続く文化遺産の焼失 弘法大師が開山した宮島弥山の霊火堂全焼 

2026/05/20
更新: 2026/05/20

20日午前8時30分ごろ、広島県廿日市市の世界遺産・宮島の弥山山頂付近にある霊火堂で火災が発生し、建物が全焼した。消防車8台などが出動し、火は約2時間後にほぼ消し止められたが、霊火堂と隣接する離れが全焼した。けが人はいなかった。警察と消防が詳しい出火原因を調べている。複数のメディアが報じた。

1200年の祈りの場

霊火堂は、真言宗御室派大本山・大聖院が管理する仏堂である。不動明王をまつる不消霊火堂では、大同元年(806年)弘法大師空海が100日間にわたり求聞持修法を行った際に焚かれた護摩の火が、以来1200年間燃え続けており、霊火「消えずの火」として今に伝えられている。

この霊火は単なる宗教的象徴にとどまらない。明治34年(1901年)に操業を始めた八幡製鉄所の溶鉱炉の種火になったとも伝えられ、広島平和記念公園の「平和の灯」の火もここから採火されている。戦争の惨禍を超えて受け継がれてきた「火」の連続性が、この小さな堂に凝縮されていた。

地元の話によると霊火で沸かした大茶釜の霊水は万病に効くといわれ、弥山の七不思議の一つに数えられるパワースポットとして内外の参拝者を集めてきた。

今回の焼失は初めてではない。2005年5月にも台風の影響で倒れた木を燃やしていたところから飛び火して全焼し、その際には僧侶たちが「消えずの火」をランプやろうそくに移して守り続け、翌2006年の再建後に霊火堂へ戻した経緯がある。今回の火災でも、大聖院によると「消えずの火」の火種は分散して管理されており、無事だという。

相次ぐ古来から続く神社仏閣の焼失

霊火堂の焼失は孤立した出来事ではない。今年5月だけで、歴史的価値の高い宗教施設の火災が相次いでいる。

5月16日夕方には、富山県高岡市の大法寺で火災が発生した。同寺は室町時代に開かれた歴史を持つ。消防車20台近くが出動する大規模火災となり、本堂が全焼したとみられる。

5月6日深夜には、新潟市中央区の古町地区にある愛宕神社で火事があり、18世紀に建てられ、市の有形文化財に指定されている本殿などが焼けた。愛宕神社は400年以上の歴史があり、1700年代に建てられた本殿と拝殿は新潟市の有形文化財に指定されている。警察と消防が原因を調べている。

2週間余りの間に3件、いずれも火災原因は捜査中だ。連続する文化的遺産の焼失。なぜ発生しているのか。実は同じような連続焼失事件が8年前フランスで発生していた。

2018年 フランスで続いた教会の連続放火

フランスでは宗教施設・文化遺産の火災が短期間に集中し、2018年以降、カトリック教会への攻撃が深刻な社会問題となった。

フランス内務省によれば、2018年だけでカトリック教会に対する攻撃が1063件に上り、875の教会が何らかの被害を受け、その後も件数は増加した。

フランスの場合、背景に宗教的な原因があるとされ、2023年にはフランス内務省が年間約1千件の反キリスト教的行為を記録しており、1日あたり約3件に相当する水準に達した。

放火と司法的に確定した事例も複数ある。2024年9月には、北フランス・サントメールの歴史的な無原罪懐胎教会が放火により壊滅し、屋根と鐘楼が崩落した。容疑者は過去にも複数の礼拝施設への放火を試みた39歳の常習犯で、鎮火後数時間で逮捕された。

宗教遺産観測所(OPR)の分析によれば、2023年に把握された教会火災27件のうち犯罪由来は8件、残る19件は事故とされている。2024年前半9か月では26件中14件が犯罪由来となり、急増傾向が確認されている。

フランス政府の調査報告書は、解決した事案の犯人プロフィールについて「イスラム過激派、極右、極左、悪魔崇拝者のほか、精神的に不安定な人物や未成年者が含まれる」と結論づけており、単一の動機に帰着しない複合的な問題であることを認めている。

文化遺産の防火体制

日本では現在、宮島ロープウェーの運行が休止され、弥山への登山道も封鎖されている。世界遺産の島が受けた打撃は観光面だけにとどまらない。1200年にわたる祈りの連鎖を物理的に体現してきた建造物が失われたことの意味は、文化的・精神的に計り知れない。

今回の一連の火災について、各地の警察・消防当局は原因の詳細を調査中としている。放火か事故かを問わず、文化遺産の防火体制の見直しが改めて問われている。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます