令和7年12月25日、高市総理大臣は都内で開催された内外情勢調査会の全国懇談会にて講演を行い、「決断と前進の内閣」として取り組む広範な政策の全容を明らかにした。高市総理は、就任以来の短期間で補正予算を成立させ、国民が直面する物価高への対応を最優先に進めてきたことを強調した。
以下に、講演で示された主要な政策の内容、背景、および今後の予測をまとめる。

1. 「生活の安全保障」:物価高への緊急対応
高市総理は、物価高対策を「生活の安全保障」と位置づけ、約8.9兆円の補正予算を措置した。
- エネルギー負担の軽減: ガソリン税の暫定税率を12月31日に廃止し、軽油引取税も4月1日に廃止する。これにより、1世帯あたり年間約1万2,000円の負担軽減を見込む。また、1月から3月の電気・ガス代支援も実施される。
- 所得増税の緩和: いわゆる「103万円の壁」について、働き控えの解消と手取り増を目指し、所得税の非課税水準を178万円まで引き上げることを決定した。
- 子育て・地方支援: 子ども1人あたり2万円の「物価高対応子育て応援手当」や、地域のニーズに応じた2兆円規模の重点支援地方交付金の拡充が盛り込まれた。
2. 「責任ある積極財政」と「危機管理投資」
高市総理の経済政策の根幹は、過度な緊縮財政を排し、成長によって国力を強める「責任ある積極財政」にある。
- 投資による成長: 経済、食料、エネルギー、健康医療、国土強靱化、サイバーセキュリティの各分野におけるリスクを「成長のスイッチ」と捉え、官民が連携して先手を打つ「危機管理投資」を提唱した。
- 戦略的分野の特定: 半導体、宇宙、量子、AIロボティクスなど17の戦略分野を確定。これらに対し、最大7%の税額控除や即時償却を可能とする大胆な設備投資促進税制を創設し、民間投資を強力に後押しする方針だ。
3. 社会基盤と人材への投資
- 医療・介護支援: 赤字の医療機関や介護施設の経営改善、および従事者の賃上げ(医療3%、介護月1万円)を前倒しで実施するためのパッケージに約1.4兆円を投じる。
- コンテンツ産業: 日本のアニメや音楽などの海外売上高20兆円目標を掲げ、アーティストやクリエイターの海外展開を支援するために550億円超を計上した。
- 技術の社会実装: 準天頂衛星「みちびき」を活用したスマート農業や、世界一の技術を誇る完全閉鎖型植物工場など、日本の先端技術を国内の課題解決と海外市場の獲得に活用する。
4. 連立の枠組みと合意形成
今回の政策推進の背景には、日本維新の会との広範な連立政権合意がある。高市総理は、野党からの政策提案も柔軟に取り入れ、国民民主党や公明党、さらには主要6党によるガソリン・軽油暫定税率廃止の合意を取り付けるなど、丁寧な合意形成を図ったことが法案の全件成立につながったと説明している。また、総理自身を含む閣僚が議員歳費を超える給与を返納するなど、「身を切る改革」を断行していることも政治的信頼回復の背景にある。
5. 今後の予測
今後の政権運営においては、以下の点が焦点となる。
- 当初予算の執行と投資の加速: 令和8年度当初予算を令和7年度補正予算と一体的に編成し、切れ目ない政策執行を目指す。特に、3年間の集中投資期間を設けた設備投資促進税制により、企業の予見可能性を高め、早期の投資決定を促すことが期待される。
- ロードマップの策定: 17の戦略分野について、規制改革や官公庁調達を含む「官民投資ロードマップ」を来年夏までに策定する予定であり、これが長期的な成長の指針となる。
- 国際社会での地位向上: 「外交面においても日本を必ず再び世界の高みに押し上げる」としており、同志国とのサプライチェーン強靱化などの連携がさらに強化される見通しである。
- 財政の持続可能性: 「ワイズスペンディング(賢い支出)」を徹底し、無駄をそぎ落とした筋肉質の財政支出を目指すため、内閣官房に租税特別措置・補助金見直し担当室を設置(担当は片山さつき大臣)。成長による税収増を通じて、政府債務残高対GDP比の低下と市場の信認確保を両立させていくとしている。
最後に、高市総理は、日本列島のどこに住んでいても安全に生活でき、医療、福祉、教育、そして働く場所が確保される「強く豊かな日本」「決断と前進の内閣」として決して諦めずに国民のために全力を尽くすと述べ、始動したばかりの政権への理解と指導を求めて講演を終えた。
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