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止まらない中国の物価高騰。専門家は09~10年の間の潜在的インフレ率は38%に達していると見ている(Getty Images)

中国、追加利上げ ジレンマに陥るインフレ抑制策 専門家「潜在インフレ率38%」

 【大紀元日本12月28日】中国人民銀行(中央銀行)は、26日から金融機関の人民元貸し出しと預金の基準金利の引き上げを決めた。期間一年の貸し出しと預金基準金利はそれぞれ0.25%引き上げる。今回の実施は、10月に行った2年10カ月ぶりの利上げに続く2回目となる。

 今年に入って、6回も実施してきた市中銀行から強制的に預かる資金の比率を示す預金準備率の引き上げは、インフレを抑制するための対策として注目を集めたが、その効果は顕著に現れなかった。欧米市場がクリスマス休場のタイミングで10月に続き追加利上げに踏み切った背景には、市場から過度に反応せず、過度の投機的資金の流入を避けながら、インフレ抑制への姿勢を示したいという中国政府の思惑を滲ませているようにみえる。

 だが、強まる金融引き締め対策にもかかわらず収まらない不動産価格の上昇とインフレ懸念の高まりが続く。ジレンマに陥った対策はどこまで利くのか。

 インフレにより目減りする家計の貯蓄

 華東師範大学商学院不動産学部長で、同大学不動産研究センターの華偉教授は、0.25ポイントの利上げを行っても、現段階のインフレ状況からすれば、家計の貯蓄による利息収入はマイナスのままで、利上げのスピードはインフレ率に及ばないと指摘している。

 国民の衣・食・住・行(移動)の四大基本生活需要のうち、食と住の上昇が速すぎる。エンゲル係数で言えば、中・低所得家庭の場合は0.4~0.5となっており、食品価格の上昇は家計生活のコスト上昇に直接影響を与えているという。

 さらに、2兆ドル近い家計貯蓄の利息収入は、インフレ率の急上昇によりマイナスとなり始めている。定期預金(1年期間)の利息は2.5%であるのに対して、11月のCPI対前年比は5.1%上昇していることから利息水準はマイナス2.6%となり、上記の家計貯蓄は520億ドルがインフレにより消えていく計算になる。

 通貨発行量の増加により隠されるインフレ率

 「中時電子報」は、今年に入って連続して行われた預金準備率の引き上げと利上げは、今後の周期的な利上げの始まりだと報道している。北京銀河証券首席エコノミストの左子蕾氏は、利上げは直接的にCPIの上昇を抑制できないが、流動性問題への抑制作用は期待できると分析する。投資の過熱状況を抑制し、特に不動産への投資に対する影響は大きいと指摘すると同時に、現下の不動産バブルを改善するには、さらなる利上げが必要と明言している。

 一方、一部の経済学者は、インフレをもたらした重要な要因の一つは通貨発行量の急増だと分析する。政府が景気を刺激するために近年国有銀行による貸し付けを急増した結果、過剰流動性をもたらした。過去10年間で、通貨発行量(M2)は12兆元から70兆元にまで急増した。

 11月の人民元による貸し付け増加量は5640億元となり、11月までの貸し付け増加量を7兆4400億元にまで押し上げ、年間貸し付け増加量の7兆5000億元の所期目標の99.3%に達する状況にある。

 12月15日に開かれた中国金融学会において、通貨発行量の急増により過剰流動性をもたらし、目下、大陸の潜在的インフレ率は政府公表値をはるかに超え、国内の過剰流動資金のインフレへの影響は海外流動資金のそれに対する影響を超えていると学会参加者が指摘した。

 中山大学嶺南学院国際ビジネス学部主任の王㬢教授は、通貨発行量の急増によりもたらされた複合的インフレ率は30%に達すると指摘している。2009年の年間貸し付け増加量の10兆元と今年の貸し付け増加によって最近の資金流動を加速させたと同時に、企業の資金需要の回復が速すぎたため、通貨の増加速度が日増しに問題化し、09~10年の間の潜在的インフレ率は38%に達していると王教授は言う。

 悩まされる人民元高への容認が必要

 11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.1%上昇となり、政府が警戒ラインとみる3%を大きく上回った。生活の中心となる食品を主とする物価の急上昇は、国民の政府や共産党への批判につながりかねない。社会不安の芽を膨らませないために不可欠と判断された今回の利上げであるが、今後の人民元改革を通しての物価安定策も課題になりそうだ。

 為替市場では、人民元の利上げはその通貨の価値、すなわち人民元高をもたらす要因になるが、しかし、人民元高になったとき、中国政府がそれを介入で抑えようとすると、介入資金で国内のお金がさらにだぶつき、逆に物価上昇を招く懸念が増すに違いない。人為的な人民元安統制は政策の矛盾が膨らむことになりかねない。

 一方、利上げによって、海外との金利差がさらに拡大し、中国国内への投機資金の流入が加速しかねないことになる。その結果、インフレと不動産バブルをかえって助長する恐れもあり、両刃の剣となる金融政策はジレンマに直面する局面が水面下から浮かび上がってきた。

(翻訳編集・林語凡)


 (10/12/28 12:08)  





■キーワード
利上げ  預金準備率  物価上昇  不動産バブル  人民元切り上げ  


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