9月3日、天安門広場で開催された中国共産党(中共)の軍事パレードでは「新型兵器」の数々が公開された。しかし、詳細分析によれば多くは旧式や外国の模倣品であり、真の軍事力の実情や米軍との技術格差が浮き彫りとなっている。本記事では、それぞれの兵器の解説とパレードが示した中共軍事力の現状をわかりやすく解説する。
「切り札」の実力はどの程度か
今回の軍事パレードで登場したJL-1空中発射型ミサイル、ジュラン3(JL-3)潜水艦発射型大陸間弾道ミサイル、東風(DF)-61およびDF-31地上発射型大陸間弾道ミサイルは、中共が「切り札」として喧伝してきた兵器である。
JL-3ミサイル:米国との差は依然大きい

中共は弾道ミサイル搭載型原子力潜水艦にJL-3を配備し、これに伴い射程の短いJL-2は退役させられたとみられる。分析によれば、JL-3の射程は9千キロ以上、搭載可能な核弾頭は約3発程度と推定される。
JL-3は大型であり、軍事パレードでも目立つ存在であった。094型原子力潜水艦には最大12基搭載可能とされる。一方、米海軍の原子力潜水艦はトライデント潜水艦発射型ミサイルを24基搭載でき、射程は1万2千キロ、核弾頭は最大8発を搭載可能である。中共の潜水艦搭載ミサイル技術は旧ソ連およびロシアに依存しており、米国との技術格差はいまだ明白である。
DF-61ミサイル:実質的には改良型

今回の軍事パレードでは注目されていたDF-41の姿はなく、その代わりにDF-61が登場した。DF-61の外観はDF-41に酷似しており、国外の専門家の間ではDF-41の改良型とみなされている。これは、DF-41が当初期待された性能を十分に発揮できなかった可能性があり、結果として中共がDF-61への切り替えを余儀なくされたためと考えられる。ただし、実際には外観上の大きな変更点は見られず、実質的にはDF-41の改良型にとどまるとの見方が有力である。
JL-1ミサイル:射程を誇張

サンダー 1(JL-1)はDF-21ミサイルを基にした空中発射型の兵器で、核弾頭を搭載可能とされている。ただし、陸上発射型のDF-21は今回の軍事パレードには登場しなかった。近年の日本防衛白書によると、中共軍のDF-21の保有数は大幅に減少しており、かつて「空母キラー」と宣伝されたDF-21Dも姿を消している。ロケット軍の不祥事により実際の性能が露呈し、退役が進んでいるとみられる。
中共軍に他の有力な選択肢は乏しく、空中発射型DF-21を温存せざるを得ない状況にある。これがなければ轟-6(H-6)爆撃機は巡航ミサイルしか搭載できず、戦略的価値が低下するためである。
JL-1に核弾頭を搭載することで、中共は空中からの核攻撃能力を強化し、戦略核兵器の「三本柱」を整えたと宣伝している。しかし射程は実際には約3千キロであり、理論上はグアムまでの攻撃は可能とされるものの、中共が主張する8千キロという数値は明らかな誇張である。
今回「切り札」としてアピールされた3種類の新型ミサイルと従来型であるDF-31であるが、技術的な遅れは否めない。特にロケットエンジン技術において突破口がなく、旧ソ連・ロシア由来の大型設計を踏襲し続けている。液体燃料を用いる固定配備型の「DF-5C」も依然保有しているが、こちらは「切り札」とは位置づけられていない。
100式戦車と装甲車:ロシアT-95の模倣

現役の99式戦車はようやく第三世代戦車と呼べる水準に達しているが、96式はすでに時代遅れである。今回、新型100式戦車が登場し、99B型戦車の後方に並んだ。CCTVに出演した「専門家」は、戦場で主力となるのは改良型99B戦車であると強調した。
100式戦車は軽量化され、乗員はわずか2人、主砲の口径も105ミリと従来より小さい。ロシアメディアは2012年に、中共がロシアのT-95を模倣して第四世代戦車として100式を開発したと報じている。
中共側は100式戦車および100式歩兵戦闘車について、高速での戦場展開が可能であり、戦術的深層攻撃や市街戦に投入できると主張している。これは台湾攻略シナリオにおける市街戦を意識した設計と考えられる。かつて宣伝された15式軽戦車も類似の用途が想定されるが、今回の軍事パレードでは登場しなかった。
一方、中共海軍陸戦隊に配備されている水陸両用歩兵戦闘車や水陸両用自走砲兵車には大きな改良は見られず、引き続き上陸時の沿岸攻撃を単独で担っている状況である。これは中共軍の爆撃・空襲能力の不足を示している。また、191型遠距離ロケット砲の精度や火力にも課題が残り、ミサイルを使用するとなればコストが大幅に増大する。
空警-600早期警戒機:米軍E-2早期警戒機の模倣機か

中共軍の空母用早期警戒機・空警-600は、他の戦闘機とともに披露された。自主開発を強調しているが、実際には米軍のE-2早期警戒機に極めてよく似ている。
同時にJ-15艦載機の3種類のバリエーションとJ-35が飛行し、航空母艦「福建」での運用が予定されている。ロシアが廃棄した艦載機はいまだに中共海軍空母の主力艦載機であり、これについても中共は「自主開発」と称している。
中共側の宣伝では、J-35Aは制空戦闘や対地・対艦攻撃など幅広い任務に対応できるとされる。しかし内蔵兵器倉には大型兵器を搭載できない可能性が高く、秘匿性を要する攻撃任務の遂行は困難であり、米軍F-35と比べると劣るとみられる。
J-16およびJ-10は軍事パレードに姿を見せたが、J-11は確認されなかった。退役が近いとみられる。
また、中共軍のJ-20S複座戦闘機も登場した。内蔵兵器倉は大型対地弾薬を収容できず、2人目の搭乗員は主に無人僚機の統制を担うと考えられる。
各種無人機も披露

今回披露された無人機の多くは米軍の無人機を模倣したとみられる。新型の偵察・攻撃一体型無人機、僚機型無人機、艦載無人ヘリコプターなども含まれ、外観は米軍の現役機や試作機に酷似している。ただし速度や搭載量など主要性能では大きく劣っている。
これらはロシア・ウクライナ戦場で多用される「使い捨て型」の安価な無人機ではなく、比較的高価な再使用型が中心である。しかし搭載可能な兵器は限られ、遠隔操作をどのように効果的に行うかが課題である。
中共軍の076型両用強襲上陸艦は無人機用カタパルトを装備したが、実際の運用法は不明確である。中共は米軍の無人機や対無人機兵器、さらには地上用ロボット犬まで模倣しているが、戦術・作戦概念を十分に理解しているとは考えにくい。
無人艦艇も模倣色

中共海軍は複数の無人潜航器や無人艇を展示した。さらに展示数を補うかたちで、対潜魚雷や重魚雷、水雷なども並べられた。
米軍は多種多様な無人艦艇や潜水無人機を運用しているが、中共側は外見を模倣するにとどまり、内部システムに関する理解は十分ではないとみられる。そのため運用の実効性には疑問が残る。AIや自動攻撃機能を備えているとうたうが、システム障害が発生すれば自軍を誤って攻撃する危険性さえある。
性能に不安残す対艦ミサイル

今回披露された新型対艦ミサイルには、YJ-15、YJ-17、YJ-19、YJ-20などが含まれ、これらは艦載機や水上艦艇、潜水艦など多様な発射手段を持つ。
中共側は従来のロシア模倣型であるYJ-83、YJ-91、YJ-12、YJ-18などに自信を失い、新型ではDF-17など過去の弾道ミサイルを基盤に開発を進め、多様なプラットフォームに適応させている。自称する「超音速ミサイル」にも十分な自信を持てず、既存のYJ-21やDF-17、DF-26Dと組み合わせ、複雑な飽和攻撃で米軍イージス艦の防御突破を狙っている。
しかし軍需企業には汚職が多く、実際の性能を軍部自身も疑っているとされる。展示された多様な試作品は、整備性の低さと実用化への不安を示している。
米軍の対艦兵器は空中発射型が主流であり、広範な攻撃範囲と高い柔軟性を備える。第4世代戦闘機でも敵防空圏外から攻撃でき、第5世代戦闘機やステルス爆撃機は容易に防空網を突破可能である。これに対し、艦載型や潜水艦発射型ミサイルでは敵に接近せねばならず、発射前に空爆を受けるリスクが高い。
中共軍の空中発射型対艦ミサイルは技術的に遅れており、大型ミサイルは轟-6爆撃機でしか運用できず、戦闘機への搭載は不可能である。このため、旧ソ連・ロシア流の戦術を引き継ぎ、艦艇や潜水艦を米空母部隊に接近させ、高リスクの攻撃を試みるしかないとみられる。射程の長さを強調することは多いが、遠距離における目標捕捉・追跡・誘導能力は未解決である。同時に、多数の発射母体を協調運用することも依然困難な課題とされる。
披露された兵器はすべて攻撃型であり、防御や平和を強調する中共側の公式宣伝とは大きな矛盾を示していた。兵器の有効性にも疑問が多く残る。一方で中共軍の防空システムは脆弱であり、ロシアのS-300を模倣した防空ミサイルはイランの例と同様、米軍の攻撃を阻止できず致命的な弱点を抱えている。
したがって今回の軍事パレードは真の実力誇示にはつながらず、かえって多くの弱点を露呈し、国際社会の警戒感と反発を高める結果となった。

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