米議会 外国勢力の影響力工作を調査 中国 キューバ イラン巡り公聴会

2026/09/11
更新: 2026/09/11

米議会で、外国勢力による米国内への影響力工作をめぐる監視や調査が強まっている。

下院歳入委員会が、中国共産党(中共)との関係を指摘しているアメリカ人富豪ネビル・ロイ・シンガム氏と、同氏に関連する非営利団体の資金の流れを調べているのに続き、下院外交委員会の小委員会も、外国勢力による秘密裏の影響力工作を幅広く取り上げる。

米Foxニュースによると、下院外交委員会の南・中央アジア小委員会は9月15日午後2時から、「トロイの木馬 アメリカ内における外国勢力による秘密裏の悪意ある影響力工作」と題した公開公聴会を開く。

公聴会では、中共やキューバ、イランに関連する活動のほか、パレスチナ支持団体などを通じた影響力行使について議論する見通しだ。議会の関心は税務や資金の問題だけでなく、国家安全保障上の問題にも広がっている。

3人の専門家が証言

公聴会は、下院外交委員会南・中央アジア小委員会の委員長を務める共和党のビル・ホイゼンガ下院議員が主宰する。証言するのは3人の専門家だ。

ジェームズタウン財団のシニアフェロー、マシュー・ジョンソン氏は、中共の政治・技術戦略について証言する予定だ。中共よる金融システムや民間経済への統制に加え、イデオロギーと技術戦略がどのように結び付いているかなどが論点になるとみられる。

ヘリテージ財団のシニアフェロー、マイク・ゴンザレス氏は、アメリカ内で活動するキューバの影響力ネットワークについて証言する。外国勢力がアメリカ社会の開放性を利用し、教育機関や大学、政府機関、ロビー会社、博物館など、幅広い分野で影響力を及ぼしているとの見方を示す見通しだ。

ビットコイン政策研究所で政策研究部門を率いるサム・ライマン氏は、シンガム氏に関連するネットワークが、アメリカのAIやデータセンター建設をめぐる活動にどのように関与してきたかについて証言する。

ライマン氏によると、社会主義・解放党は、全米14州で行われた21件のデータセンター反対運動で、動員に大きな役割を果たしたという。こうした運動の影響で、総額約236億ドル規模の投資計画が延期や縮小に追い込まれたり、中止されたりしたとしている。

またライマン氏は、SNSについて、国外からの影響力工作を急速に拡散させる仕組みになっていると指摘。「思想ウイルスの機能獲得(gain-of-function)」になぞらえて、その影響力の大きさを表現している。

シンガム氏をめぐる資金・団体ネットワーク

アメリカ生まれのシンガム氏は、2017年に自身のITコンサルティング会社を約7億8500万ドルで売却した後、上海に移住した。その後、中国の宣伝関連企業「馬酷文化伝播」と同じオフィスを使用していたと報じられている。同社は「中国の物語をうまく伝える」ことなどを掲げている。

米議員の一部は、シンガム氏が資金を提供する左派系団体が、アメリカ内の社会的分断を深めていると批判している。

また、下院監視・政府改革委員会は、シンガム氏と、ミネソタ州で起きた暴動に関連して活動した組織とのつながりについても調査している。

下院歳入委員会は現在、シンガム氏に関連するネットワークをめぐり、税務や資金の流れを調べている。

委員会は、シンガム氏との関係を指摘されている非営利団体人民フォーラム、BreakThrough News、三大陸社会研究所の3団体に召喚状を送り、中共との関係の有無などについて資料の提出を求めている。

一方、これらの団体は疑惑を否定し、議会による調査を「政治的迫害」だと批判している。

5大陸で223件 総額5億9100万ドル規模か

Foxニュースのこれまでの調査によると、2017~25年にかけて、シンガム氏に関連するネットワークは、5大陸にまたがる67の中核組織を通じて223件の取引を行い、その総額は約5億9100万ドルに上ったという。

このうち、シンガム氏本人が直接提供した資金は約2億8500万ドルに達し、中国寄り、あるいは共産主義を支持する複数の非営利団体に流れたとしている。

下院歳入委員会が召喚状を送った3団体も、その中に含まれているという。

司法当局の捜査にも発展

シンガム氏をめぐる問題は、議会の調査だけにとどまっていない。

今年6月には、アメリカ司法省がニューヨーク南部地区連邦地方裁判所の管轄で、シンガム氏をめぐる大陪審捜査を始めたと報じている。

捜査は当初、シンガム氏が外国代理人登録法(FARA)に違反したことを中心に進めていたが、その後、マネーロンダリングや金融犯罪、税務をめぐる刑事事件にも対象が広がったという。

シンガム氏の妻は、米反戦団体「コードピンク(Code Pink)」の共同創設者ジョディ・エバンス氏。両氏を取り巻く政治活動や資金提供のネットワークは、複数の左派系団体を介してつながっているとみている。

今回の公聴会は、下院外交委員会のブライアン・マスト委員長のもとで行われる。

外国勢力によるアメリカ国内への影響力工作について、議会が資金や税務の問題だけでなく、国家安全保障に関わる課題としても調査を強めていることを示す公聴会となりそうだ。

李皓月