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何清漣:スチーブン=ローチ氏の遅すぎた中国認識

 【大紀元日本4月13日】 3月28日、ギャロップ社主催の「2006中国調査報告」発表会において、モルガンスタンレーのチーフ・エコノミストであるスチーブン=ローチ氏は、彼が先週、北京で中国の温家宝総理と面談した際に、温家宝が、中国政府について、“持続的発展は不可能であり、不安定、不調和、不均衡である"と語り、憂慮の意を示したという。ローチ氏は、かつて、断固とした親中派であり、中国経済をこれまで肯定的に評価していた。しかし、今般、温家宝に密着することで考え方を変え、モルガンスタンレーの研究として、現在の中国経済の構造について、固定投資と輸出の総和がGDPの8割を超えており、こうした構造の下で、経済成長を持続することはできず、また、中国人の過剰な貯蓄は、将来への不安が原因であると述べた。

  上述の見解は、ローチ氏の高明な見解を示しているというより、彼の精緻なビジネス上の計算ぶりを示しているといったほうがよい。なぜなら、類似の分析は、既に中国学界の共通認識(いつも政府の言いなりになる人々を除く)となっていたからである。

  2004年頃より、中国経済の対外貿易依存度が高すぎることの危険性について論証した文章は、少なくとも100を超えており、このうちいくつかの資料、たとえば「中国の貿易依存度は既に80%を超えており、他の先進国及び発展途上国の水準を大きく上回っている」といった資料は、専門家が熟知するところとなっている。

  IMFが以前に公表した《国際金融統計年報》によると、先進国における現在の消費割合(国民消費/GDP×100)は78%前後、発展途上国の消費割合は平均で74%、国民貯蓄率が高いことで知られる他の東南アジア諸国の消費割合も65%以上であるが、中国だけは、特定の年を除いて消費割合が終始60%を下回っており、2006年の最終消費割合は50%を下回り、過去最低となった。こうした消費割合の低さ、過剰な貯蓄率の原因は、中国の民衆が、医療、教育、住宅という3つの大山(大きな負担)に圧迫され、将来に不安を感じているからである。これは、中国の学界及び民衆の社会的共通認識であり、ローチ氏が今更出てきて「高明」に「指摘」するような話ではない。

  仮にローチが健忘症でないとすれば、彼は、中国政府の「よき友人」として、かつて、中国経済の素晴らしい発展をあちこちで吹聴するとともに、中国経済を評価しない人に対しては、その考え方が、中国が最も競争力を備えている要素、つまり、労働力コスト、技術、インフラ、マンパワー、及び当局の改革への情熱及び断固たる姿勢を無視しているからであるとしていたのを覚えているに違いない。

  ローチ氏が認識していなかったのは、中国が最も競争力を備えていると彼が考えているところの低廉な労働力コストが、中国国内市場を疲弊させる主要な原因となっていることである。中国の廉価な労働力が日夜苦労し、それでも生存を維持することが困難となっており、また、中国当局が、政府が負うべきところの住宅、医療、教育などといった公共福祉を「負担」として中国の民衆に押し付けている中にあって、彼らのどこに、消費を増加させるための余剰資金があるというのか?

  中国が「世界の工場」となり、農村労働力に対して一定の就業の機会を与えたが、こうした就業の機会は不完全である。この不完全さの第一が、労働者の報酬が極めて低廉であり、かつ福祉がないことである。第二が、労働環境が悪劣であることである。中国の低廉な労働力は、労働者の福祉を剥奪し、労働者の生命の前借りという代償を払って得たものである。多くの国際人権組織は、中国政府が労働者の権利を無視していることを長年に渡って譴責しており、ローチ氏がこの事情を知らないはずはない。

  中国の経済成長モデルは、賃金及び消費の対GDP比を不断に引き下げ、輸出と投資によって経済成長を牽引する成長であり、外延型成長のわなから脱却できないでいる。この成長は、貧困者にとって不利な成長である。つまり、ニワトリを育てて卵を取る成長ではなく、卵を産むニワトリを殺して卵を取る成長モデルであり、このために、持続性がないのである。

 この点については、ロシアの事例と比較すると明確になる。1999年から2006年にかけて、ロシアの経済成長率は平均で6%、経済の総量は70%増加した。これと同時に、ロシアの賃金と平均収入は500%増加した。インフレ要因を除外しても、平均収入の実質増加率は200%を超えている。この8年間で、ロシアの平均実質賃金と実質収入の伸びは、一人当たりGDPの伸びの3倍以上となっている。これと比較すると、中国製造業における労働力価格は、90年代になってようやく高度成長が始まったインドよりも10%低い。

 こうした中国の特色ある経済成長とは、卵を産むニワトリを殺して卵を取る(貧者から掠奪し、貧者の購買力を粉砕する)成長方式である。温家宝が、「持続的発展は不可能」と嘆いたのは、既に“卵"を取り出すことができなくなっていることが分かっているからである。中国当局が直面する選択肢は二つある。一つは、掠奪を堅持して中国を泥沼に陥らせ、やがて崩壊に至るというもの、もう一つは、分配システムを改革し、貧者に経済成長の成果を分け与え、政府が卵を継続して取れるようにする(すなわち、持続的発展)というものである。

 ローチ氏のような親中派はなお多い。こうした人たちは、自由国家で生活しているが、一旦中国に接触するとこれに染まり、その特殊な地位によって中国政府に対するイメージを好転させ、中国政府の「よき友」となる。また、これにより、中国でビジネス上の利益獲得に成功する。こうした、中国政府が「よき友」と見なすような人は、中国政府がそのように称しても、決して、中国人民にとっての「よき友」ではない。

 
《華夏電子報》186期より転載

 (07/04/13 12:15)  





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