日本政府観光局(JNTO)によると、2026年7月の訪日外客数は前年同月比0.1%増の344万2100人で、7月として過去最多となった。台湾は76万3800人で初めて70万人を超えた一方、中国は42万8200人と56.1%減少し、訪日市場の構造変化が鮮明になった。
台湾、韓国・香港が大幅増加
7月は多くの市場で訪日客数が伸びた。韓国、台湾、シンガポールなど17市場が、7月として過去最高を記録した。
東アジアでは、韓国が89万4700人で前年同月比31.9%増、香港が27万2500人で同54.8%増となった。台湾は76万3800人で同26.4%増に達し、単月として過去最高を更新した。月間の訪日客数が70万人を超えたのは初めてである。
韓国、台湾、香港の3市場を合わせると、前年同月から約47万人増加した。欧米豪や中東でも訪日客数が増え、多くの市場で記録を更新した。
中国からの訪日客が42万8200人と、前年同月比56.1%減に落ち込んだためである。

中国客は56.1%減、渡航注意と減便が影響
中国市場の減少は、自然な需要変動だけでは説明しにくい。JNTOは今回の落ち込みについて、中国政府が自国民に対し日本への渡航を控えるよう注意を促していることや、航空便の減便などを要因として挙げている。
中国政府による訪日旅行に関する注意喚起は、2025年11月の高市首相による台湾有事をめぐる国会答弁を契機に始まった。中国外務省は、日本国内で中国人を標的とした犯罪が多発し、深刻な安全上の脅威に直面しているなどと主張し、渡航を控えるよう繰り返し呼びかけてきた。
2026年に入ってからも、春節前の1月や3月に注意喚起が繰り返された。中国の大手航空各社は日本路線を対象に、予約変更や払い戻しにかかる手数料を免除する措置を延長しており、訪日旅行を控えやすい状況が続いている。
その影響は統計にも明確に表れている。1〜7月の累計で、中国からの訪日客は248万6500人となり、前年同期比56.3%減となった。前年同期の約569万人から大幅に減少した。
中国市場は、政府による注意喚起や外交・政治情勢の影響を受けやすい状況にあることが改めて示された。
台湾、台風の影響下でも初の70万人超
中国市場の減少とは対照的に、台湾市場の存在感が増している。台湾からの訪日客は、台風による航空便の欠航の影響を受けながらも、76万3800人に達した。
根強い訪日人気に加え、学校の長期休暇、航空座席数の増加、クルーズ船の寄港が重なり、単月として過去最高を更新した。
1〜7月の累計では、台湾からの訪日客は473万6000人で、前年同期比21.8%増となった。中国の248万6500人の約1.9倍に当たる規模である。
政治的緊張が続くなかでも訪日客が増加した台湾と、政府による注意喚起などを背景に訪日客が大幅に減少した中国。日本を同じ旅行先とする二つの市場が、対照的な動きを見せている。
進む訪日市場の多様化
市場別にみると、東アジアと欧米豪の多くで訪日客数が増加する一方、中国市場のみが大幅な減少となった。
円安傾向が続くなか、日本での旅行費用に割安感があることも、多くの市場で訪日需要を支える要因となっている。
政府は2026年3月に策定した第5次観光立国推進基本計画で、旅行者数だけでなく、旅行消費額や地方部における延べ宿泊者数についても目標を掲げている。
訪日客数の増加だけに依存しにくい局面で、問われるのは、誰が、どこで、どれだけ消費するかである。中国市場が政治的要因の影響を受けやすい状況が続くなか、訪日需要を多様な市場へ分散させ、旅行消費額を増やすとともに、地方部への波及効果を高められるかが今後の課題となる。
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