米国、大統領選介入疑惑でロシアに制裁 サイバー攻撃非難

2018/03/16
更新: 2018/03/16

[ワシントン 15日 ロイター] – 米政府は15日、ロシアが2016年の米大統領選挙に介入したほか、サイバー攻撃に加担した疑いがあるとし、情報機関であるロシア連邦保安局(FSB)とロシア軍参謀本部情報総局(GRU)を含む5団体および19人の個人を対象に制裁措置を導入すると発表した。

ただ、オリガルヒ(新興財閥)やプーチン大統領に近い政府当局者を制裁対象とすることは見送ったため、与野党からはより厳格な措置を求める声が出た。

米財務省の発表によると、制裁対象者のうち6人はGRUの代理として活動。モラー連邦特別検察官による大統領選干渉疑惑を巡る捜査に絡んで2月16日に起訴されたロシア人13人と3団体も、制裁対象に含まれている。

制裁対象者は米国内の全資産が凍結され、米個人などとの取引が禁じられる。

米政府はまた、ロシアが原発施設を含む米国内の送電網を標的にしたサイバー攻撃に関与したと批判。財務省は声明でロシア政府のハッカーらは少なくとも16年3月以降に「米政府機関や、エネルギー、原発、商業施設、水、航空、重要な製造業部門を含む多数の重要なインフラ部門を標的にしてきた」との見解を示した。

米政府が国内エネルギー供給網への侵入をロシアが試みたと公式に認めるのは初めて。米政権の高官は記者団との電話会見で、ロシア人による米エネルギー部門への部分的な侵入があったと述べた。

また、財務省によると、今回の制裁は、昨年、欧米など世界各地に被害を及ぼした「NotPetya」と呼ばれるサイバー攻撃への対抗措置としての意味もある。米英両政府は前月、この攻撃はロシア軍が仕掛けたと断定している。

ムニューシン財務長官は「大統領選への介入から破壊的なサイバー攻撃に至るまで、ロシアによる継続的な不安定化を狙った活動に対抗」した措置だと強調した。

長官はまた、「不安定化に向けた活動」に関与したとの疑いから、

今後、ロシアの政府関係者とオリガルヒ(新興財閥)に対する追加制裁が導入される可能性あがあると述べた。

制裁は米金融システムへのアクセスを遮断するものとしたが、具体的な時間枠については明らかにしなかった。

米政府は同日、英独仏の3カ国と共同で声明を発表し、英国で今月初めに発生したロシアの元情報機関員の暗殺未遂事件についてロシア政府に説明を要求。トランプ大統領は訪米中のアイルランドのバラッカー首相とのイベント中に記者団に、「ロシアの関与は疑いないようだ」と語った。

一方、下院外交委員会のロイス委員長(共和党)は対ロ制裁について「重要な一歩だが、さらなる行動が必要とされている」と指摘。

下院情報委で民主党トップのアダム・シフ議員は、「今日発表された制裁には耐え難い失望感がある。米民主主義への攻撃に対抗するのに必要とされる措置には程遠い」と批判した。

ロシア通信(RIA)によると、制裁対象の1人であるロシアの実業家、エフゲニー・プリゴジン氏は、米国の制裁対象となったのは「恐らく3、4回目だ。数えるのに飽きた」とコメント。「マクドナルドに行くのをやめる以外は、懸念はない」と語った。

*見出しを修正しました。

Reuters
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