原油高による物価への「2つの波」 くらしへの影響は?

2026/05/04
更新: 2026/05/04

中東情勢の緊迫化などにより原油価格の高騰が続いている。ガソリンや電気代のみならず、広範な商品の値上げが懸念される中、日本銀行は2026年4月30日に公表した最新の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」内の「BOX2:原油価格高騰がわが国物価に与える影響」において、原油高が日本の物価に与える影響を詳細に分析した。

同レポートによれば、原油高が物価を押し上げる動きには、原材料コストが直接価格に上乗せされる「第一の波(1次的波及効果)」と、賃金などに波及して間接的に物価を押し上げる「第二の波(2次的波及効果)」があるという。過去のオイルショックとの違いや、足元で進む円安との比較を交え、日銀の最新分析をもとに今後の物価の行方を分かりやすく解説する。

第一の波:スピードを増す「直接的な値上げ」

原油の値段が上がると、その影響は川の流れのように産業全体へと順番に広がっていく。日銀が産業連関表(Input-Output Table:一国全体の経済活動を網羅した、産業間の取引明細表。波及効果が計算できる)を用いて行った分析によれば、まず原油を輸入する企業がコスト増を被り、そこから3〜5か月程度でプラスチックや化学繊維といった「原油由来の中間的な材料」の値段が約18%上がる。その後、半年から1年ほどかけて、電気代や運送費(水運・航空など)、さらに自動車や電気機械、建設、宿泊や飲食といった私たちが普段利用する最終的なサービスへと値上げの波が押し寄せる。これが、モノの値段に直接跳ね返る「第一の波」である。

ここで注目すべきは、過去との違いだ。1970年代のオイルショックの時と比べると、現在の日本は省エネ技術の発展や産業構造の変化により、経済全体が受ける直接的な値上げのダメージ自体は当時の半分程度に小さくなっている。 しかし一方で、値上げが消費者に届くスピードは、2021〜2022年の原油高局面よりも「速くなっている」と日銀はみている。企業がコスト増を価格に上乗せする姿勢をかつてないほど強めていることに加え、電気代の料金制度が見直され、燃料費調整制度(電気を作るために必要な原油・液化天然ガス・石炭などの燃料の価格変動に応じて電気料金を調整するしくみ)が導入されたことなどが背景にあるためだ。

第二の波:給料と物価の「連鎖的な上昇」は起きるか

もう一つの懸念は「第二の波(2次的波及効果)」である。材料費が上がった企業が利益を確保しようとさらに値上げを行ったり、物価高に合わせて労働者の賃金が大きく上がったりすることで、結果としてさらなる物価上昇を招く現象だ。

1973年の第1次オイルショック後(1974年)には、消費者物価の上昇(+25%程度)を上回る空前の賃上げ(+33%)が行われ、それが企業の人件費を押し上げて次なる物価上昇の要因となった。しかし日銀のレポートは、現時点ではそのような事態に陥る可能性は高くないと分析している。先行きの景気が減速し、企業収益も減益となる可能性が高い中で、賃金上昇率が大幅に加速し、それが物価をさらに押し上げ続けるような状況には至りにくいとみられるためだ。実際、1979年の第2次オイルショックの際は、労使が協調して過度な賃上げを抑えたことで、その後の物価上昇圧力を限定的にとどめた経験がある。

原油高と円安の「ダブルパンチ」に警戒を 

最後に、私たちの生活を苦しめる要因として同時に語られがちな「円安」と「原油高」の違いを見てみよう。

日銀がマクロ計量モデル(経済の動きを予測・推計する計算モデル)を用いたシミュレーションによれば、円安は幅広い商品やサービスの価格を押し上げるのに対し、原油高はエネルギーなど特定の分野を強く押し上げるにとどまるため、全体の物価(生鮮食品を除く消費者物価)を累積的に押し上げる効果自体は「円安ショック」の方が大きい。 しかし一方で、原油価格の上昇は、日本のお金が海外へ大きく流出してしまうこと(交易利得の悪化)を意味する。そのため、円安が賃上げや企業の利益拡大につながりやすいのとは対照的に、原油高は企業の利益や私たちの給料を圧縮し、経済全体を冷やしてしまう性質を持っている。

足元では、原油高が貿易収支の悪化を通じて為替の円安につながる可能性も指摘されている。両方のショックが同時に押し寄せている状態であり、今後の情勢が私たちの家計にどのような影響を及ぼすのか、引き続き注意深く見守る必要がある。

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。