富士フイルム 半月板損傷に新治療 「切り取る」から「残して治す」選択肢へ

2026/05/13
更新: 2026/05/13

富士フイルムグループの富士フイルム富山化学は、日本国内で初めて、半月板損傷を対象とした再生医療等製品「セイビスカス®注」の製造販売承認を取得した。

半月板は、膝の中にあるクッションのような組織である。歩く、走る、ジャンプするなどの動作で膝にかかる衝撃をやわらげる役割を担っている。しかし、スポーツで強い力が加わったり、加齢で弱くなったりすると、半月板が裂けることがある。

これまで国内では、半月板の手術が年間約5万件行われており、その約半数で、傷んだ部分を切り取る「半月板切除術」が行われている。切除術は痛みを早く軽くする効果が期待できる一方、半月板を失うことで膝のクッション機能が弱まり、長い目で見ると膝の軟骨に負担がかかりやすくなる。その結果、変形性膝関節症につながるリスクが高まることが課題だった。

今回承認された「セイビスカス®注」が画期的なのは、傷んだ半月板を単に切り取るのではなく、患者自身の細胞を使って修復を促す治療である点だ。

同製品では、患者の膝の中から「滑膜」という組織を採取し、そこから「自家滑膜間葉系幹細胞」と呼ばれる細胞を取り出して増やす。その細胞を、関節鏡を使って半月板の損傷部に投与する。

投与された細胞は、半月板の傷ついた部分にくっつき、修復を助ける。さらに、軟骨に近い細胞へ変化し、修復に必要な成分を作るほか、周囲の組織を損傷部に引き寄せる働きも期待されている。つまり、体にもともと備わっている治る力を、細胞の力で後押しする仕組みである。

この治療法は、国立大学法人東京科学大学の関矢一郎教授が開発した細胞治療技術をもとにしている。関節鏡を使うため、体への負担を抑えながら細胞を投与できる点も特徴である。

承認の根拠となった国内臨床第III相試験では、半月板切除術が必要とされ、複雑で治りにくい「フラップ断裂」が疑われる患者19例が対象となった。

試験では、膝の痛みや動かしやすさを示す「リスホルムスコア」が、投与前の平均38.1から、投与後52週時点で91.6まで改善した。この改善効果は、投与後104週時点でも維持された。

画像検査でも改善が確認された。関節鏡による評価では、自然には治りにくい半月板中央部の完全癒合が、フラップ断裂を有する患者14例中5例で確認された。MRI評価では、19例中14例で修復部の改善が認められた。

また、投与後104週までに半月板の再断裂で再手術に至った患者はおらず、本品との因果関係が否定できない有害事象も認められなかった。

半月板は一度大きく損傷すると、自然に治りにくい部分がある。そのため、従来は「傷んだ部分を切り取る」治療が選ばれることも多かった。今回の「セイビスカス®注」は、そうした半月板を「できるだけ残して治す」方向へ治療を進める可能性を示すものだ。

富士フイルムグループは、同製品の提供に加え、自社の3D画像解析システムを活用した診断支援など、予防から診断、治療までの包括的なソリューションを通じ、整形外科領域で人々の健康維持・増進に貢献していくとしている。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます