WTO、上級委が機能不全に 米が委員選任改めて拒否

2019/12/10
更新: 2019/12/10

[ジュネーブ 9日 ロイター] – 世界貿易機関(WTO)の上級委員会(最高裁に相当)が委員の欠員により機能不全に陥ることが確実になった。10日に任期切れを迎える委員2人の後任を巡って米国が9日、選任を改めて拒否したためだ。

上級委の定員は本来7人だが、米国が過去約2年にわたり委員の新たな選任を拒否し続けた結果、委員の数は審理に必要な最低人数となる3人にまで減少した。10日に2人の任期が満了し、残り1人になれば、新規の紛争案件は処理できなくなる。

米国のシア大使は会合で、上級委がWTO規則を超越したり度外視した判断を下していると批判した上で、委員の新たな選任を支持しないと表明した。

米国は、中国政府による産業補助金や知的財産権の侵害といった問題で、WTOが疑わしきは罰せずという原則に基づき中国に有利な判断を下したことを問題視している。

WTOのアゼベド事務局長は「十分に機能し、公平で拘束力のある紛争解決制度は、WTOの中核だ」と述べ、「われわれの優先事項でなければならないこと、つまり、上級委員会のための恒久的な解決策をみつけることを放棄することはできない」と強調した。

欧州連合(EU)のマシャード大使は「2日後にはWTOは通商問題に関して拘束力のある決議を打ち出せないばかりか、上級委への上訴権も保障できなくなる」と指摘した。

上級委の機能停止を見越して、EUは、カナダおよびノルウェーとの間の問題について、上級委の元メンバーに仲裁してもらう形で合意している。

*内容を追加して再送します。

Reuters
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