中国元外交官・陳用林氏

元外交官に聞く中国共産党によるオーストラリアへの浸透工作(3)

2017年07月04日 07時00分

 豪州メディアの共同調査で、少なくとも5人の中国系人物が政治界への巨額な政治献金と賄賂を通じて、同国の内政に干渉してきたことが明らかになった。このほど、大紀元の取材に応じた駐豪シドニー中国総領事館の元一等書記官でベテラン外交官・陳用林氏は、中国共産党によるオーストラリアへの浸透工作の詳細を語った。

豪の元貿易相が中国企業「嵐橋集団」の顧問を務める

 中国当局は、また中国資本企業を通して、豪州に対して浸透工作を行っている。豪政府の退職した職員や官員らを中国企業の顧問に就かせることで、人心の収らんを図っている。

 豪ABC放送は今回、アンドリュー・ロッブ前貿易相が中国人富豪で、約5億オーストラリアドル(約425億円)でダーウィン港を99年間リースした中国企業「嵐橋集団(ランドブリッジ)」の葉成と近い関係にあると報道した。同報道では、ロッブ氏は貿易相在任中、中国当局との二国間自由貿易協定(FTA)をめぐって交渉を行った際、人民解放軍出身の葉成と接触し、嵐橋集団は中国の「民間企業」とされているが、軍とは密接なつながりがある、とした。

元外交官に聞く中国共産党による
オーストラリアへの浸透工作(1)

 また同報道によると、ロッブ氏は昨年豪州総選挙前に貿易相を辞したが、しかしその直後に嵐橋集団の社員給料名簿に同氏の名前が現れた。ロッブ氏は、毎月7万3000オーストラリアドル(約621万円)の給料を受け取っているという。

 さらに、2014年豪政府が中豪FTAの締結を決める際、中国系富豪の黄向墨がロッブ氏に10万オーストラリアドル(約850万円)の政治献金を行った。

 「ロッブ氏に関して最大な批判は、昨年国会議員を辞任した直後に年収88万オーストラリアドル(約7480万円)の嵐橋集団高級経済顧問に就いたことだ。これは、豪政府内閣の機密保持との原則に違反している」と陳用林氏が指摘した。

 また中豪FTAは、豪州の貿易拡大に有利だが、豪政府は国家安全や国内政治において中国当局に大きな譲歩をしたという。「例えば、ダーウィン港の件や、中国政府系ファンドによる豪州の農畜業への莫大な投資。さらに、中国と豪州の両国の司法制度が全く違うにもかかわらず、豪政府は連邦議会に対して『豪中犯罪人引き渡し協定』批准を推し進めた」。

中豪FTAで利益得るのは中国既得権益層

 いっぽう、中豪FTAの恩恵を最大に受けるのは中国の既得権益層で、最も打撃を受けるのは中国農村部の農民で農畜業の従業者たちだと陳氏が分析する。

 「実に、元駐豪大使の傅瑩氏(現第12回全国人民代表大会常務委員会委員)が2005年に中国当局の指導部に対して、中豪自由貿易協定について中国にとって経済的な損失をもたらすが、『政治的や戦略的に見れば大きな成果を見込める』との意見書を提出した」「このため、中国当局が中豪FTAの締結交渉を始めた。しかし、経済的な損失が大きいとされ、胡錦涛政権では、なかなか締結に踏み切れなかった。豪政府が政治的な譲歩をしたのを受けて、政治的な利益は経済的な利益より大事という中国共産党の原則の下で、習近平政権がやっと締結に踏み切った」と、陳用林氏が、中豪FTA締結をめぐる中国当局の思惑を説明した。

豪政府、「犯罪人引渡協定」批准案を撤回

オーストラリアの連邦議会議事堂(JJ Harrison)
^