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民間伝説:「足ることを知らず、蛇が象を呑む」

作者:紫悦

 【大紀元日本10月11日】「足ることを知らず、蛇が象を呑む」とは、広州の人々に広く用いられていることわざで、「欲が深くて止まるところがない」という意味である。それは次のような故事から来ている。

 昔、「象」という名の子供がいた。父親は、彼がまだ乳飲み子の内に亡くなり、母子は互いに寄り添って暮らしていた。母親はその息子を唯一の活きる望みとして深く愛し、象もまた非常に孝行を尽くした。だが、家には財産がなかったため、母親の裁縫で、どうにかその日暮らしの苦しい生活を送っていた。

 象が成長すると、母は彼を地元の「蒙館」に勉強に行かせた。彼は活発で聡明であり、先生も同級生も彼のことが好きになった。ある日の朝早く、彼が教科書を小脇に抱えて通学していると、木立の中に、かわいい青大将が地面をにょろにょろと這っているのを見かけた。

 体をくねらせながらゆっくりと進んでいく青大将は、見れば見るほど可愛くになってきたので、象はそれを紙に包んで「蒙館」に持っていき、こっそりと机の引き出しの中に放した。これを知った同級生も、とても珍しがり、皆の秘密として、先生に知られないようにした。

 それ以来、象は家へ昼飯を食べに帰るたびに、食べ物を持ってきてはそのかわいい相棒に与えた。そのうち、象と蛇は次第に大きくなったのだが、象が中途で学問をやめ、畑仕事を手伝うことになったため、その蛇を自宅のかやぶき小屋に連れて帰った。蛇は、心が通じているかのようにおとなしく、象の母親も喜んでそれの世話をした。

 そのときすでに老齢となっていた象の母親は、奇怪な肝臓病を患い、時々発作を起こした。肝臓が痛み出すと、まるでお腹の中で誰かが肝臓をかき回しているかのように、死ぬような痛みを覚えて床を叩き助けを求めた。

 ある日、母親はまた発作を起こした。痛くて「神様、仏様!」と叫びながら七転八倒するのだが、象にはなすすべもなく、ただ枕元で涙を流しながら慰めるしかなかった。

 この時、救世主が現れた。四方に説法に出ていた雲水の和尚が村に来て、どんな難しい病気も治せると言うのだ。そこで象は早速和尚に母親の治療を頼んだ。

 和尚は母親の病気を診ると、「この病を治すのは難しくない。ここに処方を書いておくから、これに大蛇の肝を副薬として飲ませなさい。服用すれば、すぐに効果が顕われ、今後決してぶり返すこともなくなる!」と話した。

 象はいたく感激し感謝した後、処方に従って薬を集めた。ただ、蛇の肝はどうしたら手に入るだろうか。あれこれと考えあぐねた挙句、やむなく日夜を共にしてきた相棒に目をやった。

 象は小刀を持ち、涙を拭いて、その愛すべき相棒に言った。「長い間育ててきた君を傷つけるのは忍びない。でも、さんざん苦労をしながら僕を育ててくれたお母さんが七転八倒しながら死ぬのを手を拱いて見ているわけにはいかない。友よ、本当に済まない。口を大きく開けて、僕に肝を少し切り取らせてくれないか!」

 蛇は象の話が分かったようで、育ててくれた恩に感謝するかのように、すぐに口を大きく開けた。そこで象は難なく蛇のお腹に入って肝を少し切り取ることができた。不思議なことに蛇は、一瞬ちくりとしただけで、何も傷つけられなかったかのようであった。

 象の母は、蛇の肝を調合した薬を服用すると、あっという間に回復した。ただ、象は、「もし母親の病気がぶり返したらどうしよう。そのとき、蛇が死んでいたら、どうやって蛇の肝を求めたらいいのか」と心配になった。

 いろいろ考えた挙句、彼は「万一」のときのために、今のうちに肝を取って置き、不足の事態に備えることにした。親を思うあまり、病気がぶり返すことはないという和尚の言葉が信じられなかったのである。

 象は再びナイフを手の持ち、相棒に口を大きく開けるよう迫った。蛇のお腹に入った象は、一切れまた一切れと、およそ5、6片を切り取った。そこで一旦は手を止めたのだが、ひょっとして足りなかったらどうしようと心配になり、再び切り取り始め、ついには、切っても切っても満足できなくなった。

 蛇にしてみると、次から次に切り取られ、痛くて堪らず、そこらじゅうを転げまわり飛び跳ねるのだが、目が血走った象は一向に出てこようとしない。我慢できなくなった蛇は、ついには忍びなく口を閉じ、象はその腹中に閉じ込められ死んでしまった。

 「足ることを知らず、蛇が象を呑む」ということわざは、こうしてでき上がったのである。

 (08/10/11 16:39)  





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