北朝鮮、 9月 1日から市場統制に本格的突入

2005/11/14
更新: 2005/11/14

【大紀元日本11月14日】北朝鮮が現在、緊急救援方式の国際機関による食糧支援を拒否し、開発復旧の方式に変更するよう要請したことは既に伝えられているとおりであるが、世界食糧機構(WFP) 平壌事務所の閉鎖と食糧配給モニタリング要員の撤収も要求したと伝われている。

一方北朝鮮は 10月 1日から新しい食糧配給体系を取り入れた模様である。その方式が食糧を国家で独占販売する方式なのか、過去のような食糧配給体系に完全に復帰することなのかは、まだ一致した証言はない。明らかなことは、どんな方式になったとしてもこのような制度を実施するためには北朝鮮が十分な食糧需給計画を持っていなければならない。

しかし北朝鮮内部消息に精通した専門家たちは北朝鮮の今時点での食糧是正を懐疑的に評価している。また性急にこのような制度を実施することに対してもいぶかしがっている。この問題に対して DailyNKは、中朝国境地域で取材活動をしている特派員たちへのインタビューを通じて各種証言を整理し、今後の展望を試みた。

DailyNKは北-中国境の東部地域に金・ヨンジン特派員、西部地域に権・チョホン特派員を派遣して、常住取材活動をしている。北朝鮮関連の取材活動の特性上、二人の特派員は仮名を使っていることを明らかにしておく。インタビューは 9月 8日夕方と 9月 9日午前にかけて行われ、郭・デチョン記者が司会を引き受けて内容を整理した。

食糧需給体系に変化が生じたことは確実

郭・デチョン:先に最近の食糧配給体系の変化に対して証言が食い違っているので正確に整理をしてください。

権・チョホン:私は 8月 27日頃に初めて証言に接しました。当時本社の指示で別件を取材中でしたが、中国の行商人と米を取り引きする北朝鮮の商人が 、「これからはこの商売もできなくなる」と執拗に言っていました。それで聞いてみると、「9月から市場での米の売買ができなくなり、国家が個人から米を買い上げて販売する」と言いながら、「住民たちは喜び、商人たちには怨嗟の声が挙がっている」と、北朝鮮の内部状況を伝えてくれました。

郭:9月に実施される制度が、8月 27日まで外部にリークされないことがあるでしょうか?

権:北朝鮮は突如として電撃的に政策を実施する癖があります。2002年 7月1日の経済管理改善措置も、半月前までは誰も予想できませんでした。その前日になって、やっと各市・郡の行政単位で指示が下り、「密封伝達された通知書を必ず 7月 1日朝に開けるように」との指示が伝達された、という噂までありました。

金・ヨンジン:私は権記者からの電話を聞いて分かりました。ところで内容があんまり荒唐で信じられませんでした。私が接触している取材源たちも初耳だと言いました。権記者にも “証言の信憑性がない”と伝えました。

権:私も新義州地域の商人たちには確認できましたが、他地域の商人たちには確認できない状態だったので報道をためらいました。ところで 8月 31日付け東亜日報に報道されました。

郭:東亜日報の報道は『国家独占販売』ではなく『食糧配給再開』ですが?

権:とにかく食糧需給体系に何か変化が生じたことは確かでした。

金:私も東亜日報記事を読んで変化があることは確かだという考えで、北朝鮮の内部消息筋に聞いてみました。すると茂山、穏城郡の党幹部たちからこれからは国家で米を販売する、市場で米販売は禁止するという情報が聞こえてきました。

郭:どうして初めから聞くことができなかったですか?

金:(笑い) 荒唐無形で、「まさかそんな事が?」と思いました。

権:私は、北朝鮮政府も完全な馬鹿ではないのに、どうしてそんな政策を展開できるのか? まことに首を傾げています。

“南韓も、私たちが『先軍の盾』で守ってやっている”

郭:北朝鮮政府がそんな仕業をしたことは、一、二回ですか?(皆笑い)。金記者が昨年8日に送った記事には東亜日報記事内容と似ている配給制への復帰内容を記しているのに?

金:そうです。ところで私が記事に書いたように、配給制の復帰を話してくれた人は、外貨稼ぎの行商人でした。北朝鮮政府は海外旅行者たちに、“外国で話す内容”を暗記するように教育しています。北朝鮮の偉大性を宣伝する内容です。配給制復帰も 「もう共和国が元に帰っている」ということを誇示するために作った希望事項の宣伝内容の可能性があります。

その人と1時間話しましたが、40分余りの間、米国とハンナラ党(韓国与党)を非難し、北朝鮮の核保有は正当であると熱心に主張していました。とりつく島がありませんでした。

郭:どんな話でしたか?

金:特にハンナラ党に対する非難が多かったです。ハンナラ党は統一の障害だ、腐ってしまった人間たちの集団だ、米国人どもよりもっと悪い、祖国統一の決定的局面を塞いでいる…… なんか、このような話でした。特別に具体的な事例を話すのではなく、無条件に悪いとばかり言って、私の手をしっかり握っては、ハンナラ党に反対して、きっぱり戦ってくれるよう頼まれました。

郭:北朝鮮の核兵器については?

金:それもお決まりの内容です。「私たちはもう核を作った。米国人ともが私たちを見下すから、先軍の威力を見せつけてやるために作った。南韓も私たちが ‘先軍の盾’で守ってやっている」このような話です。

郭:『平和的核利用』や『六カ国協議』に対する話はなかったのですか?

金:具体的な話はありませんでした。ただ、米国人どもは世界最大の核保有国なのに、私たち共和国の核問題だけを問題視するという話をしました。6者会談が今休会中である、という事実も知りませんでした。

郭:それではまた食糧問題に話を移しましょう。今、北朝鮮の一連の行動を見れば食糧問題にある程度自信を持っているようですが、内部事情はどうですか?

権:信義州は元々豊かな町内であったから除いて…… 食糧難の時も信義州で死んだ人は本来信義州の住民ではなく食糧を求めるために信義州まで来て飢えて死んだ外地の人たちが大部分です。信義州以外の平安道地域は完全に米飯を食べる家が 10~20%位、3:7ご飯や 5:5ご飯(米とトウモロコシの割合)を食べる水準の家が 50% 位です。残りはトウモロコシのお粥でどうにかして凌いで暮して、とにかく完全に飢える家はほとんどありません。2~3年前と比べて随分良くなったと思います。

金:咸境道地域も同じです。もう飢え死にする人々はいないですね。切ない話だが “死ぬ人はもうすべて死んだ”と言うのが北朝鮮住民たちの話です。しかし絶対に食糧が豊かとか残るということではありません。今年 7月から南韓から入って来た支援米が開放されて、米価格が下がる珍な現象が見えていますが、配給を再開できる程ではないと思います。

豊年だが配給再開の情況ではない

郭:去年と今年、北朝鮮が豊年だったという話でしたが?

金: そうです。しかし豊年だったとしても食糧の不足分を充足することはできないでしょう。北朝鮮政府や国際機関は北朝鮮の食糧不足分を約 80~120万トン位と推算し、今年おおよそ 90万トン位が支援されたようです。しかし不足分が支援食糧ですべて満たされると言っても、それは北朝鮮食糧の最小必要限です。

今、北朝鮮の収穫高は米とトウモロコシのみならず、じゃがいも、きび、小麦、 麦などすべての雑穀を含んでいるとのことですが、この状態で配給制に復帰することはできないです。豊年になったと言っても、お米とトウモロコシに50% 以上の生産増があると完全な配給が可能ですが、それは北朝鮮で農業革命が起きない限り不可能だといえます。

権:今年新年の共同社説で、農業を“人民経済建設の第一線”と宣言し、田植えの季節には商売を一切禁止して全住民を田植に動員するなど露骨な動向が確認されました。しかし北朝鮮の集団農業体系の本質的問題点、土壌の酸性化などによって生産量増大に限界があるのは明らかです。このような問題に対する改革なしに‘80年代以前の配給水準に復帰することはもう不可能だと思われます。

郭:北朝鮮の気候条件が、元々米作に適合しないと言う人々もいます。

金: (笑い) 北朝鮮よりもっと北の地域であるこちら中国満洲地域でも米はよくできています。今は中国米が北朝鮮に入っていますが、個人農業だけ許可されれば北朝鮮のおいしい米が中国に輸出されるでしょう。

郭:配給体系の変化に対する結論は?

金:8日夕方に咸境北道・清津市から入って来た商人の女性に会いました。彼女は「 9月から米商売ができなくなる。中国から持ちこむこともできなくなるし、工産品の販売もできなくなる」と言いました。咸境道地域から入手した情報は、概して“商売の禁止”です。市場で米の販売を禁止した所は、清津、茂山、京城、などの三ヵ所でした。

ところで国家が米を買い占め始めたという消息はまだ具体的に入って来ていません。それで確かな政策運用方向に対しては、今言う時点ではないようですが。

権:今入って来る情報を総合して見ると、工場稼動が完全に成り立っている主要企業所に対しては食糧配給を再開して、市場を統制しながら国営商店を通じて食糧を販売するのです。したがって出勤する人は食糧を受け取れて、そうではない人は買って食わなければならないでしょう。このようにして漸次、過去の社会主義運営システムに復帰しようとするのではないか思われます。

ところでこのような措置も深刻な問題点があります。第一は工場稼動率が法外に低いということ、二番目は市場を統制すれば職場に出ない人は一体どうやって生計を立てて暮らすのかということです。

労動党創建 60周年を迎えた誇示用政策であるよう

郭:過去にもこんな事がありましたね。

権:北朝鮮政権は周期的に市場を統制して来ました。2002年 7月1日経済管理改善措置以後でも月給を与えると言って与えない、配給を与えると言って与えないという措置を繰り返して来ました。今度にも豊年と支援食糧増加によって食料事情がちょっとよくなるようだから一度強気に出るようです。10月 10日が『労動党創建 60周年』という事実も念頭に入れる必要があります。

金:私の考えも同じです。今年 9・9節(共和国創建日)は静かに過ぎ去りましたが10・10節は派手にやるでしょう。そこに何らかの対内外的イベントが必要です。6者会談がどんな方向に流れるかは分からないが、その頃なら何らかの結論が導き出されているでしょう。

北朝鮮が何らかの譲歩を引き出したら祝宴の雰囲気で、米国と決裂したら決戦の念をおす雰囲気で行事が行われるでしょう。とにかく『苦難の行軍』を勝利的結束して、“かなりうまく行った過去に帰る”と言う雰囲気を鼓吹させる次元で社会主義の象徴と言える食糧配給を再開するジェスチャーを取るといえます。

郭:とにかく金正日が経済門外漢であることはもう一度証明されますね。7月1日経済管理措置以後おびただしいインフレーションで人民たちが苦痛に遭っているじゃないですか。今度もう一度無茶な政策によって人民が苦痛を経験することを思ったら息苦しくて堪忍袋の緒が切れますね。くれぐれもお二人様の元気で、 活発な取材活動期待します。

権、金:有難うございます。

対談、整理:郭・デチョン記者 big@dailynk.com

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