日米が協調して円買い介入に踏み切った。専門家からは、アメリカが円相場の下支えに動いた背景には、米国債市場や日本の金融システムへの懸念があるほか、中国共産党(中共)に地政学的なメッセージを送る狙いもあるとの見方が出ている。
円相場は最近、対ドルで約40年ぶりの安値まで下落し、日本政府が警戒を強めていた。
CNBCによると、円相場は7月30日に1ドル=163円73銭まで下落したが、翌31日には1ドル=157円57銭まで上昇した。
日米が協調して円買い介入を実施するのは1998年以来である。また、両国が為替市場で協調介入するのは、2011年の東日本大震災後にG7が急激な円高を抑えるため、円売り介入を行って以来となる。
トランプ大統領は、円相場を下支えし、日本を支援するとともに、世界経済の安定を維持するためだと説明した。
米国債売却を避けるFIMAレポ・ファシリティーに注目
金融業界の関係者はCNBCに対し、米政府が強く懸念しているのは、日本が米国債を最も多く保有する外国である点だと述べた。
円相場がさらに急落し、日本が単独で円買い介入を行う場合、介入資金を確保するため、保有する米国債を大量に売却する可能性がある。このため、アメリカも協調介入に加わったとの見方を示した。
オックスフォード・エコノミクスのアジア経済責任者、Louise Loo氏は、今回の介入をめぐって、FRBの常設FIMAレポ・ファシリティーが重視されたことについて、日本による米国債の大量売却をできる限り避けたいという両国の意向を示していると指摘した。
FIMAレポ・ファシリティーは、外国の中央銀行や国際機関が、保有する米国債を担保としてFRBからドル資金を調達できる仕組みである。これにより、米国債を市場で直接売却せずにドル資金を確保できる。
ステート・ストリート銀行のシニア・マクロストラテジスト、Masahiko Loo氏は、米政府の懸念は円相場だけにとどまらない可能性があると指摘した。
アメリカと日本はいずれも、長期金利の上昇への対応に苦慮している。Masahiko Loo氏は、円安が続けば日本国債の売りがさらに強まり、利回りの上昇が世界の債券市場に波及する恐れがあるとの見方を示した。
また、FIMAレポ・ファシリティーを利用すれば、日本は米国債を売却せずにドル資金を確保できる。この仕組みを市場に示すことで、日本が為替介入のために米国債を大量売却するとの懸念を和らげ、米金融市場への圧力を軽減する狙いがあると説明した。
Louise Loo氏は、トランプ政権が以前から、円は大幅に過小評価され、日本に不公平な貿易上の優位をもたらしていると主張してきたと指摘した。
今回の協調介入は、日本銀行が年内に追加利上げに踏み切るまでの時間を確保することにもつながるとの見方を示した。
中共への地政学的メッセージとの見方も
Monex GroupのJesper Koll氏は、今回の措置について、トランプ氏と高市早苗首相の下で、日米関係が新たな段階に入ったことを反映していると述べた。
Jesper Koll氏は「日米の協力とパートナーシップは新たな段階に入った」とし、今回の協調介入は「日本が支援を求めた際、アメリカがその要請に応じる」ことを示したと指摘した。
また、今回の対応には、中共に地政学的なメッセージを送る意味もあるとの見方を示した。
みずほ証券のアジア・マクロ調査責任者、Vishnu Varathan氏は、アメリカの参加によって協調介入の効果が高まったと分析した。
また、アメリカが必要に応じて再び介入する意思を市場に示したと指摘した。両国政府が今後も必要な対応を取る姿勢を示したことで、円売りを仕掛ける投機筋へのけん制も強まったとしている。
Vishnu Varathan氏は、アメリカの協調介入により、日本が米国債を大量に売却し、米国債利回りを押し上げるとの懸念が和らいだと指摘した。日本の債券市場の安定にも寄与したとの見方を示した。
介入効果の持続性を疑問視する声も
一方、一部の専門家は、円安の構造的な要因を解決しなければ、今回の協調介入の効果も長続きしない可能性があると指摘している。
アメリカが今回、ドルではなくユーロを売って円を買った異例の手法については、市場への影響や介入の効果をめぐって見方が分かれている。
一部の専門家は、この手法が市場を混乱させ、介入の効果を弱めると指摘している。一方、ドル安を望んでいるとの印象を市場に与えないための対応だったとの見方もある。
また、日本国債の利回りが人為的に抑えられている限り、為替介入だけでは、債券市場の動向を背景とした円安の流れを変えるのは難しいとの指摘もある。
Masahiko Loo氏は、為替介入によって時間を稼ぐことはできるものの、長期的な相場の流れを変えることはできないと強調した。
介入は今後数か月の円相場に影響を与えるが、今後数年間の動向は、日銀による金融政策正常化の進展や、為替ヘッジに伴う資金の流れに左右されるとの見方を示した。
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