20年前に洗脳から目覚め中国を脱出した学者 米国への浸透工作に警鐘

2026/05/19
更新: 2026/05/19

北京の巨大な国立講堂の中、まさにその時、その場所で、張天亮(ジャン・ティエンリャン)の共産党に対する信頼は瓦解した。

1999年7月のあのうだるような暑い朝から、何百人もの人々がそこに閉じ込められ、困惑しながら待ち続けていた。

当時は誰も知る由もなかったが、それは文化大革命以来となる血生臭い迫害の始まりだった。「午後3時まで待て。テレビで放映されるから」と、当局者は彼らに告げた。

午後3時ちょうど、その事実が明らかになった。彼らを含む何百万もの人々が実践していた精神修養法「法輪功」が、中国指導部によって禁止されたのだ。群衆が衝撃を受け止める中、天井に取り付けられた多くのテレビ画面で国営のドキュメンタリー番組が始まり、法輪功の創始者である李洪志(リー・ホンジー)氏への攻撃が始まった。

張を動揺させた数々の主張の中で、彼の党への忠誠を一挙に崩壊させるのに十分なものが一つあった。それは、数ヶ月前に李氏が行った講話の短い映像クリップであり、張が以前にその全編を視聴していたものだった。その断片的な映像では、文章の途中でフレーズが切り取られ、李氏の本来の意味が真逆に変えられていた。

政権が演説を改ざんして罪をでっち上げることができるなら、他に不可能なことなどあるだろうか。

共産党はこれまでの人生のすべてにおいて、自分に嘘をつき続けてきたのかもしれない。張の頭に、そんな疑念が突き刺さった。

1年後の2000年、張は中国を脱出して米国へ渡った。26年後の現在、彼は中国史の教授、政治評論家であり、20以上の言語に翻訳された共産主義に関する数冊の書籍の共著者でもある。彼が出演したトーク番組「中国共産党文化を語る」は、ビデオの複製や放送を通じて中国国内に広まり、彼の推計では数千万人に届いたという。

彼の最も新しい取り組みは、英語版のドキュメンタリー映画『中国のステルス侵略(China’s Stealth Invasion)』である。この映画は、北京の道具箱にあるあらゆる浸透戦術を暴いている。作品は、「中国共産党が米国の開放的な姿勢や制度、依存関係を逆手に取り、いかに内部から影響力を広げているかを検証する、緊迫感あふれる衝撃の調査ドキュメンタリー」と説明されている。

張は、自分が最も人生で傷つき無力だった時期に米国が受け入れてくれたと言い、第二の故郷の自由が危機に瀕している今、声を上げる義務があると感じている。

「中国共産党は米国を最大の敵とみなしている」と、彼は大紀元(エポックタイムズ)に語った。「党がこの国を操り、その生活様式を侵食していくのを黙って見ているわけにはいかない」

ドキュメンタリー映画「中国のステルス侵略」の一場面。左は飛天学院の歴史学者で教授の張天亮氏、右はYouTubeチャンネル「China Insider」の司会者であるデビッド・チャン氏(エポックタイムズ提供のスクリーンショット)

兵器化される米国

毛沢東が米国を「張り子の虎」と一蹴した有名な発言から、習近平が掲げるグローバルな「人類運命共同体」の野望に至るまで、歴代の党指導者たちは世界覇権を争ってきた。

張によれば、どのようなパッケージで包装されていようとも、その目的は同じであり、共産主義のイデオロギーを世界中に輸出することであるという。

2024年、張はその光景をまさに自分の目の前、しかし今回は米国の地で目撃することになった。

そのパターンは、彼が四半世紀前に中国で目撃したプロパガンダ工作と酷似していた。米国で法輪功の学習者が立ち上げた組織に対し、メディアによる容赦ないネガティブ・キャンペーンが展開された。そこでは、根拠のない不正疑惑や「過激な集団である」といった根拠のない主張が次々と浴びせられた。

中国の歴史学教授、政治評論家、作家である張天良氏は、社会運動「脱党」(党を離脱すること)が中国政権の崩壊につながると述べている(Li Sha/The Epoch Times)

その後、同年の12月、中国の政治最高中枢にアクセスできる内部告発者により、政権が新たな世界的影響力工作を行っていることが暴露された。その戦略とは、SNSのインフルエンサー、西側メディア、そして米国の司法制度を兵器化し、米国における法輪功を中傷して抑圧することであった。

張の頭の中で、すべての点がつながった。彼は、中国の政治学者であり現政治局常務委員である王滬寧(ワン・フーニン)が1991年に著した書物『アメリカ対アメリカ』を思い出したのだ。中国国内で広く読まれているこの著作は、世界覇権を争う最大のライバルである米国が、いかに内部から分断され、深刻な二極化に陥っているかを描いている。これは「米国は必然的に衰退する」という中国エリートたちの確信をさらに強めることとなった。

そのアイデアは、1999年に中国軍の2人の大佐が著した『超限戦』という書籍によってさらに推し進められた。2人は、中国がはるかに強力な米国を打倒するために利用できる、さまざまな非伝統的手段を提示した。

これだ、と張は思った。中国国内および世界に数千万人いる法輪功コミュニティは、政権がその迫害の道具を研ぎ澄ますための実験場だったのだ。

2025年7月17日、ワシントンで、中国共産党によって迫害され殺害された法輪功学習者を追悼するろうそく集会に先立ち、法輪大法学習者たちが瞑想を行った(Samira Bouaou/The Epoch Times)

そして、今起きていることは、まさに中国のエリートたちが思い描いていた通り、「米国の制度が、米国の合法的組織に対して兵器化されている」状態であると張は語った。

新たな情報が浮上するにつれ、その確信は強まった。

数週間前、2人の中国の工作員が、米国で法輪功学習者によって設立された非営利のダンスカンパニー「神韻芸術団(Shen Yun Performing Arts)」に対する調査を開始させるため、内国歳入庁(IRS)の職員に賄賂を渡そうとした罪で有罪判決を受けた。そのうちの1人は、中国への渡航中に中国当局者から大量の現金を受け取っていた。

裁判の記録によると、これらの人物はニューヨーク州オレンジ郡にある神韻の施設に赴き、法輪功学習者を監視し、「オレンジ郡における法輪功コミュニティの発展を阻止することを目的とした、潜在的な環境訴訟の根拠」となる資料を収集していたという。

2023年10月1日、ニューヨーク州カデバックビルにあるドラゴン・スプリングス・キャンパスの南門の外にある庭園(Cara Ding/The Epoch Times)

X上では、神韻を標的にした記事を拡散する何千もの中国のアカウントが突如として現れた。大紀元の調査を受けて、同プラットフォームはそれらの多くを削除した。

「法輪功は、北京の海外工作の手口を知るための最良の教本だ」と張は語る。学習者たちが数十年間、平和的に抵抗し続けてきたからこそ、彼らは政権にとって最大の障壁であり、最も激しい工作の標的となっている。党はかつて、法輪功を数ヶ月で壊滅できると考えていた。しかし数十年経った今でも、法輪功は健在である。

そして、法輪功に対してとられた激しい戦術は、海外の異論を封じ込めるための北京の精巧な機構を示す教科書的な例であると彼は指摘する。

「魂の戦い」

張の人生の前半は、党と、その掲げる「人民に奉仕する」という目標を信じるものだった。

それが変わったのは1999年のあの日のことである。当時26歳だった張は、自身の信仰への抑圧に抗議するために赴いたところ、バスで講堂へと連行され、憎悪プロパガンダのセッションを受けさせられた。

一週間にわたる葛藤の末、彼は中国がもはや自分の故郷ではないことを悟った。

2000年、母親が法輪功を理由に1年の実刑判決を受けた数ヶ月後、彼は米国行きの飛行機に乗った。

米国で中国のインターネット検閲から解放された張は、すべてをゼロから見直した。彼は歴史の回顧録やドキュメンタリー、そして近代中国の世紀に関する手に入る限りのあらゆる文献を貪り読んだ。

彼が最初に直面しなければならなかったテーマは、天安門事件であった。

天安門での流血の惨劇から3ヶ月後の1989年9月、張は大学の新入生として北京に到着した。最初の2週間の大半、新入生たちに与えられた課題はただ一つ、事件に関する資料を読み、映像を見ることだった。それらはすべて、「若い民主化デモの参加者たちは、中国に混乱をもたらした暴徒である」という同一のメッセージを植え付けるものだった。

張はデモに参加するには若すぎたが、自分は支持者であると考えていた。しかし、大学の最初に受けたそれらのセッションの後、彼は「完全に洗脳されてしまった」と語る。

「共産党は正しいことをしたのだと思った。そうでなければ、どうやってこの混乱を収拾できたというのか、と。洗脳の力とは、これほどまでに強力なものなのだ」と彼は言う。

中国革命史の授業は、彼に「共産党がいかにして中国を独立と繁栄に導いたか」を教えた。彼はそれを信じ、党は素晴らしいものだと思っていた。たまに相反する意見に遭遇したときでさえ、張は政権が正しいことをしている、中国を豊かにしているのだと信じていた。

共産主義の記録における虐殺の、その凄まじい規模を知ったとき、彼は衝撃を受けた。

1950年代初頭、農民と比較的裕福な地主を対立させた土地改革で数百万人。その後の20年間、大躍進の飢餓や文化大革命で数千万人の命が失われた。1989年、天安門広場の銃と戦車は、おそらく数千人の命を奪った。

そして世紀の変わり目に、党は彼の信仰、つまり数千万人が受け入れていた精神修養法を標的にし、強制失踪、広範な拷問、そして強制臓器摘出によってコミュニティを壊滅させた。

張はそれを「殺人の歴史」と呼んだ。

2005年7月20日、シドニーのチャイナタウン付近で、法輪功の支持者たちが拷問の再現を描いた横断幕を掲げた(Greg Wood/AFP/Getty Images)

「ただただ恐ろしい」と彼は言う。そして、それは意図されたものであると彼は信じている。共産主義政権は恐怖政治によって統治しており、数年ごとに「骨の髄まで凍りつくような」テロのキャンペーンを作り出さなければならないのだという。

政権はあらゆる段階で、中国の根幹である「文化、思想、信仰」を攻撃してきた、と彼は語る。

無神論の共産党は、体系的な「党文化」の上にその正当性を築いており、それとは異なるいかなるイデオロギー(西側の民主主義であれ、中国の伝統であれ)も脅威となる、と張は言う。

「これは魂の戦いだ」

「敵を知る」

張はその戦いに身を投じている。

彼は現在、そのエネルギーの大半を、自身が共産主義による米国の浸透工作と呼ぶものへの警告に注いでいる。

YouTubeのインフルエンサーとして、彼は西側の中国系コミュニティの大部分にメッセージを届けてきた。今、彼はより多くの米国人にそのメッセージを伝えたいと考えている。

コンシリウム研究所のシニアフェローであり、ニューヨーク州カデバックビルにある飛天大学の教授でもある張天亮(ジャン・ティエンリャン)。2026年5月10日撮影(Samira Bouaou/The Epoch Times)

この戦いは個人的なものでもある。大紀元と共有されたチャット画面によると、神韻系の飛天大学における張の元教え子の一人は、そこでの生活に感謝しており、卒業後には彼女の結婚式に張を招待さえしていた。しかし、中国への渡航と中国国営のダンスアカデミーとの協力を経て、彼女は一転して、張と大学の両方を相手取って訴訟を起こした。

張は、この新しいドキュメンタリーの中で、自身が「法律戦」と呼ぶこの側面を掘り下げている。

長年中国研究を行っているサラ・クックは、この映画の中で、北京の批判者を黙らせるために、根拠のない訴訟が複数の国で利用されているのを目にしてきたと説明している。その大半は最終的に却下されるか取り下げられるが、クックによれば、そのプロセス自体が政権にとって2つの目的を果たすという。標的の経済に打撃を与え、その名誉を毀損することだ。

張は、より大きな構図に焦点を当てていると語る。彼は米国の公民権運動の指導者、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉を引用した。「いずこにおける不義も、あらゆる場所の正義への脅威である(Injustice anywhere is a threat to justice everywhere.)」

「共産党とはそういうものだ」と張は言う。「積極的に反対する必要はない。ただ、あなたが違っており、善良であるというだけで、彼らの悪との対比になってしまうのだ」

ドキュメンタリー映画『中国のステルス侵略』からの静止画には、(左上)国家安全保障ジャーナリストで作家のビル・ガーツ氏、(右上)政治資金と外国の影響工作に関する調査報道ジャーナリストで研究者のアンナ・マソグリア氏、(左下)国際評価戦略センターの上級研究員リッチ・フィッシャー氏、(右下)中国における報道の自由、宗教、人権に関する調査アナリストのサラ・クック氏が写っている(Screenshots via The Epoch Times)

高まる浸透の脅威に対処するため、西側諸国は冷徹な目を持ち続ける必要がある、と張は言う。

古典的な中国の兵法書『孫子』には、「彼を知り己を知れば、百戦して危うからず」と記されている。

北京は敵を知っている。張の頭にある疑問は、米国もまた敵を知っているか?、ということだ。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。