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『赤い資本主義:脆弱な中国金融基盤』 中国経済神話の本質暴く新書=WSJ紙

 【大紀元日本9月9日】今年出版された『Red Capitalism: The Fragile Financial Foundation of China‘s Extraordinary Rise(赤い資本主義:中国の目覚ましい台頭を支える脆弱な金融基盤)』では、いわゆる中国経済神話の本質が暴かれ、中国金融機関の財務基盤の脆弱さに強い危機感が示されている。著者の元JPモルガン・チェース銀行(中国)最高執行責任者のカール・ウォルター(Carl E. Walter)氏と仏系証券会社のCLSAアジア・パシフィック・マーケッツ(シンガポール)の常務取締役フレーザー・ハウイー(Fraser Howie)氏は中国の金融セクターに詳しい投資銀行家だ。8月31日付ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)中国語電子版が報じた。

 中国株式市場株価は2007年にピークを迎え、現在株式時価総額は半減した。それに対して、同様に2007年史上最高値を付け、その後急落した米主要株価指数であるスタンダード・プアーズ(S&P)500の下落幅は25%に止まっている。中国の株式市場の急落はそれまでの異常な上昇と関係しているほか、最近の銀行セクターにおける不良債権の急増への憂慮から、投資家が相次いで株式を売却し株式市場を敬遠するようになったことも一因となっている。

 2008年中国政府が打ち出した4兆元(約48兆円)景気刺激策により、2009年と2010年の2年間で中国銀行セクターによる新規融資規模は2兆8000億ドル(約215兆6000億円)の記録的水準に達し、そのうち1兆7000億ドル(約130兆9000億円)は、政府がインフラ設備の建設を奨励したため、地方政府に流れた。ハウイー氏は「中国の4大商業銀行がこのほど公表した今年上半期の利潤増加率は一見悪くないが、しかし将来新たな問題のある融資が徐々に水面下から浮かび上がってくるだろう」とし、また「これらの商業銀行は不良債権への対応能力をすでに失っている」と指摘した。

 20世紀90年代に中国政府は不良債権に悩まされる大手国有銀行の立て直しと株式市場の再建を図るため、中国の中央銀行は資本市場の地位を確立させ、債券市場の規模を拡大させ、大手銀行の資本構造の調整も行ってきた。4大銀行のうち、中国銀行、中国建設銀行と中国商工銀行の新規株式上場(IPO)を実現させた。また、欧米大手金融機関の資本参入を促すため、それらの銀行の一部の株式を政府系投資ファンドや、バンク・オフ・アメリカなどの欧米大手金融機関に売却した。中国4大商業銀行の2009年の総資産額は中国全金融資産の75%を占めることとなり、HSBCやシティ・バンクなどといったグローバル規模の欧米メガバンクに匹敵するという印象を与えた。

 しかし、このような銀行改革は国民の収入格差を拡大した、と中央銀行と対立する一部の共産党の官僚から批判された。同書によると、各官僚機関の利益を均衡にするため不良債権問題が徹底的に解決されないまま、2005年から改革の規模が縮小し始めた。

 同書によると、中国政府は90年代に巨額な不良債権を処理する目的で、4つの資産管理会社を設立したが、現在これらの会社は事実上、大手銀行の管理下に置かれているという。しかし、これらの資産管理会社が達成した資産回収率は20%に過ぎないと言われている。しかも、大手銀行は、国内の高速鉄道のような直ちに収益の見込みのないプロジェクトに貸出を行っているため、将来回収できない融資の増加が予想されるとした。

 ハウイー氏とウォルター氏は同書で、銀行セクターにおいて極めて高い配当支出率に懸念を示した。2004年から2008年において、銀行セクターが支払った株式の配当総額は420億ドルに達し、株式市場から調達した資金規模と同じだった。同書で「これは国内外の投資家の上場している中国系銀行への投資はただ配当金となって支払われたことを意味する。これらの配当金は大部分、中国の財政部および中央銀行に支払われた」と記されている。

 こうした表面的な規模の大きさや見せかけの活気の裏には共産党一党支配ゆえの脆さがあると分析する。銀行分野の問題は、中国共産党が国営企業等に資金を融通するための道具に過ぎない。債券市場の問題は、トレーディングが活発ではないため、価格メカニズムが働かずリスクも適切に測ることができない。さらに、株式市場の問題は、IPOでは党幹部の家族などが儲けるようになっており、また投機性が強く長期的観点から投資を行う機関投資家がいないことなどを指摘している。また、中国は公的債務残高が低いと言われているが、中央政府の債務に財政部(財務省に相当)が発行した債券や地方政府の債務などもあるため、実際はすでに莫大な額の債務があるとしている。

 著書の中で、人民元の為替政策も大きな問題の一つであるとの認識が示されている。過小評価された人民元の為替政策の実施により大量のドル資金が中国へ流入し、さらにその政策を維持するためインフレ圧力が増す一方である。政府は一連の応急措置を採っているが、その結果、さらなる大きな金融システムの構造的危機をもたらすにほかならないとの見解を示した。

 WSJ紙は「もしカール・ウォルターとフレーザー・ハウイーの論述が正しければ、中国の大型銀行財務基礎の脆弱性は我々の想像を超えるものであり、中国経済ないし世界経済に大きな打撃を与える」と論評した。

 驚異的な経済発展を支える金融システムが大きな脆弱性を抱えていることを指摘した同書は、中国の矛盾に満ちた経済の仕組みを理解する上で極めて分かり易い包括的な解説本であるといえよう。

(翻訳編集・林語凡)


 (11/09/09 06:48)  





■キーワード
中国経済神話  金融システム  脆弱性  不良債権  人民元相場  


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