米国務省のマルコ・ルビオ長官は8月18日、国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)の赤根智子所長と、セネガル出身のICC上級公判弁護士アブドゥライ・セイ氏を制裁対象に指定したと発表した。
指定は、ドナルド・トランプ大統領が2025年2月6日に署名した大統領令14203「ICCに制裁を科す」の第1条(a)(ii)(A)に基づく。米国務省は、両氏が「管轄権に同意していない政府の当局者を捜査、逮捕、拘束または訴追しようとするICCの取り組みに直接関与してきた」ことを理由に挙げた。
ルビオ氏は同日の声明で、ICCを「腐敗し、致命的に政治化した超国家的裁判所」と批判した。さらに、同裁判所が「悪意をもって権限を乱用し、与えられた任務を超えている」と主張した。
共同通信によると、米国はICCに加盟していない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対する逮捕状の発付や、アフガニスタンで戦闘に加わった米兵への捜査を巡り、米政府はこれまでもICC関係者への制裁を重ねてきた。
「法の支配」と国家主権の衝突
今回の制裁は、国際的な「法の支配」と国家主権のどちらを優先するかという対立を改めて浮き彫りにした。
ルビオ氏の主張は、ICCが加盟国ではない国の当局者や軍人にまで司法権を及ぼそうとすることを、国内管轄権への不当な介入とみなすものである。その背景には、国家主権を基礎とする従来の国際秩序と、国家の枠を超えて刑事責任を追及する超国家的司法との根本的な緊張関係がある。
国際機関が主権国家を上回る規則や権限を持つようになれば、各国の政治や社会、文化へ介入する可能性も生じる。権力が国際機関に集中することで、国民の意思や国家の自律性が損なわれるとの懸念である。
『悪魔が世界を統治している』第17章は、主権国家を上回る規則や規制が設けられると、国際組織が各国の政治、文化、社会生活に介入し、「世界政府」に似た働きをするようになると論じている。同書は、こうした国家主権の弱体化を、独自の伝統文化や信仰を消滅させ、人類を全体主義的な「世界政府」の支配(ひいては破滅)へと誘導する動きと位置付けている。
産業革命と科学技術の発達により、人の移動、経済、政治は目まぐるしく変化した。現代の遠距離通信、移動手段、コンピューター、デジタルネットワークが世界を縮め、数千年間存在した国境がなくなった。世界は小さくなり、国同士の接触や交易はこれまでにないほど活発になった。これは、技術の発達や製造量の増大、移民増加に伴う自然な現象である。この種のグローバル化は、自然発生的な歴史のプロセスである。
しかし、もう一つのグローバル化が存在する。それは人類を破壊するために、自然なグローバル化をハイジャックした共産主義である。この2番目のグローバル化を検証するのが当章の目的である。
共産主義下のグローバル化とは、基本的に、共産主義および非共産主義政権の最悪の部分を、最速で拡散することである。普及の手段は、大規模な政治、経済、金融、文化のオペレーションであり、非常に早いスピードで国家間および民族間の境界を消滅する。その目的は、人々が救われ、生き残るための心の砦としていた信仰、道徳、伝統文化を破壊するためである。
法律の「武器化」に警戒
対立のもう一つの焦点は、法が特定の政治目的を実現する「法の武器化」の手段となっていないかという点だ。
本来、法律は公正や正義を守るためのものである。しかし、法律が道徳的な基盤から切り離されれば、政治的な要求や特定の価値観を押し通す手段になりかねない。
『悪魔が世界を統治している』第10章は、「神と法律の絆が断たれた」とした上で、法律が復讐や仲裁、取引、利益配分の道具となり、「流行りの概念や欲望を表現する手段」へ変質したと指摘している。
世界に散らばる共産党とその追随者たちが無神論と進化論を宣伝し、神と法律の絆が断たれた。今日、法律は復讐、仲裁、取引、利益の分配をめぐる取り決めの道具になり下がった。すでに神聖さを失った法律は、公正や正義を維持するためではなく、流行りの概念や欲望を表現する手段となった。これにより、人類は共産邪霊に扉を開いた。
こうした見方に立てば、国際司法機関による捜査や訴追も、単なる正義の実現にとどまらず、法が道徳や信仰から切り離され、特定の政治目的や不道徳な価値観を社会に強制する「歪められた道具」へと変質していないかを慎重に検証する必要がある。
国際協調と主権制限
ICCへの支援を「国際協調」や「法の支配への貢献」と位置付ける国々と、超国家的な司法権による主権侵害を警戒する米国との隔たりも鮮明になっている。
国際機関への権限移譲は、国境を越えた犯罪への対応を可能にする半面、自国民や政府当局者を誰が、どのような根拠で裁くのかという問題を伴う。国際協調を重視するあまり、国家の自律性や国民の意思が十分に考慮されなくなるとの批判もある。
『悪魔が世界を統治している』は、善意や正義感を持つ人々も、国際協調や進歩主義を支持する過程で、結果的に国家主権の制限を後押しする可能性があると論じる。教育やメディアを通じて超国家的な統治を当然のものと受け止めるようになれば、国家主権の基盤である伝統文化や信仰が「時代遅れ」なものとして排除される恐れがあるとしている。
共産主義はグローバル化を利用し、包括的なやり方で、伝統文化と道徳的価値観を変異させ、破壊した。利用されたのは、先進国、グローバル企業、国際機関などである。人々は見せかけだけの、便利でグローバルな生活スタイルに浸っている。しかし、人々は自分たちの考え方や意識が急速に変化させられていることに気づいていない。ほんの数十年間に、これらの全く新しい概念が津波のように世界中を飲み込んだ。この概念が浸透した場所の文化と文明は失われる。
今回の制裁を巡る対立は、ICCの個別の捜査や訴追にとどまらず、国際機関の権限をどこまで認めるのかという根本的な問題を提起している。国際司法の正当性を維持するには、国家主権との境界を明確にし、法が政治的な目的のために利用されていないかを不断に検証することが求められる。

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