日本国内に住む人々が海外のスポーツベッティングサイトを利用して違法に賭博を行った金額が、2024年には推計で6兆4503億円に上ったことが明らかになった。民間団体「スポーツエコシステム推進協議会」が5月14日に発表した調査結果によるもので、日本のスポーツを対象とした賭け金だけでも1兆183億円に達し、これは国内の公認スポーツくじ(toto)の売り上げ約1336億円を大きく上回る規模だ。
プロ野球・サッカーが主な対象、国内スポーツへの賭け金が急増
調査によると、日本国内からアクセスしたユーザーが海外サイトで賭けた対象のうち、最も多かったのはプロ野球で5281億円、次いでサッカーJリーグなどが3334億円、バスケットボール869億円、テニス439億円、バレーボール163億円と続く。こうした違法賭博の規模は、国内スポーツ振興くじの売り上げを圧倒的に上回っており、日本のスポーツ界にとっても深刻な課題となっている。
違法性の認識不足と巧妙な宣伝
なぜこれほど多くの人が違法な海外サイトを利用しているのか。その背景には、違法性の認識不足がある。警察庁の実態調査でも、オンラインカジノやスポーツベッティングの利用経験者の約4割が「違法と知らずに利用していた」と回答している。特に若年層では「パチンコや公営競技が合法だから、オンラインカジノやスポーツ賭博も違法ではないと思った」という誤解が多い。SNSやインフルエンサー、著名人による広告などを通じて「海外サーバーなら日本の法律が及ばない」「グレーゾーンだ」といった誤った宣伝が広がっていることも、利用拡大の一因だ。
法律上は明確に「違法」 国内からのアクセスも賭博罪
しかし、日本の刑法では、賭博行為は原則として禁止されており、例外は競馬や競輪、オートレースなどの公営ギャンブルや、スポーツ振興くじ(toto)などに限られる。海外のスポーツベッティングサイトやブックメーカーは日本の法律で認められていないため、日本国内からアクセスして賭けを行えば「国内犯」として賭博罪が成立する。罰則は50万円以下の罰金または科料、常習の場合は3年以下の懲役とされており、実際に摘発・有罪判決を受けた事例もある。
「海外で合法的に運営されているから大丈夫」「グレーゾーンだ」という宣伝は根拠がなく、警察庁や政府も「違法性にグレーゾーンはない」と明確に注意喚起している。
依存症・社会問題も深刻化
違法スポーツ賭博やオンラインカジノの利用拡大は、ギャンブル依存症や多重債務、さらには特殊詐欺や「闇バイト」への加担といった社会問題も引き起こしている。警察庁の調査では、オンラインカジノ利用経験者の約60%がギャンブル依存症の自覚があり、約46%が借金をした経験があると回答している。若年層の利用も目立ち、SNSや動画配信サイトを通じて違法サイトへの誘導が拡大している。
著名人の広告起用と社会的影響
オンラインカジノやスポーツベッティング業者は、日本市場を重要視し、著名人やインフルエンサーを広告塔として積極的に起用してきた。高額な報酬や「安心」「高還元率」「ライセンスがあるから安全」といった宣伝文句で利用者を拡大してきたが、著名人自身も違法性を認識していなかったケースが多い。これにより、一般の人々が「有名人がやっているから大丈夫」と誤認しやすい環境が生まれ、違法性への警戒感が薄れている。
国際的な対策と今後の課題
違法スポーツ賭博の拡大は、選手による八百長や試合操作といったリスクも高めている。スポーツエコシステム推進協議会は、国際的な違法賭博対策の枠組み「マコリン条約」への署名・批准を目指し、政府への働きかけを強化する方針を示した。
国内では、警察庁が違法サイトへのアクセス規制や依存症対策の強化に乗り出しており、メディア業界でもオンラインカジノ広告の排除や基準見直しが進みつつある。
利用者への警告
「海外サイトだから日本の法律が及ばない」「グレーゾーンだ」といった宣伝は誤りであり、日本国内からの利用は明確に違法だ。安易な利用が人生や生活を大きく損なうリスクをはらんでいることを、改めて認識する必要がある。
違法スポーツ賭博やオンラインカジノの拡大は、法的・社会的なリスクのみならず、スポーツ界の健全性や社会全体の信頼にも大きな影響を及ぼしている。今後は、利用者への啓発とともに、政府・業界・社会全体での実効性ある対策が急務となっている。
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