大紀元時報

焦点:米連邦最高裁の「闇の台帳」判決、トランプ氏退任後も乱発

2021年03月27日 10時28分
ドナルド・トランプ前大統領が1月に退任するまでの数ヶ月間、連邦最高裁判所は、連邦レベルの死刑囚13人に対し、連邦レベルでは17年ぶりとなる死刑執行への手続を急ピッチで進めた。写真はリベラル派のソニア・ソトマイヨール判事、1月にワシントンで代表撮影(2021年 ロイター/Win McNamee)
ドナルド・トランプ前大統領が1月に退任するまでの数ヶ月間、連邦最高裁判所は、連邦レベルの死刑囚13人に対し、連邦レベルでは17年ぶりとなる死刑執行への手続を急ピッチで進めた。写真はリベラル派のソニア・ソトマイヨール判事、1月にワシントンで代表撮影(2021年 ロイター/Win McNamee)

[ワシントン 23日 ロイター] - ドナルド・トランプ前大統領が1月に退任するまでの数ヶ月間、連邦最高裁判所は、連邦レベルの死刑囚13人に対し、連邦レベルでは17年ぶりとなる死刑執行への手続を急ピッチで進めた。

13件の多くにおいて、連邦最高裁は「シャドー・ドケット(闇の台帳)」と呼ばれる不透明な法的手続を駆使し、下級裁判所の判断をあっさりと却下している。だが、これは緊急事態のみに備えた略式の手続きであり、死刑執行への適用は想定されていない。だが過去4年間、この手法によって連邦最高裁の仕事の進め方は大きく変化した。

連邦最高裁がさまざまな重大事件の判決において「シャドー・ドケット」に頼る例はますます増加している。驚くほど迅速に手続が進められ、判事の署名入りの意見や詳細な説明が欠けていることも多い。死刑執行のように、その決定が取り返しのつかない結果をもたらす場合もある。

<トランプ政権下の申請、20倍に増加>

「シャドー・ドケット」扱いとされた事件は、下級裁判所での審理が続いていても、実質的に決着してしまう場合がある。すべての証拠が明らかになっていない場合さえある。公開の議論もなく、類似の事件の分析方法について下級裁判所への指針も示されないまま、深夜に決定が下されることもある。

この性急さと秘密性に対して、右派・左派問わず法律専門家からの批判が集まっている。連邦最高裁のきわめて大きな権力を乱用している、という指摘だ。

「シャドー・ドケット」という言葉を考案したシカゴ大学法科大学院の保守派研究者、ウィリアム・ボード教授(法学)は「何が起きているのか人々が知ることは困難で、連邦最高裁が最善を尽くしているという信頼も得にくい」と語り、透明性の向上を訴える。

「シャドー・ドケット」との認定を受けるには、訴訟当事者が連邦最高裁判事の1人に申請すればいい。その判事が、判事全員による検討にかけるか否かを判断する。申請を認めるためには、9人の判事のうち5人の賛成が必要だ。口頭での審理は行われず、他方当事者の弁護士は反論趣意書を提出することができる。申請が認められるには所定の基準を満たさなければならない。認められない場合に申請者が「回復不能の損害」を被ることも条件の1つだ。

一般の人々から見れば、連邦最高裁は、詳細な状況説明、口頭での弁論、法律を説明する長大な判決文を通じて、国家的に重要な問題を解決するものである。だが、トランプ政権下では、実質的な「シャドー・ドケット」決定の件数が激増した。トランプ政権はこの4年間、2期8年ずつ続いたブッシュ、オバマ両政権の20倍のペースで「シャドー・ドケット」申請を提出してきた。連邦最高裁はそのうち過半数の事件についてトランプ政権の申請を認めてきた。

<バイデン氏の政策、阻止される懸念>

トランプ政権後も、連邦最高裁は「シャドー・ドケット」を使い続けている。2月に見られた複数の事件を含め、最近の例では、過半数を占める保守派判事が、教会は新型コロナウイルス感染拡大防止のために州政府が出した命令を守る必要はないと決定している。通常のように、双方の主張を述べるための弁論の機会は与えられなかった。

「何ら理由を示すことなく(連邦最高裁判事が)重大な決定を下せるのであれば、事実上の制限なしに何でもできてしまう」と米国自由人権協会で法務ディレクターを務めるデビッド・コール氏は語る。

連邦最高裁は広報担当者を通じて、コメントを控えるとしている。

連邦最高裁では保守派が6対3と優位を占めており、こうした略式の決定プロセスにより、移民や環境保護、人工妊娠中絶や性的少数者(LGBT)の権利といった社会問題などのテーマに関し、ジョー・バイデン大統領の政策目標が中途で阻止されてしまう可能性もある。

下院司法委員会は2月18日、通常の司法監視機能の一環として、「シャドー・ドケット」に関する最初の公聴会を開いた。この中で民主・共和両党のメンバーは、同手続きの秘密主義的な性質への懸念を表明した。

だが一部の共和党関係者は、独自に緊急措置を申請することでバイデン政権の政策を手軽に阻止できる可能性があることを歓迎している。アラバマ州のスティーブ・マーシャル司法長官(共和党)は、他州の共和党系司法長官とともに、違法と思われるバイデン政権の政策を阻止するために、「シャドー・ドケット」適用の申請を行うことを「断固として」考慮するだろうと述べている。

「(迅速に)勝ち負けを決定する本当のチャンスだ」と彼は言う。

トランプ政権下の司法省で勤務していた弁護士のハシム・ムーパン氏は、最近の事件について連邦最高裁が「シャドー・ドケット」を利用していることを擁護する。同氏によれば、特定の司法管轄地域にしか適用されないはずの下級裁判所の判決が全国規模の政策を阻害している現状があり、「シャドー・ドケット」申請の多くはそうした問題が契機になっている。

「全国規模でそうした問題に見解を出すとすれば、連邦最高裁がその役にふさわしい」とムーパン氏は言う。

<死刑判決では顕著な変化>

テキサス大学オースティン法科大学院のスティーブン・ブラデック教授によれば、トランプ政権は任期中に「シャドー・ドケット」申請を41件提出、そのうち28件が承認されており、70%近い成功率となっている。ジョージ・W・ブッシュ政権とバラク・オバマ政権の16年間に提出されたのはわずか8件、そのうち4件が承認された。

シカゴ大学のボード教授は、「明らかに偏りが見られる」と語る。「政府、特に連邦政府には、裁判所の注意を惹く特別な能力がある」

「シャドー・ドケット」は以前から連邦最高裁の業務の中で使われてきたが、トランプ政権の司法省は、これまでの慣例に反し、気にくわない下級裁判所の判決を覆すべく、時には控訴裁判所の頭越しに、こうした緊急措置の申請を繰り返してきた。

最も顕著な変化が、連邦裁判所での死刑判決をめぐるものだ。昨年7月から1月までのあいだに、連邦最高裁判事は8回にわたり、連邦政府による死刑執行を停止した下級裁判所の判決を覆してきた。ほとんど、あるいはまったく説明が行われないことも多かった。

たとえば連邦最高裁は1月13日未明、たった2文の簡潔な命令により、ミズーリ州における陰惨な殺人事件に関するリサ・モンゴメリー死刑囚に対する刑の執行を可能にした。ミズーリ州で収監されていた52歳のモンゴメリー死刑囚は、2004年12月に、当時妊娠8カ月だったボビー・ジョー・スティネットさんを絞殺した罪で死刑判決を受けた。モンゴメリー死刑囚は逮捕前、スティネットさんの子宮から胎児を取り出し、自分の子に見せかけようとしていた。

2つの下級裁判所は、技術的な理由により死刑執行を停止していた。だが連邦最高裁は、根拠を示さないまま、双方の判決を覆した。

モンゴメリー死刑囚は、連邦最高裁による最終決定から90分後、薬物注射による死刑を執行された。

モンゴメリー死刑囚の姉妹であるダイアン・マッティングリーさんにとって、連邦最高裁の迅速な決定は不可解であり、何の議論も説明もなしにそうした重大な決定を下すのは「無神経」に映る。

「時間をかけて下された判断なら、理解のしようもある」とマッティングリーさん。「でも、彼らはそうしなかった」

<最高裁内部でも乱用に反対の声>

連邦政府による死刑が複数回執行されたことで、連邦最高裁の中でも「シャドー・ドケット」の影響力増大に関して微かな不安が生まれた。

同様の決定が最後に下された1月15日、連邦最高裁のリベラル派判事3人は反対に回った。リベラル派のソニア・ソトメイヤー判事は反対意見の中で、これまでの事例で浮上した新たな問題を指摘し、「これは正義ではない」と述べた。

これに対し、保守派の判事は、死刑執行までには長い年月が経っている場合が多いにもかかわらず、死刑囚を担当している弁護士はギリギリのタイミングまで異議申立てを提出せず、実質的に、制度の抜け穴を利用して執行を免れている、と述べている。

2015年、別の死刑判決事件に関する口頭弁論の中で、保守派のサミュエル・アリト判事は、こうした戦術を「(死刑制度に対する)ゲリラ戦」であると表現した。

<「驚くほど恣意的」>

「シャドー・ドケット」の存在は多くの死刑執行例だけでなく、賛否が対立する一連の事件においても物議をかもしている。

2017年12月、連邦最高裁は5文の命令により、イスラム教徒が多数を占める複数の国からの米国渡航を共和党トランプ大統領が禁止することを認めた。

2019年1月の4文の命令も同様に、トランスジェンダーの兵士の大半を米軍から排除することを求めるトランプ大統領の要請を認めた。2020年7月のもう1件の命令はわずか1文だった。これによってトランプ大統領は、米国南部の対メキシコ国境に構築する「壁」の一部の費用について、米軍予算を転用できることになった。

米軍からトランスジェンダー兵士を排除する政策に異議を唱えているLGBT人権団体、全米レズビアン人権センターのシャノン・ミンター弁護士は、この件に関する連邦最高裁の決定に触れつつ、「驚くほど恣意的に感じる」と話す。

ミンター弁護士は、「恐ろしく高圧的なやり方で、通常の司法プロセスを放棄しているように感じられた」と話す。

バイデン大統領は1月の就任後、大統領命令によって米軍からのトランスジェンダー排除をただちに無効とした。

(Lawrence Hurley記者、Andrew Chung記者、Jonathan Allen記者)

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