「日本よりも中国が嫌い」大統領選挙を控えた韓国、急激に悪化する反中感情

2021/07/05
更新: 2021/07/05

世界的に反中感情が高まるなか、韓国でも中国共産党(以下、中共)に対する国民の「嫌中」感情が過去最高に達した。このことで、親中路線を取る文在寅大統領が率いる与党「共に民主党」の来年3月の総選挙の展開に暗雲が立ち込めている。選挙前の活動は7月から始まる。

反中感情の高まりは、地方選挙の結果にも影響している。市長の死去や不祥事を受け、4月にソウル・釜山市長補欠選挙が実施された。両市とも反中共を掲げる野党「国民の力」候補が圧勝した。

野党から文在寅大統領に対する批判も舌鋒鋭い。「国民の力」のペ・ジュニョン報道官は「文在寅大統領は政治目標も中国製なのか?」と、その親中ぶりを公然と批判した。文氏は2017年の大統領就任式で、「機会均等、公正なプロセス、公正な結果」を提唱した。これは2015年に中国共産党機関紙・人民日報の声明と酷似するためだ。

また同氏は、韓国で頻繁に発生する煙霧(スモッグ)は「中国からのものではない」と主張する文政権を非難し、「国民は文在寅政権に『中国はパートナーなのか、それともボスなのか?』と聞きたがっている」と皮肉った。

韓国の反中感情が反日感情を上回る

6月中旬、韓国時事雑誌「時事IN」と世論調査会社「Hankook Research」は、韓国人が中国を嫌いか、またその理由についてオンライン調査を行った。

その結果、「左派は親中、右派は反中」という従来の公式を破り、韓国人は一般的に、中国に対して右左両派とも否定的な見方をしていることが分かった。調査では、回答者の58.1%が中国に対して「悪印象」を持ち、「好印象」だと考えているのはわずか4.5%だった。

また、中国に否定的な考えを持つ人は75.9%に上り、日本に対する否定的な考えを持つ人(71.9%)を上回った。

調査報告書には、「韓国人の反中感情が沸騰している。(反中感情は)リベラル派と保守派に差はなく、貧富の差も問わなかった。日本や北朝鮮よりも中国が嫌いだという回答も実際にあった」とある。

同報告書には、韓国世論調査イ・ドンハン副本部長の「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備されて以来、対中好感度が日本や北朝鮮より低くなったのは初めてだ」という言葉も記されている。

韓国人が中国を嫌う理由として、調査では26の理由が挙げられた。最も多く選ばれた理由は「スモッグ問題」(89.4%)、次いで「中共ウイルスの感染拡大」(87.3%)、「中共ウイルス感染拡大に対する中共の対応」(86.9%)、「中国漁船による違法操業などの経済問題」(84.3%)、「THAADの報復」(78.9%)となっている。

反中感情を悪化させる中共からの被害

2016年、韓国は北朝鮮の核挑発に備えるため、米軍が開発したTHAADの韓国配備要請を受け入れた。それ以来、中共から制裁と報復を受けるようになり、関係が急速に冷え込んだ。さらに、中国からのスモッグ被害が、韓国の反中感情を増幅させた。文大統領の就任後、韓国の国民は何度も中国からの大気汚染問題を解決するよう政府に要求した。

2019年、中共による香港民主化運動の弾圧を受けて、韓国の大学生たちは香港のデモ隊を支持する大きなポスターや横断幕を韓国各地のキャンパスに掲示した。これらのポスターは、韓国に留学している中国人学生によって次々と破壊された。昨年、中国人留学生8人が、破壊行為で起訴されている。

2019年末、中国から中共ウイルスが蔓延した。中国政府が真実を隠蔽したため、世界各地にウイルスが拡散し、韓国で日増しに強まる反中感情に拍車をかけた。

昨年10月、世界的に有名な韓国のボーイズグループ「BTS(防弾少年団)」が、米韓関係の発展に貢献したとして、米非営利団体「コリア・ソサエティー」からヴァン・​フリート賞し、中国ファンの反発を招いた。

BTSのリーダー キム・ナムジュン氏は授賞式で、「今年のコリア・ソサエティ2020年祝賀会は、朝鮮戦争70周年ということもあり、特に意味深い。私たちは、両国(米韓)が共に分かち合った苦難の歴史と、多くの男女の犠牲を永遠に記憶にしなければならない」と述べた。

同氏の発言は、中国のネットユーザーから 「戦争で亡くなった中国兵士を侮辱している」 と非難を浴びた。同時に、中共機関紙で人民日報系の環球時報も炎上を煽った。これにより、中国国内のBTS関連商品が撤去される事態となった。

韓国では今年に入ってから、反中感情に拍車がかかる事情が相次いでいる。韓国伝統衣装の韓服、キムチ、参鶏湯などの「起源」をめぐる争い、「中国風」テレビドラマの放送中止、江原道のチャイナタウン建設に反対する請願、中国人子女の韓国国籍取得手続きを簡素化する国籍法改正への反対などだ。

(JENNIFER ZENG、LISA BIAN/翻訳・蓮夏)

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