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中国の都市部と農村部の貧富の差は未だ激しい。80年代以降の中国の実情は正に「富あれど均しからず」である。(Getty Images)

中国のGDPが日本を超えるという狂言について

文・趙 津

 【大紀元日本8月23日】最近、清華大学の中国・世界経済研究センター主任で、経済学者でもある李稲葵氏の一連の談話の中で、「目下、中国経済は減速ステージを抜け、成長加速の段階に入り、谷を抜けた。今年末には中国のGDPは日本を凌駕する」とあった。

 中国経済が減速ステージを抜けたという一言はメディア、ウェブなどに取り上げられており、あたかも大売り出しの大宣伝で知らない方がおかしいという状態だ。これに刺激されるように中国強大論、大国勃興などが喧伝された。経済危機による失業、挫折感の中で、このニュースは藁をもつかむかのように、人々に大きな希望をもたらした。  

 日本の経済規模は1981年以来ずっと世界第2位で、米国と並ぶ2大経済である。李稲葵氏に言わせれば、中国は日本の地位を追い抜くという。その論理でいうならば、中国はいずれ米国を抜いて、一位の座に就くのだろう。そうなれば米国も、中国の「人権問題」などに騒ぎ立てず、独裁を譴責することもなく、生態破壊うんぬんもなく、巨大中国を非難する者はなくなる、という論理だ。  

 ここで振り返って考えてみればどうもおかしい。日本を抜いて米国に迫る? 水膨れのGDP以外に日本と何が比較できるというのだろうか? 国民の資質、生態環境、科学技術、生活水準、福利、幸福度、国家安定度、貧富の格差、さらには人類発展指数(HDI)を比べてみよう。 ここでは全く比較にならない。阿Q伝説に出てくる趙某と趙おじさん(注)の逸話を彷彿とさせる。水膨れGDPで日本、米国という「経済大国」と肩を並べようとしているのだろう。  

 日本は「貧しい国」だというべきである。国土は狭く、埋立地を入れても37・8万平方キロメートルしかない。一人当たりの国土面積は中国の3分の1にもならない。さらに国土の4分の3は森林、山岳、丘陵で、相次ぐ地震や火山爆発がある。耕作可能面積は平野、盆地、丘陵を合わせても13・2%。鉱物資源は殆ど無い。 しかしこの「貧しい国」が1・3億の国民を「養って」おり、しかも実に好調に発展してきた。国民は満ち足りているだけではなく、心身の健康に優れ、世界一の長寿国、初等教育入学率100%、中等教育入学率99・5%と教育面でも世界一、国家イメージも2007年以来世界一、科学技術競争力は世界2位(1位は米国)、研究投資は世界2位、医療体制も一流、国民負担医療費は30%で病院に行けないという問題もない。自然環境についていえば森林面積比率は最高で、日本の人口の10分の1が凝集している東京でも大気汚染はない。日本は世界でも清廉潔白な国のひとつで、貧富の差もアジアの中では最少、収入分配の公平性も最高、ジニ係数はアジア最低、国民の金持ちに対する敵愾心も最少・・・。

 一方、GDPが日本を越えようとする金持ち大国中国で、「世界に冠たる」ものはいくつあるのだろうか。  

 教育費の投入が世界最小で南アフリカの国々にも及ばず、医療面では人口の70%を占める農民に医療保険がなく、医療を受けられない、医療費が払えないという問題はずっと解決されていない。また、環境汚染も深刻。しかし、公務員比率は並はずれて高く、28人に1人と圧倒的に世界一。地方も含め政府機関の建物は豪華絢爛。貧富の差は極端で、一般市民の金持ちに対する敵愾心は当たり前。社会秩序も悪く、たいていの国民は不幸感を抱えている。

 中国の経済発展は人力投入によるもので、経済発展時代の新たな人海戦術、安い労働力、生態系や資源の破壊を見れば、中国経済は「売血経済」だ。血を取り過ぎれば人はそれで終わりとなる。日本の経済発展は、教育への高い投資や、科学技術の進歩により、一歩ずつ発展してきた。発展の中、環境保護や貧富の格差問題を有効的に解決し、国民がみんな一緒に豊かになってきた。中国の場合、80年代以前は「均一あれど富しからず」であったが、80年代以降は「富あれど均しからず」となり、一方、日本は「富は均しく」であるという人がいるが、まさにこの通りだ。  

 GDPが国家の地位を決めるというのは極めて狭い了見だ。例えばインドの場合、経済発展こそ中国に及ばず、輝かしいGDP指標もなく、国民の多くは文盲だが、全国民が参加する選挙が行われ、福利や民主制度は発展を続けている。これこそ羨むべきことだ。

 こうして見れば、中国のGDPが本当に日本を越えても、中国の一般国民にとっては、GDPがなんだというのか?生活環境の改善もなく、社会福祉の改善もなく、世界2位という嘘名が何の役に立つというのか?「大国は作家を養う」、「大国は芸術家を養う」「大国は・・・」と声高に叫ぶ(プロパガンダの)人たちに、ひとつの口実を与えるのみだ。

(注)中国の作家、魯迅によって書かれた長編小説。自分の姓すら持たない貧しい阿Qは、地主の趙太爺に媚びへつらうために、自分の姓を「趙」と名乗るくだりがある。

(「北京之春」より)

(翻訳・田中)

 (09/08/23 10:27)  





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