イラン情勢悪化で石油輸送が停滞 アジアでプラスチック不足の懸念

2026/05/08
更新: 2026/05/08

イランをめぐる戦争の影響で石油関連製品の輸送が滞り、アジア各国でプラスチック不足への懸念が広がっている。食品、医療、消費財など幅広い分野の製造業者が、原材料不足に直面していると警告している。

各国の工場で減産や操業停止

アジアで使われるナフサの約70%は中東からの輸入に依存している。ナフサは石油から作られる製品で、プラスチックの重要な原料となるほか、半導体製造に使われる特殊化学品の生産にも利用される。

フィナンシャル・タイムズが5月7日に報じたところによると、イラン情勢の悪化により、ホルムズ海峡の通航がほぼ止まり、アジアのナフサ価格は約2倍に上昇したという。

日本石油化学工業協会が最近発表したデータによると、日本国内のエチレン設備の稼働率は68.6%まで低下し、過去最低を記録した。

三菱ケミカル、三井化学、台湾の台塑石化も相次いで生産を削減した。また、一部企業は不可抗力を理由に、供給契約を履行できないと発表している。

日本で102社を対象に行われた調査では、食品メーカーの44%が、プラスチック包装材の不足、価格上昇、納期の遅れの影響を受けていることが分かった。大手納豆メーカーと餃子チェーン店は、この影響により一部商品の販売を一時停止すると発表している。

高市首相は、国内在庫は年末までは持ちこたえられるとの見方を示した。一方で、専門家は、早ければ今月中にも大規模な供給停止が起きる可能性があると警告している。

インドネシアで食品包装材が不足

インドネシアでは、ナフサのほぼ全量を輸入に頼っている。プラスチック包装材などを扱う業界では、すでに多くの工場が大幅な減産に踏み切っている。

ジャカルタで包装資材を販売する「トコ・ドゥルガ・プラスティック」の従業員、アリフ氏は、過去1か月で1日の売上がほぼ半減したと話した。店内には、商品の価格が「急騰する」と知らせる張り紙も掲示されている。

アリフ氏によると、仕入れ先から、原材料の在庫は5月末までしか持たないと伝えられているという。「5月以降、商品が入ってくるかどうか分からない」と述べた。

インドネシア包装連盟の事業開発担当ディレクター、アリアナ・スサンティ氏は、食品・飲料業界が同国のプラスチック包装需要の60%を占めており、最も深刻な影響を受けていると指摘した。化粧品、医療機器、医薬品の分野にも影響が及ぶとしている。

同国政府は最近、原材料不足と包装食品の価格上昇を抑えるため、ポリプロピレンと高密度ポリエチレンの輸入関税を撤廃すると発表した。

韓国で医療物資の供給が逼迫

韓国では、注射器や点滴バッグなどの医療製品について、供給が逼迫している。医療機関による前倒し発注や、プラスチック包装材の不足が影響しているとみられる。

韓国食品医薬品安全処が5月5日に発表した調査結果によると、全国の注射器の在庫は4559万本で、前週からやや減少した。

韓国医療機器協会のチョン・チョルウ代表は、病院や診療所が早めに在庫を確保しようとしていることも、医療物資不足の一因になっていると述べた。

韓国の保健当局は、注射器の買い占めが疑われる仲介業者や企業を対象に、全国規模の調査を始めている。

再生プラスチックや代替包装材に需要

今回の危機を受け、再生プラスチックのほか、紙、竹、サトウキビの搾りかすを使った代替包装材への需要が高まっている。

シンガポールの南洋理工大学サプライチェーン工学専門家の李東氏によると、再生プラスチックの価格は、危機前の1トン当たり約400ドルから1600ドルへと急騰した。新品のプラスチック原料も、950ドルから1800ドル超に上昇している。

立命館アジア太平洋大学の陳炳国教授は、新品のプラスチック原料と再生プラスチックの価格差が縮まっていることで、アジア市場の投資判断にも変化が出ており、再生プラスチックの事業としての採算性が高まっていると指摘している。

影響は世界に広がる可能性

陳氏は、今回のアジアでのプラスチック不足では、特に中小企業が厳しい状況に置かれていると指摘した。

供給不足が長引けば、アジアの中小製造業者の間で倒産や業界再編が広がる可能性がある。特に、プラスチック玩具、包装加工、日用品など、利益率の低い業界が先に打撃を受けるとみられる。

その影響は最終的に、欧米のグローバル企業や小売市場にも波及する可能性がある。

高杉