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多様性に無理解? LGBTQの相談窓口 国内のスポーツ団体の7割余が設置せず

2025/05/30
更新: 2025/05/30

東京都内のNPO法人「プライドハウス東京」が2025年3~4月にかけて国内のスポーツ団体に実施したアンケート調査で、回答した31団体のうち7割余りが選手や指導者などを対象にしたLGBTQに関する相談窓口を設置していないことが明らかになった。

設置している団体は2割にとどまる一方、LGBTQへの取り組みの必要性を認める声は66%に上っており、スポーツ界における多様性への対応が課題として浮かび上がった。

この調査は、国内のアマチュア競技団体やプロリーグなど約60団体を対象に行われ、有効回答を得た31団体のうち73%が「設置していない」と回答した。

調査に回答した団体の一部からは「予算や人員の制約から相談窓口の設置が難しい」「LGBTQに関する具体的な相談が少ないため優先度が低い」との声も上がっており、対応が進まない背景にはさまざまな要因があることがうかがえる。

海外の動向とトランスジェンダー選手をめぐる議論

海外のスポーツ団体ではLGBTQ対応が進んでいる例が見られる。アメリカやヨーロッパの主要スポーツリーグでは、LGBTQアスリートの権利保護や差別禁止を明確に打ち出し、相談窓口やサポート体制を整備する動きが一般的だ。

たとえばアメリカのナショナル・バスケットボール・アソシエーション(NBA)やメジャーリーグ・ベースボール(MLB)では、LGBTQアスリートのカミングアウトを支援するプログラムや、差別行為に対する規定が設けられている。

欧州サッカー連盟(UEFA)やイングランド・プレミアリーグでも、LGBTQへの差別を禁止するガイドラインや、選手・スタッフ向けの相談窓口、啓発キャンペーンが常設されている。

一方で、女子スポーツにおけるトランスジェンダー選手の参加については賛否両論ある。2024年パリオリンピックでは、女子ボクシングでイマネ・ヘリフ選手(アルジェリア)と林郁婷選手(台湾)がそれぞれ金メダルを獲得したが、両選手は国際ボクシング協会(IBA)による性別適格性検査で失格とされ、出場資格をめぐって議論を呼んだ。

一方、トランスジェンダー選手が女子競技に参加することに対しては、身体的な優位性(例 筋力や骨格)が競技の公平性を損なうとの懸念が存在している。トランスジェンダーアスリートの公平性を保つために、女性アスリートの公平性が損なわれるケースが出ている。

アメリカの政策変化

アメリカでのバイデン政権(2021年~25年)では、LGBTQアスリートの権利保護が強化されたが、2025年1月に発足したトランプ政権下でその政策を大きく変更した。

バイデン政権は2021年1月に大統領令(Executive Order 13988)を発出し、トランスジェンダーの学生アスリートが自認する性別で競技に参加する権利を連邦レベルで保障し、教育省もTitle IX(教育における性差別禁止法)の適用範囲を性自認に拡大するガイダンスを発表していた。

しかし、トランプ政権は2025年2月に「トランスジェンダー女性の女子スポーツ参加を禁止する」大統領令を発令し、出生時の性別に基づいて競技参加を制限する方針を打ち出した。27州がすでに同様の制限を設けている状況を連邦レベルで強化する形となった。

LGBTQ権利団体からは「トランスジェンダー学生への差別を助長する」との批判が上がる一方、競技の公平性を重視する立場からは「女子スポーツの公平性を守るための措置」と支持する意見もある。

今回の調査結果を受け、プライドハウス東京は「相談できる組織の仕組みや風土が整っていない」と指摘し、今後は体制整備に向けた指標づくりや情報発信を進めるとしている。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。