「ほぼ毎日私たちに仕掛けている」、米作家が中国当局の超限戦を警告 

2021/03/30
更新: 2021/03/30

「プロパガンダ、検閲、偽情報、スパイ活動、脅迫、賄賂、性的誘惑、威圧、暗殺、拉致、暴力行為、サイバー攻撃、悪意に満ちた影響力の行使は、中国共産党が自由・民主主義世界に対する全面戦争で使用する武器の一部に過ぎない」

米作家、ケリー・ゲルシャネック(Kerry K. Gershaneck)氏はこのほど、大紀元の取材にこう語った。同氏の著書、「政治的戦争:中国に対抗するための『戦わずして勝つ』計画の戦略(Political Warfare: Strategies for Combating China’s Plan to ‘Win Without Fighting ‘)」は昨年出版された。

「政治的戦争」と呼ばれるこの戦争形態は、「超限戦」などの呼び方で知られており、直接的かつ本格的な軍事攻撃には至らない。しかし、ゲルシャネック氏は、「政治的戦争」は兵器を使わずに敵に勝つことを目的としているため、軍事攻撃と同じく殺傷力があり致命的だと指摘した。

過去3年間、台湾の国立政治大学で客員研究員を務めるゲルシャネック氏は「中国共産党はあらゆる物事を利用して戦争をしている」「これは西側諸国が理解できない発想である」と話した。

米政府で防諜機関の官僚を務め、東南アジアの大学で教鞭をとっていたゲルシャネック氏は著書の中で、中国側の超限戦について、米国務省や国防総省の担当者に質問した際、担当者らは「茫然自失した」と紹介した。

同氏は、中国共産党政権がほぼ毎日、欧米各国に政治的戦争を仕掛けているとした。

不知

ゲルシャネック氏は、このような不知は冷戦末期からドナルド・トランプ氏の大統領就任まで、米国の歴代政権にあったとした。

「これは、旧ソ連を倒した西側諸国が安心感に浸かっていた結果だ。冷戦が終わった当時から、民主主義が共産主義に完全に勝利したという考えが広がっていた」

「しかし、私たちはもう1つの脅威、中国(共産党政権)を軽んじた。当時、貿易や国際社会との関わりが増えれば、中国はやがて民主化していくというのが一般的な考えだった」

ゲルシャネック氏は、この考え方の下で、米政府は冷戦時代に構築した政治的戦争への対策を停止し、大学や軍学校でも政治的戦争に関する講義を廃止したと示した。

同氏は「不知だけではない。政府の当局者の中には中国共産党の脅威を認識したにもかかわらず、『自分の仕事ではない』『面倒だ』『次の選挙で資金調達に支障をきたすかも』として、故意に無視していた人もいる」と述べた。

同氏は著書の中で、中国当局が経済的圧力、賄賂、脅迫、心理術など、さまざまな方法で米国の政治家、ビジネスマン、文化人を巧みに操っていることを明らかにした。

「長年にわたって『死のスパイラル』に陥っていた米国の状況は、トランプ氏が大統領に就任してから、ようやく良くなった。トランプ政権のキーパーソンたちはこの深刻な脅威を非常に理解していた」

ゲルシャネック氏は、「トランプ前政権が築いた基盤の上で、バイデン新政権はより多くのバックボーンをもち、中国当局による脅威をより理解できるだろう」との見方を示した。

統一戦線

ゲルシャネック氏は、中国当局による超限戦の中で、統一戦線工作が特に成功していると指摘した。

中国共産党の指導者たちが「魔法の武器」と呼んでいる「統一戦線工作」は、何千もの海外の団体を対象にしている。中国共産党の統一戦線工作部(UFWD)は、海外の団体を通して、各国で政治的影響力を行使したり、反体制運動の抑圧や情報収集をしたりするほか、中国への技術移転を促している。ニューズウィーク誌の昨年の調査では、米国内に約600のこのようなグループが存在する。

「長い間、統一戦線工作部の組織は、米国内でほぼやりたい放題で活動していた」

ゲルシャネック氏は、米国内のシンクタンクや学術機関に勤務していた頃、中国当局の統一戦線工作活動を目の当たりにした。影響力のある中国側の代理人は、アナリストや学者、経済界のリーダーを引き付けるのに 「非常に成功している」という。

「中国当局の代理人たち、または統一戦線工作部の工作員がいかに米国の教育機関やシンクタンクに歓迎されたかを見たことがある」

「統一戦線工作部に狙われた米国人は、中国側の夕食会や中国旅行に招待されたりする。米国人を引き付けるために、中国側のスパイらは中国共産党最高指導部に関する貴重な情報などを提供することもある。これらの米国人は、中国当局にとって自分は重要な存在だと思い込んでいる。でも、自分がどれほど操られているかを彼らは気づいていない」

「日常的に統一戦線工作部のスタッフと交流している米国人が、中国共産党の思惑通りに行動しているのをよく目にしている。彼らは、中国当局に言われなくても、基本的に中国共産党の立場を代弁するのだ」

ゲルシャネック氏は、米政府は米国内の統一前線工作を行う組織や工作員を調査し、法的措置を講じることを含めて真剣に取り組む必要があると主張した。

トランプ前政権は昨年、中国共産党の統一戦線部の組織、「中国平和統一協会(NACPU)」を外国の使節団に指定した。また、前政権は、米国にある孔子学院について、中国共産党の宣伝機関と認定した。

ゲルシャネック氏は、中国共産党の政治的戦争から米国を守るためには、まず中国当局の脅威の本質を理解しなければならないと強調した。次に、対策組織や教育機関の設置を含む、反撃するための包括的な戦略を打ち立てることが必要だとした。これらのことができなければ、中国共産党の政治的戦争に勝つチャンスは見込めないと同氏は危惧している。

同氏の著書は、米海兵隊大学出版局(Marine Corps University Press)にて無料で読むことができる。

(記者・Cathy He、翻訳編集・張哲)

関連特集: