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2025年アメリカ合衆国 国家安全保障戦略が発表 日本の安全保障上の役割は

2025/12/06
更新: 2025/12/06

2025年のアメリカ合衆国国家安全保障戦略は、「アメリカ・ファースト(America First)」を政策の動機とする実用主義に基づき、アメリカの中核的な国益の保護に焦点を当てた指針となった。この新しい指針は、存立危機に対する国会の質疑で日中関係が緊迫する中、日米安全保障にどのような影響を与えるのだろうか。

今回、発表された新戦略は、まず冷戦終結後の数十年間、アメリカのエリートが恒久的な世界支配という「根本的に望ましくなく不可能な目標」を追求し、誤った道を進んできたと批判。この結果、不公正な「グローバリズム」や「自由貿易」によって産業基盤と中産階級が空洞化し、同盟国に防衛コストを肩代わりさせる状況が続いたと指摘している。トランプ大統領の指導力は、この誤った軌道を修正し、「新しい黄金時代」への道を開いたとされる。

戦略の目標は、アメリカの生存と安全を確保し、市民の利益を最優先することが上げられ、主要原則として、最強の経済や先進技術、文化的健全性、有能な軍隊を維持する「力による平和(Peace Through Strength)」が掲げられた。また、国家主権を優先する「国民国家の優位性」、同盟・貿易関係の公平性を求める「公平性と負担分担」が示され、特に裕福な同盟国に対してはGDPの大きな割合を防衛費に充てることが期待されている。当然、日本も含まれることになることが予想され、財源を巡り議論が進んでいる。

経済安全保障も国家安全保障の基盤と位置づけ、貿易再均衡やサプライチェーン確保、産業生産の国内回帰である「リショアリング」を重視する。現代の国際社会の政治・経済に大きな影響を与えている「気候変動」や「ネットゼロ」のイデオロギーについて、アメリカの「エネルギー支配(Energy Dominance)」を回復するという観点から、敵対勢力を助長するとして拒否された。

地理的焦点は中東からアジア、特にインド太平洋へ移っている。背景にアメリカがエネルギー純輸出国に戻ったこと、そして超大国競争の焦点が移行し、中東への注力の必要性が後退した。一方、インド太平洋は世界のGDPのほぼ半分を占める地域であり「次の世紀の主要な経済的および地政学的戦場」と位置づけられている。

また過去、アメリカが中国に対してとってきた市場開放政策などによって、中国が「ルールに基づく国際秩序」に参加するという考えは「誤った前提(mistaken assumptions)」と捉え、中国との戦略的競争に勝利するため、経済的再均衡と、台湾紛争の抑止や南シナ海の通商路確保を最優先課題としている。

日本の安全保障上の役割

新戦略では、日本はアメリカの安全保障戦略を支える極めて重要な条約同盟国およびパートナーとされ、アジアでの集団防衛と経済競争に具体的な貢献が求められている。

防衛費増額と負担分担

トランプ大統領は日本と韓国に負担分担の増加を主張しており、防衛費増額を強く促す必要があり、この支出増強は、敵対勢力を抑止し第一列島線を保護するために必要な能力に焦点を当てるべきだとされている。また、長年のアメリカの負担を是正するため、同盟国がGDPの遥かに大きな割合を防衛費に支出することが期待されている。

アジア太平洋の抑止力とアクセス

新戦略では南シナ海の通商路が競合国に支配される、あるいは恣意的に閉鎖される可能性に対処するため、日本を含む関係国との強力な協力が必要とされ、日本は、オーストラリア、インド、アメリカとの四か国協力(Quad)を通じてインド太平洋の安全保障に貢献することが奨励されている。またアメリカ自体も第一列島線内の侵略を阻止できる軍事力を構築する方針となっているが、この責任をアメリカのみが負うべきではないとし、日本にアジアにおける軍事的脅威を抑止し、地域安定に直接関与することが求められている。

アメリカの外交努力は、第一列島線の同盟国やパートナーに対し、アメリカ軍が港湾や施設へのより大きなアクセスを得られるよう促す方向に向けられるとしている。

経済安全保障と協力

アメリカは自国の30兆ドルの経済力に加え、日本を含む条約同盟国およびパートナーの合計35兆ドルの経済力を活用し、共同で世界経済の優位性を維持する方針だ。輸出大国である日本、ヨーロッパ、韓国などには、中国経済を家計消費へとリバランスさせる貿易政策の採用が求められている。

さらに、集団防衛を強化するため、アメリカはすべての同盟国やパートナーに対し、防衛産業基盤の活性化を奨励するとしている。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます