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(Getty Images)

株暴落で見えてきた、中国政府の集金のからくり

文・罗心惠

 【大紀元日本8月30日】今月18日、中国株は年初来安値を更新した。上海総合指数の終値は、2千319・87ポイントと、前年ピークの6千124・04ポイントから62%下がり、深セン総合指数の終値は、7千833・09ポイント、前年ピークの1万9千600・03より60%下落した。

 ほんの10カ月の間に、このような下落が見られるのは世界的にも珍しいと専門家はいう。分析によると、最近の両株式相場での売買代金は史上最低で、投資家の間では悲観的な見方や警戒感が広がっているようだ。

 中国株の値動きを予測するには、ファンダメンタルズ(基礎的条件)やテクニカル分析は、通用しない。なぜなら、欧米や日本と違い、インサイダー取引の規制・処罰は整っておらず、また上場企業の正確な財務状況が掴みにくいからだ。ここで、中国株式市場の仕組みを、厳密に分析する必要があるだろう。

 政府側の説明

 中国共産党系の各紙は、株価下落の原因として、米国のサブプライムローン問題や、原油価格の高騰などを挙げている。しかし、サブプライムローンの問題を抱える米国では、スタンダード・アンド・プア―ズのインデックスで見る限り、株価下落率が11%にとどまっている。中国株の下落は、サブプライムローンが原因だったのだろうか?

 原油輸入に依存している国は、原油価格が上がれば、確かに株式市場も影響を受けるだろう。しかし、世界でも中国ほどその影響を受けた株式市場はない。現在、原油価格は少しずつ下がる傾向にあるが、中国市場は相変わらず下落を続けている。なぜこのようなことが起るのだろうか?

 一般的な分析によると、中国株下落の国内要因として挙げられるのが、インフレ抑制のために中国中央銀行が金融引締め政策を採っており、それが中国株の下落に繋がったという理由だ。人民元レートが低く抑えられているため、原油価格が上がればさらに輸入価格が上がり、インフレを抑制するために政府は利上げを続けなければならない。人民元レートを上昇させればそれは解決するかもしれないが、中国当局の為替政策は、変わらないだろう。

 中国株式市場の実態

 中国株式市場の仕組みは、秘密ではなく、ほとんどの投資家が知っているだろう。中国の株式市場は、政府が国の富を再分配する道具であり、つまり国民の貯金を掠め取る仕組みだ。

 中国市場の上位にランクされている主な企業には、国有企業がずらりと並ぶ。それらの財務状況は明確でなく、中には多額の負債を抱えている企業も少なくない。ところが、これら国有企業は、銀行から簡単に多額の融資を受けて、突如株式市場の「ニュー・スター」となる。サンフランシスコ州立大学のファイナンス学教授・陳溢茂氏は、「中国株式市場に上場している銘柄の、そのほとんどの実態は、疑わしい。実際、本当によくて、強い会社は少ないとみていいだろう」と述べている。市場にリストされている企業のファンデーションは、とても弱い。従って、たとえ一時その株価が上がったとしても、それを維持することはできず、株価の値下がりは避けられない。そして、欧米や日本の市場と違って、インサイダー取引に対する法律が整っていない中国市場では、政府高官やその親族たち、そして市場取引に関わる人間が、大儲けするという仕組みになっている。

 実際、中国で株式市場ができた理由も、純粋に経済的なメリットのためではなかった。朱鎔基首相が深センに市場を設立した時、それは単に資金を集め、自分たちでお金を集められない中国企業に分配するためであると述べていた。なぜならば、これら中国国有企業は、ビジネスで利益を得ることができなかったからだ。

 海外の株式市場では、各企業のファンダメンタルズ(基礎的要件)が審査され、少なくとも3年間の経営実績がなければならない。会社は、株式を発行する前に、 中国証券監督管理委員会の承認を得なければならない。この組織の監視の下、発行された株はいつでも引き出せるようになっており、個人投資家たちが保護されるようになっている。

 中国市場は、つまり操作されたブラック・マーケットであり、そこから利益を得ようとするなら、ギャンブルより危険だということを、認識した方がいいだろう。実際、多くの中国人は既に気付いている。

 オリンピック前から起きた株価下落について、経済学者・湯敏氏 は、「投資家には、中国政府が市場を持ち直すという幻想を抱かないよう忠告する。もしこのまま投資を続けるなら、自由にしたらいいだろう。しかし、財布が空になっても文句を言わない事だ」と述べている。

 中国株式市場は、政府から本当に独立しているのか

 中国市場に上場している企業のうち、時価総額の上位にあるのは、ほとんどが国営企業である。ほとんどが民間企業の欧米・日本とは市場そのものの性質が異なる。中国の法律には、国有資産である国営企業の最終的なオーナーは、国務院(the State Council)であると明記している。そして、大陸の株式市場において、絶大な権力を持つ「中国証券監督管理委員会」(China Securities Regulatory Commission) と、「中国銀行業監督管理委員会」(China Banking Regulatory Commission)は、同じく両方とも国務院の傘下にある。つまり、サッカーの試合で例えると、選手と審判の両方が、政府であるということだ。更に、政府がルールを決め、ルールを変える。中国市場が、公平さに欠ける所以である。

 更に、中国のいわゆる“著名な”経済コメンテーターたちは、ほとんどが上場されている主な企業のお抱えディレクターである。また、それら企業のCEOは、一方で中国証券監督管理委員会のメンバーであるほか、証券取引委員会など、政府機関のポストを努めている。このような複雑な中国市場で、インサイダー取引や株価操作、不透明な行政介入が頻繁に起るのも無理はないだろう。

 また、健全な市場を保つには、自由で公正な情報の流れが必要である。それは、自由なメディアが保障されなければ、無理な話だ。中国のメディアは、すべて政府の検閲をパスしなければならない。もし党の意向に逆らう情報を流すなら、それなりの後始末を覚悟しなければならない。過去にも、中央テレビ(CCTV)の経済番組が、お上の怒りに触れるような「本音」を語ったことで、急遽中止となったことがある。

 上海のファイナンス・エキスパート、シィ(日ヘンに寸)寒冰氏は、次にようにコメントしている。「常時、自分の利益のために分析し、どんな期待も捨て、完璧に冷血、冷静を保つ。明らかに、私はそのようなレベルにまだ達していないようだ。つまり、重要なファクターを忘れていたのだ。無神論者(中共幹部)たちは、何でもやってしまうっていうファクターをね」

 シィ(日ヘンに寸)氏の言葉は、今の中国市場を一番的確に表現しているかもしれない。

 

 (08/08/30 11:27)  





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