東南アジア提携諸国に働きかける米国

2021/03/11
更新: 2021/03/11

米国に対する東南アジアの信頼感が高まる中、ジョー・バイデン米政権で新たに任務に就いた防衛・外交関係の重要閣僚等の政策は、同地域の政策立案者等との関係構築に努めている。

東南アジア諸国で米国関与の欲求が高まる状況を受け、米国首脳陣はそれぞれ任務初日にインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムなどの同地域の防衛・貿易提携国と電話会談を行った。

シンガポールに所在する東南アジア研究所(ISEAS Yusof Ishak Institute)が実施した東南アジア諸国の国民意識調査によると、東南アジアの政策立案者の間で中国への信頼感が低下する一方で米国への信頼感が高まっている。

ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10ヵ国における1000人の企業幹部、ジャーナリスト、政策立案者、専門家を対象に実施された同研究所の東南アジア諸国の調査結果が2021年2月に発表された。

調査回答者の61.5%が、選択を余儀なくされた場合は米国と提携すると述べている。中国を選択した回答者は38.5%に留まった。 回答者は同地域における中国の権力行使に恐怖を感じている。

同調査の報告書には、「地域における中国の支配的な経済力と政治的影響力は、好意よりも畏敬の念に繋がった」および「大多数の回答者は、中国がその優れた経済力と軍事力を他国の利益や主権を脅かすために使用する可能性について懸念している」と記されている。

こうした感情を背景として、米国首脳陣はASEAN諸国との関係強化に取り組んでいる。2月10日にフィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相と電話会談を行った米国のロイド・オースティン国防長官は、フィリピンの主権保護を支援して南シナ海における中国の脅迫的行為に対峙すると誓約している。

発表された会談の概要によると、オースティン国防長官は「米国が米比同盟および『米比相互防衛条約』と『訪問米軍に関する地位協定』に基づきフィリピンを支援することを再確認」している。1月下旬に行われたアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官とテオドロ・ロクシン・ジュニア(Teodoro Locsin Jr.)比外相の電話会談でも同様の議題が協議されている。

米国が東南アジアを優先課題として重視していることは、米国上院で就任が承認された翌日にブリンケン国務長官がフィリピンの外相およびタイの副首相兼外相と電話会談したことからも伺える。米国国務省の発表によると、ブリンケン国務長官は外相を兼任するタイのドーン・ポラマットウィナイ(Don Pramudwinai)副首相との電話会談で、「米国とタイの防衛同盟の堅牢性を確認し、世界的な新型コロナウイルス感染症パンデミック対策への取り組みを見直しただけでなく、自由で開かれたインド太平洋全域における共通の繁栄と安保目標および価値観を推進する上で協力することの重要性について協議している」。

このわずか数週間後、ブリンケン国務長官はインドネシアのルトノ・マルスディ(Retno Marsudi)外相とも会談し、両国の戦略的提携関係および「両国の広範な二国間関係を強化することの重要性を強調した」と、米国国務省は発表している。

ブリンケン国務長官はまた、2月4日に外相を兼任するベトナムのファム・ビン・ミン(Pham Binh Minh)副首相とも会談し、「自由で開かれたインド太平洋地域の平和と繁栄に対する共通の取り組み、および法治に基づく南シナ海の保護と維持」について協議している。 

(Indo-Pacific Defense Forum)

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