神戸市垂水区の踏切で昨年1月、中国籍の観光客の女性2人が電車にはねられ死亡した事故を巡り、遺族が山陽電鉄と男性運転士に計約1億4千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が27日、神戸地裁(渡部佳寿子裁判長)で開かれた。遺族側は山陽電鉄が事故防止策を怠ったと主張し、山陽電鉄側は請求棄却を求め、争う姿勢を示した。
本件の最大の争点は、踏切事故における鉄道事業者の安全配慮義務の範囲である。遺族側は警報や遮断設備、注意喚起などの措置が不十分だったと指摘する一方、山陽電鉄側は必要な安全対策は講じていたとして過失を否定している。事故の発生状況や予見可能性、回避可能性の評価が判断の軸となる見通しである。
判決内容は、同様の踏切事故に対する交通事業者の対応にも影響を及ぼす可能性があり、特に観光地や訪日客が多い地域では、不慣れな利用者を前提とした安全対策の必要性が問われる余地も指摘されており、多言語表示や注意喚起の強化など、設備・運用面の見直しにつながる可能性もでてくる。
司法実務の面でも、観光客を含む踏切事故の責任の考え方を示す事例となるかが注目される。外国人利用者に対する注意義務の程度や、事故防止措置の合理性をめぐる判断が示されれば、今後の類似訴訟における重要な参照事例となる事も考えられる。
さらに、訪日客の増加を背景としたインバウンド政策との関係も注目される。インバウンド政策の中では外国人観光客の安全確保は受け入れ環境整備の一環と位置付けられており、交通インフラの安全対策や多言語対応の充実は政策課題として指摘されてきた。判決が安全対策の不足を認定した場合、交通機関のみならず自治体や国の対応にも議論が波及するだろう。
外国人受け入れを巡る議論が続く中、今回の事件は生活インフラの安全確保と共生政策の在り方を問い直すきっかけにもなる。神戸地裁が示す判断は、交通安全対策、裁判実務、さらにはインバウンド・外国人政策の議論にも一定の影響を及ぼすかが注目される。
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