自由貿易圏への道筋 地域主導権へ米中争いの結果か APEC横浜閉幕

2010/11/16
更新: 2010/11/16

【大紀元日本11月16日】横浜市で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)は14日、8日間の日程を終え、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現を掲げた首脳宣言「横浜ビジョン」を採択して閉幕した。1週間の日程で「首脳宣言」「首脳声明」「APEC首脳の成長戦略」「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)への道筋」など、4つの合意にたどり着き、アジア太平洋地域の貿易・投資・環境保護・テロ対策・防災などの課題について、妥協的な表現でまとめられた。

表向き、域内の経済協力のあり方を探るAPECの1週間は実は、米中両国が地域の政治・経済に対する主導権を争奪する1週間であったと、14日付のBBC中文ネットが分析した。

日本は態度を一変

環太平洋戦略的パートナーシップ協定(TPP)などの貿易自由化に強く反発している日本国内の農業と畜産業への配慮や、選挙における農民票の行方を考慮した政界は、自由貿易協定への参加を今まで避けていたが、横浜APECが開催される前から、産業界からTPP参加への強い要請があったという。日本経団連・米倉弘昌会長は先月、「TPPに参加しないと日本は完全に世界の孤児になる」と発言している。

菅首相は10月の国会ですでに、日本の自由化への取り組みとして、TPPに加入する意向を示し、TPP加入の意義を「第3の開国」と表現した。

APEC期間中に行われた日米首脳会談で、菅首相はアメリカが主導するTPPへの加入の意思を明確に示し、普天間基地問題でギクシャクした日米関係の改善をはかった。また、APEC首脳会議でも菅首相は加入の意向を表明したが、会場外では自由貿易の拡大を批判する農業や畜産業関係者のデモが連日行われていた。

アメリカが主張してきた市場の開放や関税の免除に消極的な態度をとっていた日本は、尖閣諸島問題で中国の対日レアアース輸出の停止や通関手続きの強化などで報復策がとられたことから、その態度を一変させたとBBCの記事が指摘した。

米中双方に妥協

日本経済産業省の情報によると、菅首相がはじめて国会でTPP加入の意向を表明した後、中国の貿易関係者から「日本は本当に加入するのか」の確認電話があったという。

首脳会議の開幕前も、オバマ大統領が最高経営責任者(CEO)サミットで演説した時、TPPへの加入を積極的に呼びかけたが、中国の胡錦濤主席は同じ席での演説中にTPPに言及することはなかった。

14日の朝日新聞によると、中国は先進国主導のTPPに警戒感を示しており、ASEANを中心に中国、日本、韓国などが加わる貿易ブロックの推進を構想している。

そうした米中の主導権争いを背景に、今回議論されFTAAPは、枠組みとしては米が推進するTPPと、中国が推進する東南アジア諸国連合、更に日本、中国、韓国の「ASEANプラス3」、インドなども加えた「ASEANプラス6」の三つの構想が併記された。

結局、菅首相は米中双方に妥協した形で、「首脳宣言」のなかで日本が盛り込もうとした「2020年までにアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現」を明確に表現することはなかった。会場消息筋によると、各国(地域)とも米・中の機嫌を損ねることを避けようとした結果、議長国の日本は首脳会議で戦略を制定する計画にたどり着けなかったという。

なお、菅首相は来年11月にハワイで開催されるAPEC首脳会議までにTPPの交渉を妥結したいとオバマ大統領に表明した。一方、首脳会議後の記者会見のなかで、菅首相は、国内の産業界と農業・畜産業界の対立を考慮し、「農業改革と開国を両立」させたいと約束している。

(翻訳編集・張凛音)

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