日本政府、孔子学院を設置する各大学に情報公開の徹底求める=報道

2021/06/02
更新: 2021/06/02

日本政府は、中国文化教育を名目に各大学に設置されている中国官製組織「孔子学院」について、大学側に情報公開を促し、透明性を確保する構えだ。中国共産党の出先機関でプロパガンダ組織とされる孔子学院について、欧米では、言論や学問の自由を脅かすとして閉鎖が相次いでいる。

5月31日、読売新聞が報じた。文科省や外務省など関係省庁が連携し、情報収集を進める方針だという。報道によれば、国は学位の取得に関わらない限り、大学と海外機関の提携に関する国への許認可や届出は義務付けていなかった。このため、実態の把握が遅れた。

5月13日、萩生田光一文科相は参議院文教科学委員会で、有村議員の質問に対して孔子学院について答弁した。荻生田氏は、孔子学院がある大学に対し「大学の主体的な研究活動が妨げられることがないよう組織運営や教育研究内容などの透明性を高めるべく、情報公開を促していきたい」と述べた。

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そのうえで、荻生田氏は「孔子学院については、同盟国である米国、そして自由や民主主義、法の支配といった共通価値観を持つヨーロッパの国々から廃止や情報公開を求める声が高まっている。孔子学院は透明性が求められる存在だと承知している」と回答している。

この質疑で、有村議員は「共産党一党支配の国が管理する組織が日本の大学に設置されることは、果たして健全なのかどうか」と疑問を呈した。

大学への情報公開の報道を受けて、2018年に国会で初めて孔子学院問題を取り上げた杉田水脈議員は、「あれから4年。やっと情報公開まで来ましたが、アメリカ等の対応に比べ、まだまだと感じます」と自身のブログに書き、「しっかり追及していきたい」と続けた。

米国やオーストラリアでは、孔子学院について諸外国より強固な手段で排除を試みている。

同年10月、ポンペオ国務長官とデボス教育長官は連名で、全米各州の教育長官と全米各大学の学長に対して通達し、米国の教育が受ける中国共産党の影響について深刻に警告を発した。米上院では2021年、孔子学院の規制に関する法案を与野党全会一致で可決した。

シドニーを州都に置く豪ニューサウスウェールズ州は2019年、州立の小中高13校にある中国語を教える「孔子学院」の教室を閉鎖させた。現地メディアによれば2021年5月、豪政府は「国益に反する」地方政府や研究機関の協定破棄が可能になる法律を導入した。孔子学院は同法に基づき、契約見直し対象になる可能性があるという。

中国教育部の「国家漢語国際推広領導小組弁公室(略称・国家漢弁)」が管轄する孔子学院は、2004年に韓国で初めて設立された。2020年6月までに世界154の国と地域に支部を持ち、5448の孔子学院(大学やカレッジ向け)と1193の孔子課堂(初中高等教育向け)を数える。

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表向きには、「中国語を世界に広め、中国文化の理解を深める」としているが、狙いは、資金提供を通じて他国の学問の自由や言論の自由を利用して、キャンパスに中国共産党による社会主義、共産主義イデオロギーを浸透させる目的である。国家漢弁のトップはかつて、共産党の対外プロパガンダを統括する中央統一戦線工作部長が就いていた。

(佐渡道世)

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