中国「物権法」制定、賛否両論=中国各界

2007/03/26
更新: 2007/03/26

【大紀元日本3月26日】全人大は3月16日に「物権法」を採択した。本年10月1日より実行されるが、中国の私有財産所有権に重大な変革をもたらすとみられている。公有制度が主体である全体主義国家中国にとって、外界では私有財産法といわれる「物権法」は、中国国内各界において、大きい論争が起こった。

*反対の声は絶えない

主に退職した高官、将領および中央党校教授たちを含む3千人を超える有識者らが物権法反対に連名で署名した書簡の中で、北京大学マルクス主義法律(Marxist jurisprudence)専門家の鞏献田教授は、物権法は中国社会主義経済の法的基盤を揺るがすものと懸念した。一方、アメリカン・ドット・コム(American.com)サイトでは、一旦私有財産が保護されれば、(公)共(財)産党は存続できるのかとユーモラスに報道した。一部の政府関係者および左派学者たちは、同法律は国有資産がじわじわと侵略され、または一挙に併呑され、貧富の格差はさらに拡大されるとし、物権法は、非合法的手段により財産を私有化した者を合法的に保護する不公平な私有化であると強調した。

憲法は国家の根本大法であり、すべての法律の究極の指標である。中華人民共和国憲法第1章「総則」第6条では「中華人民共和国の社会主義経済制度の基礎とは、社会主義公有制による生産手段であり、即ち、全人民所有制および動労民衆集団所有制であることを指す」と述べている。中華人民共和国憲法はこの点に対する修正を行う前に、物権法は憲法と明らかなに対立している。これによると、執政当局はある特定の情勢において、断固憲法の条文に従うとすれば、最相反する物権法の効力はどのくらいあるのだろうか。

*「物権法」は誰の権益を保護しているのか?

憲法で定められている公有制度が主体および中国共産党の主体主義統治下、中国は現在、私有財産の観念は存在しない。しかし、政府当局が見なしている「違法」であることに、例えば、ファルンゴン(法輪功)を修煉すること、政府認定以外の教会に加入する事など、人民が一旦関与した場合、理非曲直を問わずに家宅捜査され、家屋財産を没収されるのが現状である。これに対して、物権法の制定の実行は、「私有財産は侵害してはならない」という普遍的な信念が現実になることは期待できるかもしれない。

改革開廟xun_ネ降、関連法律の欠如で、官民結託による公有物を私有化、強引な強奪や密輸脱税により億万長者になった者は数少なくない。何清漣氏の著作「中国の落とし穴」の中で、中共政府関係者の汚職腐敗、権力を駆使し財を成す行為は多くあげている。一方、経済投資および土地開発の名義により、家屋財産を失った多くの農民たちが合理的な補償を与えられていないのが現状である。しかし、これまで私有財産は保護されなかったことから、投機目的の不法行為は犯罪にならず、これら不当手段によって成した財は、物権法実施後にまったく問題なく白紙に戻されることになる。

経済発展が顕著である沿岸都市において、物権法の実施は重要な役割を果たす。これらの地域では私有財産は存在しており、法令の実行はさらなる規範と保証がもたらされる。中産階級の都市市民が最大の恩恵を受けるとされるほかに、国有銀行においても、抵当物の安全性を確保し、資金の運用も活性化できるようになる。一方、内陸地方の郷村地域においては、中国の社会主義路線および共産党の指導地位を確立するために、これらの地域は依然として弱い立場である。物権法がこれら農村地区の民衆にもたらすメリットは限られており、精々30~70年の借地利用の申請が可能で、個人名義による土地売買はできない。

*私有化財産、大勢の赴くまま

中国は70年代末の経済改革以降、外資系を含む個人企業は全国生産の65%を占めており、年間税収の約70%を占めている。個人企業の発展により、郊外地区で不動産購買率は8割以上になった。80年代末、中・大型企業の成立規定が実行されたことから、90年代末に個人企業は国民経済の需要であることを認識し、現在の物権法の起草・審議に至った。全世界が認めている至極当たり前の「私有財産は侵害してはならない」という概念は、歴史発展において必然にたどられる道であり必須過程である。しかし、これまでは、中共の執政地位および共産主義のイデオロギーが、天から授かった人権に矛盾する障害をもたらした。

物権法制定の到来が遅くても、中国社会にとっての進歩である。人民日報の強国論壇に投書された文章では、物権法の出現は無産階級時代から有産階級時代への過度期における最強の指標であると述べた。物権法についての論争は、法理の論争より、イデオロギーと政治構造の論争というべきであろう。中共十六全人大で提出された「しっかりと公有制経済を強固し発展する」原則をあげ、物権法の第6項草案でも、国有経済が中国の主導地位を占める所有制度形式であると強調している。しかし、共産主義の左派教条は社会発展の現実から淘汰されることは簡単に予見できる。

(記者・賀蔓)
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