THE EPOCH TIMES

中国食糧生産に隠された課題(1)

2010年11月27日 07時30分
 【大紀元日本11月27日】食卓で1割以上の食べ物を捨てている中国人にしてみれば、未来のある日、自然災害で中国の食糧生産量が大幅に減り、貯蔵食糧も数十日分しかない、国外からの購入も難しい、となった時の中国人はどうすればよいのか、ということに思いを致す人は極めて限られているだろう。しかし、食糧問題についてはどんな心配も杞憂ではない。まして現在の中国は人的・物的資源の枯渇によって、食糧生産は縮小という危機に直面しているのだ。

 先月21日、中国の国務院スポークスマンは、連続6年の豊作を踏まえて、「今年の農業生産状況は良好、秋の収量も多く、年間収量も豊作だ」と述べた。中国の食糧生産は2007年に5億トンに到達したのち、最近3年間の統計データはずっと高水準を保っている。

 これに対して多くの人が疑問を持っている。2008年3月全国人大政協両会において、著名な稲専門家・袁隆平氏が、「一部の食糧備蓄倉庫は空になっている。彼らは嘘の備蓄量を報告し、国から手当をもらえるだけでなく、倉庫にほかのものを貯蔵することもできる。食糧の本当の備蓄量について、国がしっかり調査すべきだ」と提案書を提出した。乾燥・防虫・品質保全などの手当は、貯蔵量の報告値に基づいて支給されることが、虚偽な報告を生み出したという。

 統計データに大きな虚飾

 袁隆平氏が提案を出した2008年に、大陸のメディアは相次いで大型食糧倉庫が空であることを暴露した。稲産地の安徽省の當塗食糧倉庫は、統計データによると約8万トン備蓄されているはずだが、実際、倉庫は空で埃だらけになっており、鉄の鎖までさびていたという。現地のほかの食糧倉庫の多くも「3年間売る食糧がない」という。黒龍江省の富錦九零食糧倉庫はアジア最大の食糧倉庫と称えられているが、管理者や職員はカビ米さえも盗んで売り、倉庫はほぼ空になっている。12月には四川省の栄県国家食糧備蓄倉庫に火災が発生し、消防隊が倉庫で見たものは、食糧ではなく、ゼリーとコーラだった。

 2009年3月31日から国務院は、3カ月にわたる10万名の食糧関係者による全国食糧倉庫調査を行ったが、検査結果は今も詳しく発表されていない。中国人民大学教授・鄭鳳田氏は、業界内の知り合い同士の調査は結局、「おれもお前も問題ない」というやり方でまとめられ、本当の問題を暴くことはあり得ないと指摘した。

 1998年5月、当時の朱鎔基総理が安徽省の南陵県峨嶺糧站を視察した時、倉庫いっぱいの備蓄を見て非常に喜んでいたという。その後、朱氏は、中国の食糧備蓄は倉庫に入りきらないほどだと話した。実は当時、現地の役人が4日間昼夜兼行で1031トンの食糧をよそから調達した、と倉庫の職員は後に明かした。また、インターネット上に、「規模の小さい備蓄倉庫のガセ情報は酷いもので、8500トンを2万トンという具合に膨らませている。これを全国で積み上げれば年産5億トンの大豊作ということになる。中国の統計データは大嘘で全く信用できない」と事情を知る人は明かしている。

 国連統計によれば、2008年度の世界食糧備蓄率(年間消費量に対する食糧備蓄量の比率)は、2002年度の30%から14.7%に下がり、30年来の最低値となった。全世界の食糧備蓄はわずか4.05億トンとなり、人類の53日分にしかならない。中国も一度は30%に達したものの、その後急速に下降し、現在の食糧備蓄率がどれほどかは不明で、データ自身は水増し帳簿になってしまっている。

 手当不足で、農民が食糧生産を敬遠

 2010年8月、国家発展及び改革委員会主任・張平氏が国家食糧安全問題を語った時に、2004年以来中国の食糧は6年増産が続き、2009年の食糧総生産量は5.3億トンに達し、自給率は95%以上を保っていると述べた。人口増加につれ、2020年の中国の食糧総需求量は5.7億トンと予測される。「中国の食糧安全保障は、需給の差の拡大、水土資源の縮小、農業水利設施の不備、農業科学技術の立ち後れ、国際競争力の増大、など5つの挑戰に立ち向かわねばならない」「現在の中国の有効な農業灌漑面積は耕地の48%に過ぎない。科学技術の農業への貢献率は48%、先進国に比べ20%低い」と同氏は説明している。

 一方、人民大学の鄭教授が、中国の食糧生産が直面する最大の挑戰は農民が食糧生産を望まないことだと指摘した。中国政府が食糧最低購買価格や「4つの手当」(食糧直接手当、農資総合手当、農機購入手当と良種手当)等の食糧生産奨励政策を実行しても、補助の程度が低く、運用に問題が出ることもある。もともと数百元程度の農業税を廃止しても、それ以上の灌漑用水費の徴収が強いられることはその政策の矛盾と言えよう。

 食糧生産は一種の政治武器であるとともに最重要戦略資源であり、各国政府は皆、農民に対して大量の助成金を支給している。米国農業部のデータでは、2000年の米国政府の農業への助成金は農民收入の40%に達しており、EU各国政府の助成も農民収入の約35%、2000年の日本の農業への補填はGDPの1.4%に達しているが、同期の農業生産値はGDPの1.1%しかない。これらの国において、農民収入は都市居住者と大きな差はない。

 ところが、中国では、種子や化学肥料、農業機械、水利費、電力費が絶えず上昇し、農民が1年間懸命に働いても、2、3千元程にしかならず、出稼ぎ収入の3分の1、都市住民と比べれば5、6倍の格差となっている。現在中国農村の壮年労働力の大部分は出稼ぎで、農民工人口は2億以上に達し、将来は4億に増えるとも言われる。誰も田畑で働きたがらず、これが未来の食糧生産における最大の課題となっている。

 大陸メディアの報道によれば、2010年2月、中央財政は食糧生産農家への直接手当資金に867億元を計上し、2009年の4つの手当資金に1230億元を計上している。米国やEU諸国と比べ、単位面積の手当水準に大差はないが、中国の1軒あたりの経営規模はほとんど10畝以下であるため、家庭収入という面からみると、中国農民の手当額は先進国に比べて大幅に低い。

 (続く)

(編集・張凛音)


関連キーワード
^