム」を開催した。中国共産党の広域経済圏構想「一帯一路」が、地球の海洋生態環境に与える影響について議論した。このなかで、世界でも漁業に巨額な補助を出す中国が、自国の漁業経済に有利な国際ルールを形成しているとの問題が指摘された。

登壇者らは、中国の過剰な漁業が生態系の災難を引き起こしたと指摘した。

インドネシア海洋水産部は近年、中国を含む外国漁船の違法操業を繰り返し摘発してきた。南シナ海の主権を持つと主張するインドネシアは2020年の新年初頭、依然として自国の領有権を主張する強硬な態度を変えないとした。

インドネシアの防衛司令官であるヨド・マゴノ(Yudo Margono)海軍中将はこのほど、中国に対して声明を発表し、中国の漁船と艦艇がインドネシアの排他的経済水域(EEZ)に不法侵入するのを阻止するために軍隊を出動させ、主権を守るとした。

フィリピンや台湾も、長年にわたり中国漁船の密漁に悩まされてきた。

世界の海洋保護を調べる非営利団体Oceanaの上級顧問、周維徳(フィリップ・チョウ)氏は、中国は遠洋漁業を発展させるため、国を挙げて補助金を出し世界の漁業覇権を得ようとしていると指摘した。

周氏は、「中国は漁業に対する補助金の額が世界で最も高く、1年で72億ドルにも上る。中国に次ぐ欧州連合は38億ドルで約半額、その次が韓国と日本。中国の漁業向け補助金は、世界各国をはるかに上回る」

世界の漁業補助金は2018年には350億ドルと推定される。そのうち、中国だけで総額の約20%を占める。周氏は、中国には3000~3500隻の遠洋漁業船があり、少なくとも50カ国の排他的経済水域で漁業を行っていると見積もっている。

中南米から西アフリカにいたるまで、全世界の海上に中国籍漁船が操業している。米国戦略国際問題研究所のジョナサン・ヒルマン上級研究員は、中国の遠洋漁船は現在、約30%がアフリカに集中しており、中国の「一帯一路」の「一路」にあたる「海上シルクロード」に合わせて、沿岸国との関係を強化している。ヒルマン氏は、中国との協力によって経済利益を得られるかもしれないが、海洋の生態危機を重視しなければならないと指摘した。

「中国の遠洋漁業の発展は現在の国際法を遵守していない。中国の『一帯一路』が引き起こした海洋生態危機に注意が向けられるよう希望する」と、ヒルマン氏は海洋研究者たちに連帯を呼びかけた。

アルゼンチンと西アフリカのセネガルはかつて、中国の不法漁業に抗議していた。しかし、中国との海鮮食品の年間貿易額が950億ドルに達し、世界全体の海魚・鮮魚貿易の40% を占め、抗議は沈静化していった。

漁業の持続的発展に関するルールがないため、中国は巨額な利益を提げて、各国と個別に協定を結んでいる。

カナダの海洋生態学者ベヒア・ベルハビブ(Dyhia Belhabib)氏はまた、中国は世界貿易機関(WTO)で、「違法・無報告・無規制」に行われている漁業を規制する法整備に積極的に参加しており、「自国の利益にかなうメカニズムの構築を企んでいる」と指摘した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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