168人が死亡した香港マンションで発生した大規模火災をめぐり、香港警察と廉政公署は6月10日、修繕工事を担当した会社2社と幹部7人を正式に起訴したと発表した。罪状は計25件に上り、過失致死、詐欺共謀、マネーロンダリング、司法妨害未遂、脱税などが含まれる。犠牲者168人の名簿も公表した。
7人と2社を起訴 5被告が過失致死罪に
起訴した7人は、宏福苑(新界大埔区にある公営住宅団地)の大規模修繕工事でそれぞれ異なる役割を担っていた。香港の建設会社 「宏業建築工程有限公司」の当時の取締役、侯華健と何建業、建築コンサル会社 「鴻毅建築師有限公司」の当時の取締役、黄俠然、取締役で登録検査員の呉躍、職員の李敏、黄俠然の妻の鍾素芬、黄俠然の友人、洪國偉である。
起訴した2社は、宏福苑の大規模修繕工事のコンサルタント会社である「鴻毅建築師有限公司」と、工事の総請負業者である「宏業建築工程有限公司」。
このうち過失致死罪に問われたのは、何建業、呉躍、黄俠然の3人と、宏業建築工程有限公司、鴻毅建築師有限公司の2社である。
起訴状によると、被告らは2025年11月26日から12月3日までの間、違法行為により168人が死亡した。過失致死罪は計5件で、犠牲者が見つかった建物ごとに分けられている。香港法では、過失致死罪の最高刑は終身刑である。過失致死罪に問われた被告はいずれも保釈が認められていない。
事件は6月10日午後、西九龍裁判所で審理したが、次回の審理は9月2日に延期された。
7人の被告のうち、保釈が認められたのは侯華健と鍾素芬だ。2人は保釈期間中、香港を離れることや証人との接触は禁じられている。また、申告した住所に居住し、週3回警察署に出頭する必要がある。残る5人は勾留された。
午後7時ごろ、侯華健はタクシーで裁判所を後にした。一方、鍾素芬は十分な保釈金を納められなかったため、護送車で移送されたという。
14人を逮捕 25件の罪
2025年12月17日までに、廉政公署(香港の独立した汚職捜査機関)は14人を逮捕した。警察は火災そのものをめぐり、22人を逮捕している。
捜査当局は、問題の修繕工事に虚偽文書、違法な調達、防火材の基準不適合などがあった疑いを持っている。一部の工事関係者は、こうした状況を長期にわたって隠していた疑いがある。
廉政公署執行処の首席調査主任、羅貝雯氏によると、今回の起訴は主に4分野に及ぶ。総請負業者の入札過程での不正、工事監督手続きでの不正、工事コンサルタント会社取締役によるマネーロンダリング、さらに一部関係者による捜査中の司法妨害未遂である。
廉政公署の調査によれば、鴻毅建築師有限公司の取締役、黄俠然は、宏業建築工程有限公司の取締役である侯華健、何建業と共謀した疑いがある。入札分析報告書で、宏業が過去に関与した訴訟記録を隠し、技術評価点を過大に記載したとされる。
廉政公署は、関係者らがこれにより宏福苑の管理組合および区分所有者に誤った判断をさせたと指摘している。その結果、宏業は最終的に落札し、約3億香港ドル規模の大規模修繕工事契約を取得したという。
また廉政公署は、一部の関係者が火災後、資料の隠蔽や改ざんを試み、証人の供述に干渉した疑いもあるとしている。このため、司法妨害未遂などの罪も加わった。
警察と廉政公署は現在も、資金の流れ、工事の承認手続き、関連企業間の利害関係について捜査を続けている。
法律関係者からは、事件が過失致死、工事入札の不正、詐欺共謀、マネーロンダリング、脱税、司法妨害など複数の重大犯罪にまたがっているとの見方が出ている。捜査はなお続いており、今後さらに関係者や企業が刑事責任を問われる可能性もある。
犠牲者168人の名簿公表
過失致死罪5件に問われた黄俠然、呉躍、何建業の3人と2社は、11月26日から12月3日までの間に168人を死亡させた。
5件の起訴内容は、168人の犠牲者が見つかった建物ごとに分類している。宏昌閣で81人、宏泰閣で82人、宏新閣で2人、宏道閣で2人、宏盛閣で1人だった。
最初の過失致死罪では、5被告が香港で81人を死亡させたとされる。犠牲者は、頼志光、陳柱楷、朱卓権、鄭玉池、鄭崔永秀、黄宝営、蘇永権、杜元泉、蔡文英、劉美金、呉恵珍、梁励青、林湘、葉嘉莉、劉秀賢、鄧淑萍、薛愛華、楊統英、紀麗明、呉環好、NOVITA、蘇兆雄、何梓甄、李房有、林芳、羅瑞先、蘇偉勲、張美芬、姚永濃、李国偉、鄭桂香、YASMIATI、麦慧蘭、王秀雲、譚恵萍、DINA-MARTIANA、DARWATI、何華星、李堅玉、陳良本、高錦嫦、蘇恩曄、曾玉薇、練志輝、張大彬、劉軟綿、劉定嘉、成淑清、余素英、廖秀芳、呉垣志、洪偉香、蔡麗萍、蔡永徳、楊淑らが含まれる。
死者168人 負傷者79人 住民4千人が避難
宏福苑の火災は2025年11月26日に発生した。当時、同団地の住宅8棟では外壁改修と大規模修繕工事が行われていた。
火災は当初、宏昌閣の外壁足場付近で発生した。その後、火勢は外壁足場と保護ネットに沿って急速に広がり、短時間で団地内の住宅7棟に波及した。現場では大量の黒煙が上がり、複数回の爆発音を確認した。
火勢の拡大は異常に速かった。公式発表によれば、事故により168人が死亡し、79人が負傷した。約4千人の住民が避難生活を余儀なくされた。火災は香港で17年ぶりの五級火災に分類され、ここ数十年で最も深刻な住宅火災の一つとなった。
消防当局の調査では、建物外壁の保護ネット、防水シート、プラスチックシートなどが火を受けた後、通常の基準適合防火材を大きく上回る速度で燃え広がったことが分かった。これにより、工事の品質や施工材料の安全性をめぐる疑念が広がっている。
事故後、警察の重大犯罪専門の捜査部隊が捜査に入り、工事会社の取締役や工事コンサルタント関係者を過失致死の疑いで逮捕した。
同時に、廉政公署は専門チームを設置した。宏福苑の大規模修繕工事に汚職、書類偽造、その他の違法行為がなかったかを調べている。
外部から「世紀の大火」とも呼ばれる宏福苑火災は、香港近年で最も深刻な住宅火災の一つである。同時に、公共工事の監督、企業統治、廉政公署による捜査の面で、香港史上最大規模の事件の一つとなる可能性がある。
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