国際人権に関する最新の報告書が国際社会の注目を集めている。報告書では、複数の著名な国際企業の重要な鉱物サプライチェーンが、中国の新疆ウイグル自治区での強制労働と関係している可能性が指摘されており、調査の必要性が訴えられている。該当する鉱物資源は、電気自動車や航空宇宙、電子機器、再生可能エネルギーなどの先端産業で広く使用されている。
オランダを拠点とし、国際人権法の研究を専門とする財団「グローバル・ライツ・コンプライアンス(GRC)」は、6月11日に「リスクの根源:新疆ウイグル自治区における重要鉱物サプライチェーンと国家による強制労働」と題する報告書を発表した。
報告書によると、新疆ウイグル自治区でチタン、リチウム、ベリリウム、マグネシウムなどの採掘・加工・精錬を行う中国企業は77社にのぼり、これらの企業が中国共産党(中共)政権が推進する「労働力移転計画」に関与しているリスクが指摘している。新疆ウイグル自治区は強制労働のリスクが最も集中している地域の一つとしている。
調査によると、2017年以降、多数のウイグル族およびイスラム系少数民族が「労働力移転計画」の下で鉱山、精錬所、工業団地などに動員されており、厳重な監視と政治的圧力のもとで高リスクの労働に従事している。この状況は、国際労働機関(ILO)が定義する「国家による強制労働」に該当し、被害者数は数十万人規模に及ぶと推計されている。
採掘された鉱物は、航空宇宙や新エネルギー、自動車、電子産業などの分野で広く使用されている。GRCは、エイボン、ウォルマート、ネスカフェ、コカ・コーラ、シャーウィン・ウィリアムズなど複数の多国籍企業が新疆産のチタンと関わっている可能性を指摘している。また、湖南五江軽化グループのアリババ公式ページには、これらの企業が「パートナー」として掲載されている。
これらの企業は現時点で報告書に対するコメントを公表していない。
報告書では、「新疆有色金属工業グループ」が主要な事例として取り上げられている。この国有企業はベリリウム鉱の大部分を管理し、地方政府と連携して「労働力移転」政策を推進している。同社の製品は国際的な航空宇宙や電子産業で幅広く使用されているものの、強制労働との関与が指摘されており、アメリカ政府の「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」に基づく制裁リストに掲載されている。
GRCは各国企業に対し、即時のサプライチェーン監査を実施し、新疆に関連する鉱物の調達からの撤退、透明性のある情報開示の推進、そしていかなる形態の強制労働にも関与しない体制の構築を強く求めている。
この報告書は、米中両国がロンドンで新たな貿易交渉を進めている最中に公表された。供給の安定確保と人権リスクへの対応を両立させようとする企業の姿勢が、国際社会の注目を集めている。
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