2026年5月3日、ウズベキスタンのサマルカンドにて「第29回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議」が開催された。ASEAN+3とは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国に、日本、中国、韓国を加えた枠組みのことである。今回の会議には、新たに11番目のASEAN加盟国として東ティモールも参加し、ジョベン・Z・バルボサ・フィリピン財務省 次官、ロザリア・V・デ・レオン・フィリピン中央銀行金融政策委員、片山さつき日本国財務大臣、 及び氷見野良三日本銀行副総裁の共同議長の下、アジア地域の経済や金融の協力について話し合われた。
この記事では、会議後に発表された「共同声明」の内容を解説する。
1. アジア経済の現状とリスク:中東情勢の影
ASEAN+3地域は、2025年の順調な経済成長を背景に、2026年も比較的安定した状態でスタートした。しかし、中東での紛争の激化が、今後の経済にとって大きな不安要素(下方リスク)となっている。
紛争の影響で原油やガスの価格が上がったり、世界的な金融環境が厳しくなったりすることで、経済の成長が鈍り、インフレ(物価が上がり続ける状態)が進むことが予想されている。もし紛争が長引けば、エネルギー価格だけでなく、物流や食料価格など、私たちの生活に直結する幅広い分野に影響が出る恐れがある。
こうした不安に対応するため、各国は団結してマクロ経済(国全体の経済)と金融の安定を守ることを強く確認した。また、日本が主導するエネルギー供給網を強くするための取り組み(POWERR Asia)なども歓迎された。
2. 経済危機に備える「金融の安全網」の強化
今回の会議では、地域で協力して金融危機に備えるための具体的な方針が承認された。その中心となるのが、「チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)」の強化である。
CMIMとは、加盟国のどこかが急な外貨不足などの経済危機に陥った際、お互いに資金を融通し合う仕組みであり、いわば「金融の安全網」である。今回の会議では、緊急時にすぐにお金を借りられる仕組み(緊急融資ファシリティ:RFF)を早く使えるようにすることや、あらかじめ資金を出し合っておく新しい仕組み(払込資本構造:PIC)を導入するための計画が承認された。
3. 経済の見張り番「AMRO」の役割拡大
地域の経済状況を監視し、助言を行う機関である「AMRO(ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス)」は、今年で設立10周年を迎えた。AMROは、経済危機を未然に防ぐための「経済の見張り番」として重要な役割を担っている。今後は、各国の経済動向をチェックする機能(サーベイランス機能)をさらに強化し、より深く踏み込んだ政策アドバイスを充実させていくことが求められている。
4. アジアの金融市場を育てる取り組み
アジアの企業などが、米ドルなどの外貨ではなく「自分たちの国の通貨(現地通貨)」で資金を集めやすくするための取り組みが、「アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)」である。過去20年間で、この取り組みにより現地通貨建ての債券(借金の一種)市場の規模は25倍にも成長した。
会議では、これまでの成果を踏まえ、今後は債券だけでなくもっと幅広い金融の仕組みを活用していくために、名称を「アジア債券・金融市場育成イニシアティブ(ABFMI)」へと発展させることが合意された。
5. 自然災害への備えとデジタルの活用
アジアは自然災害が多い地域でもある。そのため、災害が起きた際の復興資金などを確保するための「自然災害リスクファイナンス・イニシアティブ(DRFI)」の新しい計画(2026~2028年)も承認された。災害保険などを活用し、国や地域が資金面で災害に備えられるよう支援が進められる。
さらに、新たな協力分野として「クロスボーダー・デジタル決済(国境を越えたデジタルでの支払い)」が位置づけられた。デジタル技術を使った国際的な支払いを、安全かつ効率的に行うためのルール作りについて、専門の作業部会(チーム)を作って話し合いを進めることが決まった。
おわりに
次回の会議は、2027年に日本の名古屋で開催される予定である。世界情勢が不安定な中、アジア各国が協力して経済の安定や成長を目指す取り組みの重要性は、ますます高まっている。
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