米国で「孔子学院」の拠点が大幅に減少する中、中国共産党(中共)政府や組織が、海外の学生やジャーナリストを中国へ招待する交流事業を進めている。
これらは往復航空券や宿泊費などを負担する一方、主催者が設定した日程で中国各地を案内し、参加者の感想や映像を対外発信に活用するというものだ。
日本では、京都大学や同志社大学の学生向けサイトなどに、中国の在外公館が主催する無料訪中プログラムの募集情報が掲載された。米国では、習近平が打ち出した若者5万人の招待構想に基づく交流事業が多数の学校に広がり、米議会関係者から影響力工作だとの指摘が出ている。
京都大学、航空券や宿泊費を総領事館側が負担
京都大学の海外留学情報ポータルサイトには、在大阪中国総領事館が主催する「中日友好大学生訪中団」の募集情報が掲載された。
2025年度は9月21~25日の日程で中国遼寧省の瀋陽と大連を訪問した。中国までの往復航空券、現地の宿泊費、交通費、食費は総領事館が全額負担し、学生の負担は関西国際空港までの交通費や海外旅行保険料、個人的な費用などに限られていた。
2026年度は10月10~16日の日程で、上海、杭州、北京を訪問する計画だ。往復航空券や現地滞在費などは、無料(総領事館側が負担)で提供される。
参加条件には、広報活動で自身の写真や映像を使用することへの承諾、帰国後のアンケート回答と感想文の提出、総領事館で行われる総括会への参加などが盛り込まれている。
一方で、規律を守れず、団体行動ができないと判断された場合は、団員資格を取り消すことがあると明記されている。その場合、無料となっていたプログラム費用の全額を参加者が支払うとしている。参加決定後に個人的な理由で辞退した場合も、航空券など、すでに発生した費用を本人が負担する。
同志社大学でも同様の訪中団を募集
同志社大学が公開した募集要項によると、2024年9月3~10日には、在大阪中国総領事館主催の訪中団が山西省の太原と大同を訪れた。
往復航空券、現地での宿泊費、交通費、食費は総領事館が負担した。参加者には、総括会への出席、感想文の提出、広報目的での写真や映像の使用への同意が求められた。こちらも規律を乱したと判断された場合には、プログラム費用の全額を支払うとの条件も設けられていた。
米国83大学、26校が「YES」に参加
エポックタイムズによると、米国では、習近平が2023年11月、今後5年間で米国の若者5万人を中国へ招待する構想を発表した。これに基づき「中国若者使節奨学金(YES)」と呼ばれる交流事業が展開されている。
保護者の権利を掲げる米団体「Defending Education」が2026年8月に公表した調査によると、少なくとも米国内の83大学と、幼稚園から高校までの26校がYESに参加していた。
事業を運営する中国教育国際交流協会の中国語サイトは、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、習近平思想を指導理念や行動指針とし、組織運営に中国共産党の活動を組み込む方針を掲げている。
アイオワ州のマスカティン高校では、2024年1月、生徒24人と引率者4人の訪中費用を中国側が全額負担した。同校と中国との交流には、1985年に地方官僚として同州を訪れた習近平を夕食会に迎えたサラ・D・ランデ氏と、習近平との関係が背景にあったと報じられている。
新疆でダンスや書道体験
2025年6月には、シカゴのウォーター・ペイトン・カレッジ・プレパラトリー高校の生徒と教員計27人が新疆ウイグル自治区を訪問している。
現地の日程には、ウイグル族の舞踊や書道、スマート牧場、乳製品関連施設、博物館、油田展示館、和碩金沙灘での観光などが組み込まれていた。一方、中共政府によるウイグル族への拘束や強制労働、宗教弾圧などの人権問題に関する内容は、交流事業の報告には記載されていなかったと報じられた。
参加した米国の学生らによる中国への好意的な感想は、国営新華社通信などで紹介された。習近平の妻、彭麗媛氏も訪中した学生に対し、帰国後に家族や友人、学校の仲間へ中国での経験や印象を伝え、友好のメッセージを広めるよう呼びかけた。
米主要メディアの記者も無料招待
学生だけでなく、米国のジャーナリストを対象とする訪中事業も実施されてきた。
調査報道サイト「The National Pulse」の記事を転載した「Intercessors for America」によると、1990年代以降、中国外務省など中国共産党と関係する組織が米国人記者の訪中費用を負担してきた。2010年に始まった米中ジャーナリスト交流事業は、1996年から行われていた取り組みを拡大したものだという。
記事は、中国米国交流基金会(CUSEF)が事業に密接に関与していたと指摘している。米司法省に提出された外国代理人登録法に基づく資料では、メディアやインフルエンサー、オピニオンリーダーを通じて肯定的なメッセージを広め、主要メディアから好意的な報道を得ることが活動目標として示されていた。
訪中事業には、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、NPR、CNN、ロイター、POLITICOなどの記者が参加した。航空券、宿泊費、現地交通費、食費などが負担され、参加者は中国米国交流基金会 創設者の董建華氏らとも面会したとされる。
米下院委員長「プロパガンダ・影響力工作」
一方、日本外務省は2019年、日中青少年交流推進年の事業として、中国の大学生149人を日本へ招待した。参加者は植樹活動や防災、環境保護に関する講義、関連施設の視察、大学訪問や学生との意見交換などを行った。外務省は、環境や防災への理解を深め、日中の若者の友好を促進することを目的に掲げていた。
エポックタイムズなどの報道によると、米下院の中国共産党特別委員会のジョン・ムーレナー委員長は、中国教育国際交流協会や中国人民対外友好協会が関与する米中交流について、中国共産党が米国社会への影響力を拡大するための手段だと指摘した。学生を中国政府の宣伝に利用すべきではないとして、関係する学校に提携の中止を求めている。
同委員会は、交流事業の一部で参加者に中国の通信アプリ「WeChat」の利用が求められたことについても、検閲や監視、データ管理上の懸念があるとしている.
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