ファーウェイ 独で先端人材を引き抜き スパイ活動と情報流出に懸念

2026/03/31
更新: 2026/03/31

ドイツのフラウンホーファー・ハインリヒ・ヘルツ研究所(HHI)の所長を務めていたマルティン・シェル氏は先月、リンクトインでHHI所長を辞任したことを明らかにし、3月からファーウェイの海外研究拠点で研究開発責任者に就任したと発表した。これを受け、ドイツ政界の一部で懸念が強まっている。

HHIはドイツのフラウンホーファー研究機構傘下の研究機関で、同機構はヨーロッパ最大の応用研究機関として知られる。ドイツの技術革新を支える中核機関でもあり、光デバイスやフォトニック集積回路の開発分野で世界をリードしている。

フォトニック技術は、電流の代わりに光を利用する技術で、民生用電子機器、医療用画像診断、高速光ファイバー通信、レーザーなど幅広い分野で活用されている。シェル氏はこれまで、ベルリン工科大学で光学・光電子集積分野の教授も務めていた。

日経アジアの報道によると、ファーウェイは多くの国でスパイ活動や破壊工作への関与が疑われ、厳しい監視の対象となっている。一方で、フラウンホーファー研究機構はファーウェイと近い関係を保っている。同機構は昨年9月に上海で開かれたファーウェイの技術展示会「HUAWEI CONNECT 2025」にも出展し、F5G OpenLabの次世代光ファイバーネットワーク試験施設を紹介していたという。

ドイツ連邦憲法擁護庁(BfV)の国内情報部門は日経新聞に対し、ファーウェイがドイツの一流人材の引き抜きに力を入れていると指摘した。同庁によると、ファーウェイはヘッドハンティング会社や仲介機関、採用エージェントなどを通じ、破格の待遇や高額報酬を提示して、ドイツの優秀な人材に接触しているという。HHIの事例は、中国共産党(中共)がドイツや他の西側諸国の科学者を取り込むことに重点を置く実態を示しているとし、こうした人材は長年の協力関係、または高額報酬に動かされていると分析する。

ドイツ政府は3月19日、新たな「国家経済保護戦略」を公表した。3つの中核目標の一つとして「経済分野および学術分野における各主体のレジリエンス(強靭性)の向上」を掲げたが、具体策は示さなかった。HHIは軍事機密に関わる研究機関ではないため、従業員が転職する際に厳格な安全審査を受ける必要はなく、長い通知期間も求められないという。

こうした中、政界からはシェル氏のケースを踏まえ、中共関連企業によるドイツの先端人材の引き抜きを防ぐため、政府に規制強化を求める声が上がっている。キリスト教民主同盟(CDU)の議員で、元将官でもあるローデリヒ・キーゼヴェッター氏は、中共がこうした動きによって情報を窃盗したり、ドイツのシステム上の脆弱性を特定したりする可能性があると指摘した。

キーゼヴェッター氏は、「われわれは承知しているが、中共は長期的な視野で行動しており、ドイツのシステムに将来的に利用可能な仕組みを組み込もうとしている」と警告した。さらに、「仮に中共がわれわれのネットワークを破壊すれば、その影響は計り知れない。とりわけ5Gネットワークは経済の神経中枢とも言える」と述べた。

また、議会監視委員会のコンスタンティン・フォン・ノッツ委員長も、この事例は、機密情報に接し得る高官の流出を防ぐため、ドイツに一貫した政策が必要であることを改めて示したと指摘。

一方、ドイツの学術界では、人材流出は国内におけるキャリアアップの機会不足が原因だとの意見も出ている。ヴュルツブルク大学で中国経済・経営学講座のハンネス・ゴーリ次席研究員は、ドイツの「学術有期契約法」により、研究者は博士号取得後6年以内に常勤職を得られなければ、学術界にとどまることが難しくなると指摘し、これが不必要な圧力になっていると述べた。

李平