海外の中国系住民を洗脳する―新中共メディアの宣伝効果

2005/03/13
更新: 2005/03/13

中国は経済発展と国力上昇に伴い、対外宣伝に多くの資金を投入するようになった。特に力を入れているのが海外のメディア、とりわけアメリカのメディアであり、その宣伝効果は日増しに顕著になっている。

アメリカで発行されている主要な中国語新聞四紙は、何れも中国政府の影響ないしコントロールを受けている。まず『僑報』は中国政府の出資による新聞であり、その直接の支配下にあると見られているし、次に『星島日報』のオーナーは中共の政治協商会議の委員であるし、また『明報』の経営者は誰も知らぬ者とてない北京の商業界のボスであり中共と密接な関係のある人物であるし、さらには『世界日報』に対しても、同紙の母体である台湾の『聯合報』が北京との経済発展関係を模索して中国に投資をしていることにより、中国政府は経済的手段を使って、北米地域で最大の発行部数を誇るこの新聞の立場や報道に影響を与えている。アメリカ在住の中国人学者・梅都哲は、中共による海外の中国語メディアへの浸透に関する研究書の中で次のように書いている。「ニューヨークおよびサンフランシスコの中国領事館は、『世界日報』のそれぞれの地方版に圧力をかけ、法輪功に関する広告を掲載しないようにさせている。ニューヨーク版の『世界日報』はすでに完全に同意し、サンフランシスコ版の『世界日報』も部分的に同意している。サンフランシスコ版はいまだに法輪功の広告を扱ってはいるが、その九割方はいちばん目に付きにくいところに掲載している。」

最新の統計によると、アメリカにいる中国系住民は288万人に達し、過去10年間で50%も増加しており、すでにアメリカ総人口の1%を占め、アメリカにいるアジア系住民の中ではいちばん数が多い。アメリカの国勢調査によれば、中国系住民の60%以上が英語の能力の限界を認め、情報源としては主として中国語メディアに依存している。中国語新聞はそういう人々の主要な情報源となっている。アメリカの主要な四つの中国語新聞や主要な中国語テレビメディアが、中国政府の影響やコントロールを受けているとすれば、中国政府の影響がアメリカの中国系住民に及んでいることが推察される。

北京中央テレビ局の『テレビ研究』2004年4月号で張利中は、「顕著な対外宣伝の新しい特徴」と題してこう書いている。「中央テレビ局の海外連絡部の統計によると、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリアなど65の国と地域において179の海外テレビ局が、中央テレビ局の有線第四チャンネル及び有線第九チャンネルの番組のうち、中国政府指導者の活動に関するものの全部あるいはその一部を放送している」。

香港の『鳳凰テレビネットワーク』が発表した陳萌滄の「対外宣伝は中国をどのように報道しているか」という文章では、中国中央テレビ局有線第九チャンネル総ディレクター・江和平の次のような言葉を引用している。「現在、中央テレビ局は海外のメディアとの協力事業を通じて、すでに海外に1400万のユーザーを抱えているが、そのほかアメリカの十幾つの大都市にある40あまりのホテルでも、アメリカエリート層が中央テレビ局の番組を見られるようになった」。

さらに中央テレビ局は、アメリカの主要な都市にある地方テレビ局に無料ニュース番組などを提供している。そういう中共ニュース番組の提供を受けているサンフランシスコのケーブルテレビ局「CableKPST66」には、同市の湾岸区に230万のユーザーがいる。長い間、そういった番組を見ている視聴者の話では、中央テレビ局はアメリカの中国系住民に向けて、中国政府による偏向したニュースや宣伝を放送しているという。中央テレビ局有線第四チャンネルのほとんどの番組は明らかに反米的な内容である。『ニューヨークタイムズ』紙が主宰している『インターナショナル・ヘラルドトリビューン』紙は、2003年8月4日、「中共政府は全力を傾けて中国の宣伝をしている」という文章を発表した。

新中共メディアは中国政府の宣伝放送を流し、海外の中国系住民の思考や認識に大きく影響を与えている。例えば、アメリカの新中共新聞や新中共テレビなどによる法輪功(ファールンゴン)を悪しざまに伝える宣伝や攻撃は、中国系住民の法輪功に対する見方に相当な影響を与え、法輪功学習者に対する反感や憎しみの感情を生じさせることにもなっている。2003年6月30日、ニューヨークのチャイナタウンに行った駐米中国領事館職員の前で、法輪功学習者が或る請願行動をおこなった。すると、中国領事館と親密な関係にある「ニューヨーク華僑組合聯合本部」代表の梁冠軍らに取り囲まれて殴打され、二人が負傷した。法輪功学習者は警察に通報し、警察は梁冠軍らを起訴した。アメリカ議会もこの事件について聴聞会を開いた。

法輪功の問題だけでなく、ユーゴスラビアの中国領事館誤爆事件や中国空軍機とアメリカ空軍機との衝突事件、9・11事件などの報道を見ると、中国政府の海外宣伝が外国にいる中国系住民にかなり大きなマイナスの影響を与えていることが分かる。海外の主要な中国語ウェブサイトである『多維ネット』や『万維読者ネット』の読者フォーラムでは、法輪功を論じた書き込みのうち80%以上が法輪功を攻撃したり悪く言ったりするものだった。9・11事件発生後、海外最大手の中国語ウェブサイト『多維ネット』の「皆のフォーラム」では、書き込みの半数以上が、3000人のアメリカ人が犠牲になったことをいいきみだと思う、うれしいといい、9・11事件は「アメリカ覇権主義」に対する攻撃だと言っている。 

アメリカのスペースシャトル「コロンビア」の打ち上げが失敗したとき、多くの人が『多維ネット』の「皆のファーラム」にアメリカ人の災難を「いいきみだと思った」と書き込み、スペースシャトルの機体がバラバラになった空中に弧を描いて飛び散った様子を「中国人が祝日を祝う花火」であると称した。

アメリカの中国語ウェブサイトのこのような反米感情は、中共当局が長期にわたっておこなってきた対外宣伝や、海外の中国系住民に対する目に見えない洗脳作用と直接の関係がある。

中共の新聞は自由にアメリカで発行することができ、中央テレビ局の番組もアメリカの有線テレビチャンネルで自由に放送することができるのに、アメリカの新聞やテレビは中国に進出することができない。『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)や『自由アジアラジオ』(RFA)の番組は中国政府によって受信が妨害されているし、アメリカの新聞が中国で発行されることはもちろん禁止され、中国ではアメリカのウェブサイトにアクセスできないようになっている。

中共は外部の情報を封鎖することにより国内の民衆を愚弄し続ける一方、海外の中国語メディアに対する影響力や支配を通じて中国系住民に中共の考え方を伝える宣伝をおこない、そうして洗脳したアメリカの中国系住民をアメリカに対する破壊力にしようと企んでいる。これは、世界中で共産政権が次々と崩壊し、もはや挽回できない状態になった今、防御のために攻勢に出るという、延命策のひとつなのである。

(『月刊中国』第32号)

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