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【ことばの豆知識】人間

 「国宝」には二つあり、今話題の高松塚古墳の壁画のように形あるものと、伝統芸能や工芸技術のような無形のものです。後者の伝え手を「重要無形文化財保持者」、俗に「人間国宝」と呼びます。「国宝に匹敵するほどの人間」ということでしょうか。

 この「人間国宝」ということば、中国の人が見たら何を連想するでしょうか。中国語の『人間』には、「人」の意味はありません。「人の住む世界」です。『人間天堂』は「この世の天国」のことであり、蘇州・杭州の美しさをこのように形容します。これに対するのが『人間地獄』(この世の地獄)。そもそも『間』が、日本語の「床の間」「隙間」などからも察せられるように「空間」を意味することからすれば、『人間』が「人の住む空間」、つまり「この世」を指すというのは、至極当然のことです。従って、「人間国宝」を中国語として理解すれば、「この世の国宝」のことであり、第一義的には「国宝級の人間」とは理解されません。

 では、日本語の「人間」が「人」の意味を持つのはなぜでしょうか。このことば、日本語では本来、仏教で言う六道の一つ「人間界」の略で、中国語と同じく「人の住む世界」を意味していた(そのときは「じんかん」とも読む)のですが、それが、いつのまにか、そこに住む「人」そのものを指すようになったようです。

 「人間万事塞翁が馬」。中国の故事に基づくこのことわざ、出所が古いことを考えると、「人は…」ではなく、「この世では…」と理解したほうがよさそうです。(智)

 (06/03/15 07:00)  





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