11月下旬、中国・黒竜江省綏化市（すいかし）の公立病院・綏化市人民医院で、医師や看護師が一斉に抗議し、集団ストライキに踏み切った。給与が5か月以上支払われず、社会保険も長期間未納のままのためだ。

当日は、複数の科から医師や看護師、事務職員が病院の外へ出て横断幕を掲げ、抗議の声を上げた。現場動画には、赤地に白文字の横断幕を手にした百人規模の職員が「綏化市人民医院は給与と社会保険を滞納している。私たちの血と汗の賃金を返せ」と訴える様子が映っていた。

抗議の場には私服警察が現れ、横断幕を奪おうとして職員と衝突した。女性職員の一人は警察に向かって「どう生きろというのか」と声を震わせた。関係者によると、この病院では新型コロナ期から給与遅配が繰り返されていたという。

同院は地域を代表する病院だが、財務への疑念は以前から続いている。昨年は不適切請求で罰金処分を受け、また内部告発では「黒字なのに満額支給された年は一度もない」との声もある。

給与未払いはこれまで建設業や製造業で多く見られたが、近年は医療機関にも広がりつつある。中国国内の抗議行動を記録する「昨天（Xアカウント @YesterdayBigcat）」によれば、今年だけでも山東省の臨沂河東医院、河北省邢台市信都区中心医院、そして綏化市人民医院の三つの公立病院で、長期にわたる給与や社会保険の滞納が確認されている。

公に確認できたケースを見ても、3月の河南省淮陽県中医院では看護師が遅配に抗議して無償残業を拒否し、5月には貴州省黔東南州の病院で半年間業績給が支給されないとの内部告発が出た。6月には遼寧省鮁魚圈中医院で多数の医療従事者が実名で「給与が3か月以上支払われていない」と訴えるなど、各地で同様の問題が続いている。

一方で、声を上げられない医療従事者も多く、表に出ている事例は氷山の一角にすぎない。地方財政が改善されなければ、同じ問題は他の病院でも続くだろうと専門家は指摘している。