2025年11月20日(米国時間)、アメリカ国務省のトミー・ピゴット首席副報道官(Principal Deputy Spokesperson)は、自身のXアカウントで、日米同盟と日本の防衛に対する米国のコミットメントを強く強調する投稿を行った。投稿の内容は以下の通りだ。
「日米同盟および日本の施政下にある尖閣諸島を含む日本の防衛に対する我々のコミットメントは揺るぎないものです。日米同盟はインド太平洋における平和と安全の礎です。我々は、力や威圧によるものを含め、台湾海峡、東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試みに断固として反対します。(翻訳:外務省)」
(英語原文)Our commitment to the U.S.-Japan Alliance and to Japan’s defense, including the Japan-administered Senkakus, is unwavering. The U.S.-Japan Alliance remains the cornerstone of peace and security in the Indo-Pacific. We firmly oppose any unilateral attempts to change the status quo, including through force or coercion, in the Taiwan Strait, East China Sea, or South China Sea.
これは、日本が実効支配する尖閣諸島を明確に含め、台湾海峡、東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試みを、武力や威圧を含めて強く反対するというものだ。
これに対し、日本の外務省英語アカウント(@MofaJapan_en)は即座に返答を投稿した。
「日米同盟、そして尖閣諸島を含む日本防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントに感謝します。 日米同盟は、インド太平洋における平和と安全の礎であり続けます。(翻訳:外務省)
(英語原文)「Truly grateful for the United States’ unwavering commitment to the Japan-U.S. Alliance and to the defense of Japan, including the Senkaku Islands. The Japan-U.S. Alliance remains the cornerstone of peace and security in the Indo-Pacific.」
米国の「揺るぎないコミットメント」に対する深い感謝を述べ、日米同盟がインド太平洋の平和と安全の礎である点をそのまま繰り返す形で、両国の立場が完全に一致していることをアピールした形だ。
中国の圧力高まる中で発せられたタイミング
このやり取りは、2025年11月に入ってから日中関係が再び緊張しているタイミングで発生した。中国は11月16日頃から尖閣諸島周辺に海警局船舶を繰り返し侵入させ、領海侵犯をエスカレートさせている。これに先立つ11月7日、日本の高市早苗首相が国会答弁で「中国による台湾侵攻は日本の存亡に関わる危機事態に該当し得る」と発言したことが、中国側の強い反発を招いた。中国外交部はこれを「内政干渉」と非難し、日本への旅行警告を発出したり、日本産水産物の輸入を一部制限する動きを見せたりしている。
こうした中国の経済的・軍事的威圧に対し、トランプ政権第2期として1月に発足した米国は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを従来通り明言し続けている。ピゴット首席副報道官は共和党全国委員会での経験豊富な戦略コミュニケーションの専門家で、2025年1月から国務省入りした人物だ。彼の投稿は、単なる公式見解の繰り返しではなく、中国の行動に対する直接的な牽制として機能したと言える。
トランプ政権下で日米同盟はさらに強化か
トランプ政権は前回(2017-2021年)と同様、中国に対する強硬姿勢を鮮明にしている。2025年2月の日米首脳共同声明でも、尖閣諸島への安保条約適用と台湾海峡の平和的解決を強調しており、今回の発言はその延長線上にある。中国が尖閣周辺でのグレーゾーン事態を継続すれば、米軍の関与を示唆する発言や共同訓練の強化がさらに増える可能性が高い。
一方、日本側では高市政権が防衛費GDP2%達成を前倒しで進め、集団的自衛権の行使容認を基盤とした積極的防衛姿勢を強めている。中国の経済報復が本格化した場合、日米は共同で対抗措置を取る公算が大きい。過去の事例(2010年のレアアース禁輸や2023年の水産物禁輸)からも、中国の威圧が同盟の結束を逆に強めるパターンが繰り返されるだろう。
このX上での短いやり取りは、単なる外交的礼儀ではなく、インド太平洋地域での力の均衡を維持するための明確なシグナルだ。中国の行動次第では、2026年に向けて日米の軍事協力がさらに深化し、地域の緊張が持続する見込みが高い。日米両国は「同盟の礎」という言葉を繰り返すことで、抑止力を最大限に発揮しようとしている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。