重要会議中に途中退場 なぜ中共党首は急いでベトナムに行ったのか

2023/12/18
更新: 2023/12/18

未だ、中国共産党(中共)第3期中央委員会全体会議が開催されないという異例な事態の中、中央経済工作会議(CEWC)が12月11~12日に北京で開催された。この会議では中共党首の習近平は中心人物であるが、途中で退場し、国事訪問のためベトナムへ向かった。中国の経済は現在どのような状況にあるのか。習近平はなぜ途中で退場したのか。また、ベトナムは習近平にとってどのような重要な意味を持つのか。

外交で挽回 習近平ベトナムへ

政治経済評論家の李一平氏は新唐人テレビの番組『菁英論壇』で、中共のこの会議について、最終的に新華社が通報を出し、中国の現在の経済状況を何らかの形で伝えたが、それは曖昧で軽い言葉で述べられていたと指摘した。

例えば、中国には多くの問題があるとし、第1にあげたのは、一般市民にはお金を消費する余裕がない、または少しの余裕があっても消費する勇気がないことだ。

第2に「特定の業界での生産能力の過剰」つまり、重工業、鉄鋼やセメントなどの分野で大量の在庫が積み上がり、売れ残っていること。

第3に、「社会の期待が弱い」こと、つまり企業界や投資界が中国経済を良く見ていないこと。

第4に、「リスクの潜在的な危険が依然として多い」こと。つまり、実際には不動産市場が崩壊し、資金繰りが断たれ、金融システムが崩壊する可能性を指している。

第5に、「国内の大循環には障害」が存在すること。要するに、購入したいものが購入できない、売りたいものが売れないなど、内循環の多くの部分が妨げられている。

最後に、「外部環境の複雑さ、厳しさ、不確実性」が増している。つまり米国、欧州、日本、韓国による包囲を受け、外部からの制約、ハイテク技術への制約がある状況で数十年にわたる高額の貿易黒字も継続が困難だ。

新華社の文章は、存在する問題について述べており、その症状が浮き彫りになっている。しかし、原因については深く掘り下げていない。会議では症状は認識されたものの、根本的な原因を追究していない、あるいはそれを明言することを避けているようだ。

実際、これらの問題の根本的な原因は、共産党による制度、つまり権力者による資本主義制が引き起こしている。この制度は国内で厳しい搾取をし、人民の収入を人為的に低く抑えること、そして廉価な製品を生産するためにこれらの「人口ボーナス」を利用することが特徴だ。また、海外での廉価製品の過剰な販売により、他国の市場を奪うことも行っている。

このようなやり方は問題を引き起こすことが必至で、国内で、人民が疲弊し、海外で過剰販売に対する抵抗が高まり、この方針の継続は困難になっている。

李一平氏によると、中共中央経済工作会議の最中に習近平はベトナムへと出発したという。経済会議は重要であるが、彼はこの時、経済問題の解決は不可能だと知っていたため、会議を李強首相に任せ、自らは早めに会場を後にした。

習近平は経済分野で成果を挙げることができないならば、外交分野での成果を目指すべきであると考えている。特に、ベトナムはバイデン政権と対峙するための国際舞台として重要視されている。

今年9月、ジョー・バイデン米大統領がベトナムを訪問した際、大きな話題となった。これはベトナム戦争以降、米国大統領による初めてのベトナム訪問であり、中国の玄関先まで進出したことになる。この動きは中共内部で許容できないと感じられているものの、実際には米国に抵抗するために訪れた人はいなかった。

これを受け、習近平は自らの手腕を発揮する機会と捉え、ベトナムへの訪問を決意した。この動きは、国内の経済的な難局を避け、同時にベトナムという要塞を手中に収めることを目指したものである。

李一平氏によれば、習近平のこのベトナム訪問は大きな成果を得ることはないとされている。ベトナム(特に北部地域)は古代中国の秦の時代から中国に支配されてきた歴史があり、中国が一旦国内統一されれば、次に目指すのはベトナムの支配である。

ベトナム人はこの2千年以上の歴史の間、多くの苦難を経験してきた。彼らが習近平の下で進んで従うとは考えられない。資源がない状況でも、中共の覇権に立ち向かってきたベトナムは、現在米国やASEAN(東南アジア諸国連合)の支持を受けている。中共に頭を下げるとは考えにくい。そのため、習近平のベトナム訪問は結果的に無駄に終わる可能性が高い。

ベトナムは米国をより信頼

テレビプロデューサーの李軍氏は、1979年に起きた中国とベトナムの戦争が、その後の中越関係に深い影響を与えたと指摘している。90年代には中越関係は回復したとはいえ、当時のベトナム首相である武文傑氏は中共は常に「罠」だと述べていた。

ベトナム国内、政府関係者や一般市民を含め、中共に対する警戒感は非常に強い。中共に対する信頼関係はすでに断たれている。

近年、中共の南シナ海における強硬姿勢が顕著になるにつれ、ベトナム国内の民族主義的な感情も高まっている。ネット上ではベトナムの市民が中共政府を批判し、ベトナムの中国政策に対する不満を表明している。

最近の習近平の訪問についてフェイスブック上でベトナム人が次のようにコメントしている。

「習近平、どうか来ないでくれ。私たちは平和を望んでいるが、あなたが来ると平和ではいられないかもしれない」

これはベトナム社会全体、そして政府の一部も含め、中共を信頼していないという一般的な心理を示している。彼らは「中共との良好な関係は罠かもしれない」と感じている。ベトナムの民衆にとっては、安全面では米国をより信頼している。

李一平氏は、中共が南シナ海問題で妥協することは絶対にないと述べている。習近平は自らの状況を難しくしており、それは彼一人の責任ではなく、過去数十年の中共のいわゆる愛国主義プロパガンダによるものである。

この愛国主義の中で重要なのは、「一寸の土地も譲らない」という姿勢である。つまり、国際的に争いのある領土はすべて中国のものであり、他国には絶対に譲らないということである。これを数十年にわたって宣伝し続けた結果、自縄自縛となっている。

習近平はベトナムとの争い、西沙群島、南沙群島、さらには九段線問題など、どの問題においても妥協することはできない。そのため、彼はどんな行動も取ることができない状態である。彼の現在の方針は、ある意味で「にんじんと棒(あめとむち)」の政策である。

つまり習近平はベトナム訪問では大金をばらまき、ベトナムとの「運命共同体」を演じているように見せかけている。その一方で、南シナ海でフィリピンとの間に激しい衝突を引き起こし、海上民兵や海警隊を大量に南下させてフィリピンを包囲し、非常に緊張した状況を作り出している。

これが「にんじんと棒」の戦略であり、彼らに従えば報酬があり、逆らえば攻撃されるというものだ。中共は、米国に従いバイデン政権と関係を持つならば、フィリピンのような結果になると脅している。

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