トランプ氏訪中 主な知見

2026/05/16
更新: 2026/05/16

トランプ米大統領は5月15日、北京で中国共産党(中共)党首・習近平との緊迫した2日間の首脳会談を終えた。今回の訪問中、トランプ氏とそのチームは、新たな購買コミットメントからイランや台湾を巡る緊迫した情勢、さらには不当拘留や人権問題に至るまで、幅広い問題について協議した。

今回の外遊中、トランプ氏は5月14日、天安門広場の端にある人民大会堂の外で盛大な歓迎式典に迎えられた。天安門広場は、1989年に中国当局が民主化運動を暴力的に鎮圧した、いわゆる「天安門事件」の舞台である。

訪問2日目、トランプ氏は中共の本部であり、厳重に警備された指導部複合施設である中南海で会談を行った。

トランプ氏の訪中から得られた主な知見は以下の通りである。

厳重なセキュリティ対策

今回の外遊中、ホワイトハウスは北京の共産主義政権による監視、ハッキング、データ窃盗のリスクを軽減するため、格別の警戒措置をとった。

ホワイトハウスのプールレポート(速報レポート)によると、中国を離れる前、ホワイトハウスのスタッフは、大統領に同行して旅をしていたジャーナリストに発行されたすべてのバッジやピンバッジを回収した。通常、記者がホスト国から提供されたこうした物品の返却を求められることはない。

ニューヨーク・ポスト紙の記者エミリー・グーディン氏によると、ホワイトハウスのスタッフが、回収したバッジやピンバッジ、使い捨て携帯電話(バーナーフォン)をエアフォースワンに搭乗する前の階段の下にあるゴミ箱に投げ入れている姿も目撃された。

グーディン氏はXに「中国のものは一切飛行機への持ち込みを認めない」と投稿した。

中国への入国前にも同様の措置が実施されていた。大統領に同行した米国政府高官らは、北京に入る前に個人の携帯電話やノートパソコンを置いていくよう求められた。その代わりに、一時的かつ管理された使用のための使い捨て携帯電話が支給された。

黎智英氏の解放に進展なし

トランプ氏は記者団に対し、政治犯である黎智英氏の釈放は習にとって「難しい問題」だと語った。この発言により、香港の民主派メディア大物の解放に向けた進展への期待はしぼんだ。

78歳の黎氏は、香港国家安全維持法に基づき、2月に禁錮20年の判決を受けている。

しかし、トランプ氏は、習が、拘留されている金明日(エズラ・ジン・ミンリ)牧師の釈放を真剣に検討していると述べた。

トランプ氏はエアフォースワンの機内で記者団に対し、「彼は牧師(の釈放)について非常に真剣に検討していると思う」と語った。

トランプ氏が5月15日に出発した後、中共政権の外交部報道官である郭冀坤は記者会見で、黎氏に関する質問に回答した。

同報道官は「香港の事務は中国の内政であり、(中国の)中央政府は香港の司法機関が法律に従って職務を遂行することを断固として支持する」と述べた。

また、ルビオ氏も5月14日にNBCニュースに対し、トランプ氏が習に黎氏の釈放について尋ねたことを明かした。

ルビオ氏は「我々は彼の釈放を望んでいる。彼の年齢と健康状態を考えれば、現時点ではまさに人道的な問題だ」と述べた。

5月13日、米国の上下両院は、黎氏、中国の金明日牧師と高全福牧師、高氏の妻の龐宇氏、そして引退したウイグル人医師のグルシャン・アッバス氏の5人の政治犯を巡り、トランプ氏が習に厳しく迫るよう求める決議案を可決していた。

ボーイング機と農産物の新規取引

トランプ氏は、首脳会談の初日である5月14日に習と会談した後、中国が米国から大豆、エネルギー製品、ボーイング社製の航空機を購入することに合意したと発表した。

5月14日のFOXニュースのキャスター、ショーン・ハニティー氏とのインタビューで、トランプ氏は、中国が米国の農産物、特に中国市場への米国最大の輸出物品である大豆の大量購入に合意したと語った。

トランプ氏は「前回は36ほどの取引に署名した。今回はそれよりもはるかに規模が大きい」とし、「彼らは我々の農家のために大量の大豆を扱うつもりだ。我々の農産物をたくさん買ってくれるだろう。それは素晴らしいことだ」と述べた。

昨年、北京は関税紛争を背景に米国からの輸入を削減していた。

中国はまた、ボーイング社製の航空機200機の購入にも合意した。これは米国の航空宇宙大手にとって大規模な商業受注となる。

5月15日、トランプ氏はこの購買コミットメントを認め、記者団に対して潜在的には750機まで増える可能性があると語った。トランプ氏はまた、これらの航空機にはGEエアロスペース社製のエンジンが搭載されるとも述べた。

さらにトランプ氏は、北京が米国から石油と液化天然ガス(LNG)を購入するという自身の提案に対し、習が前向きな反応を示したと語った。中国は、制裁対象となっているイラン産原油の最大の買い手である。

米大統領は5月14日、ハニティー氏に対し、「中国の船をテキサス、ルイジアナ、アラスカへ送り始めるつもりだ。これも合意された事項の一つだと思う。これは大きなことだ」と語った。

5月15日の定例記者会見で、中国がボーイング機200機を発注するのか問われた外交部の郭冀坤報道官は直接的な回答を避け、米中経済貿易関係の本質は互恵平等であると述べるにとどめた。

さらなる農産物取引について、郭報道官は、中国はワシントンと協力して両首脳が達した「重要な合意」を履行し、協力を拡大し、ウィンウィンの結果を達成する用意があると述べた。

加えて、米通商代表(USTR)のジェイミソン・グリア氏は5月15日のブルームバーグとのインタビューで、米国と中国が非機微物品の貿易フローを管理するための「貿易委員会(Board of Trade)」を設置することを確認した。

トランプ氏は、習と関税については話し合わなかったと述べた。

トランプ氏はエアフォースワンの機内で記者団に対し、「彼らは多額の関税を支払っているが、我々は何も話し合わなかった。話題にも上らなかった」と語った。

イランを巡り米中が足並みをそろえる、とトランプ氏

トランプ氏によると、習は協議の中で、テヘラン(イラン政府)がホルムズ海峡を再開しなければならないという点に同意した。また大統領は、イランが核兵器を決して保有してはならないという点でも両国が一致したと述べた。

訪問中、トランプ氏とそのチームは北京に対し、ホルムズ海峡の再開は中国の最大の利益になると明確に伝えた。

トランプ氏は記者団に対し、「私は彼に(イランへの)圧力をかけるよう求めなかった。見返りは必要ないからだ。彼は自動的に、海峡が再開されることを望むようになると思う」と語った。

中国はイラン産原油の主な買い手である。米エネルギー情報局(EIA)によると、2024年の中国の原油輸入の約10%がイランからのものであり、テヘランの原油輸出の約90%が中国向けとなっている。

トランプ氏はハニティー氏に対し、中共政権にイランからのエネルギー購入を停止する意図はないと語った。

トランプ氏はハニティー氏に「(習は)イランに軍事装備を提供しないと言った。これは大きな発言だ」と語った。「しかし同時に、彼はそこで多くの石油を購入しており、それを続けたいとも言った」

トランプ氏はエアフォースワンの機内で記者団に対し、イラン産石油を購入している中国の石油会社に対する制裁を解除するかどうかを、数日中に決定すると述べた。

今月上旬、中国当局はすべての企業に対し、イラン産石油の取引を行ったとして告発された中国の製油業者5社に対する米国の制裁を無視するよう指示していた。

イランは1980年代、軍事装備や通常兵器の多くを中国から調達していたが、国際的な監視が厳しくなったため、ここ10年間はそうした移転はほぼ停止している。米中経済安全保障検討委員会の3月の報告書によると、中共政権のイランとの協力は、ミサイルやドローンの開発に関連するものを含む、民生・軍事の両方に適用可能な技術の販売へとシフトしている。

台湾政策に変更なし

トランプ・習会談後も、ワシントンの長年にわたる台湾政策に変更はない。

トランプ氏は記者団に対し、米国が台湾を防衛するかどうか習から問われた際、自身の立場を明らかにすることを拒否したと語った。

トランプ氏は「その質問は今日、習主席から私に投げかけられた」と述べた。「私は『そのことについては話さない』と言った。彼は私が彼ら(台湾)を守るのかと聞いてきた。私はそのことについては話さない」

台湾への武器売却に関して、トランプ氏は「比較的近い将来に決定を下す」と述べた。

木曜日の両首脳会談後の中国外交部の発表によると、習は台湾に対して攻撃的な姿勢をとり、米国は「台湾問題の処理において格別の慎重を期さなければならない」と警告した。

習は「適切に処理されれば、二国間関係は全体的な安定を享受できる。そうでなければ、両国は衝突し、紛争にすら発展するだろう」と警告した。

習の台湾に関する警告がこれまでで最も鋭いものだったか問われたグリア氏は、5月15日にブルームバーグに対し、中国での会談中のトーンは、中国当局が発表した公式声明とは異なっていたと語った。

グリア氏は「二国間会談での話し方と、戦狼外交のアプローチをとる中国外交部から出される声明との間には、格差がある」と述べた。

中国の共産主義政権は、民主的に統治されている台湾を一度も統治したことがないにもかかわらず、自国の省であるとみなしている。北京は各国に対し、政権が台湾の主権を主張する「一つの中国」原則を遵守するよう要求している。

米国は長年、北京の台湾に対する主権を認めない一方で、唯一の「中国」が存在することを承認する「一つの中国」政策を維持してきた。また、ワシントンは台湾関係法に基づき、台湾への主要な武器供給国であり続けている。

ルビオ氏は5月15日、NBCニュースに対し、米国の台湾政策は「不変」であると述べ、北京が軍事力で台湾を奪取しようとすることは「恐ろしい過ち」になると警告した。

提案されている140億ドル規模の米国による台湾への武器売却は、トランプ氏の承認を待っている状態である。トランプ氏はこれより先、2025年12月に111億ドル規模の台湾向け武器パッケージを承認していた。

Emel Akan
エポックタイムズのホワイトハウス上級特派員、トランプ政権担当記者。 バイデン前政権とトランプ第一次政権時は経済政策を担当。以前はJPモルガンの金融部門に勤務。ジョージタウン大学で経営学の修士号を取得している。
台湾在住のジャーナリスト。米国、中国、台湾のニュースを担当。台湾の国立清華大学で材料工学の修士号を取得。