中国で外資撤退が3割増 投資減速と当局対応の実態

2026/06/24
更新: 2026/06/24

中国で外資企業の撤退が前年比3割増と急増している。規制強化や政策の不透明感を背景に投資意欲は低下し、生産拠点の海外移転も加速。当局は15の施策で対応を進めるが、統計と実態の乖離や市場構造の変化も指摘している。

近年、中国に進出する外資企業は、データの越境移転規制や企業買収に関する審査、利益の再投資に関する制度、政策の不確実性など、複数の課題に直面している。その影響で投資意欲は低下傾向にある。  

広東省の珠江デルタ地域や、浙江省・江蘇省にまたがる長江デルタ地域では、一部の外資企業や輸出関連企業が、生産拠点の一部を東南アジアやインド、メキシコなどに移す動きが出ている。  

当局の15施策と外資引き留め策

中国商務部に近い関係者によると、ここ数か月の外資撤退は前年同期と比べておよそ30%増加しているという。当局は副首相の何立峰に対し、外資の安定に向けた対応を主導するよう指示した。  

国営の新華社通信は6月22日、中国商務部や国家発展改革委員会、財政部が「外資利用の安定・強化・高度化行動方案」を発表し、15項目の施策を示したと伝えた。  

施策には、外資による企業買収の制度整備、データの越境移転に関する枠組みの検討、外資の再投資支援、外資系研究開発拠点の強化、金融リスク管理手段の整備、外資100%出資による医療機関の試行的な開放などが含まれている。  

商務部関係者の劉莉氏(仮名)は取材に対し、外資撤退の実態は公式統計よりも大きい可能性があると指摘した。  

劉氏は「外資の撤退は現在も続いている。一方で、新規外資とされる中には、中国資本が海外に設立した企業を通じて国内に再投資しているケースもある」と述べた。  

さらに「ここ数か月の撤退は前年同期比で30%増となり、過去5年で例のない水準である。当局は対応を急いでおり、特にドイツからの投資維持に注力している」としている。  

また「ヨーロッパやアメリカとの貿易摩擦への影響を懸念し、アメリカや韓国の投資家の利益にも配慮している。一方で、外資企業のサプライチェーンの調査も進めており、政策運用には課題もある」と指摘した。  

中国商務部の発表によると、2026年1~5月までに新設された外資企業は2万5297社で、前年同期比で5.3%増加した。  

一方、実際の対内直接投資額は3272億9千万元(約6兆9千億円)で、前年同期比で8.6%減少した。5月単月では前年同月比で5.9%の増加となっている。  

上半期全体のデータは現時点で公表していない。  

これらの統計について劉氏は、「各省が報告した数値を基にしており、対外発表を前提としたものだ。過去には内部用と公表用の二つの統計体系があったが、現在は一本化されている」と述べた。  

また「地方の報告にはばらつきがあることも否定できない」としている。  

外資政策と市場開放の関係については、専門家の間でも見方が分かれている。  

江蘇省の学者、廖淮安氏は、今回の政策について「市場参入や資金移動、データ管理など複数分野を対象とした支援策であるが、市場開放の方向性を直接示すものではない」と指摘している。  

また「国有企業の比重が高まる中で、市場構造の変化も進んでいる」と述べた。  

さらに「民間企業は成長段階に応じて再編の対象となる場合があり、市場競争の環境にも影響を与えている可能性がある」としている。  

珠江デルタや長江デルタでは 受注の海外移転もみられる  

広東省で加工貿易に関わる企業関係者は、「一部の海外顧客がベトナムやインドなどに発注先を移している。関税や政治リスクを考慮した動きとみられる」と話している。  

また「顧客からは海外に生産拠点を持つよう求められるケースも増えている」としている。  

珠江デルタは電子機器や衣料、家具などの製造業が集積する地域であり、受注の動向は関連産業にも影響を与えるとみられる。  

物流や包装、労務サービス、不動産賃貸など周辺分野にも影響が広がっている。  

浙江省温州で貿易業に従事する関係者も、「多くの企業が海外生産を検討しているが、資金や制度面での課題もある」と話している。  

「ヨーロッパの顧客を中心に、生産拠点の分散を求める動きが出ている」という。  

長江デルタ地域では、これまで電子情報や自動車部品、精密製造、研究開発機能が集積してきた。  

一方で近年は、いわゆる「中国プラスワン」戦略のもとで、生産機能の一部を海外に移す動きが広がっている。研究開発や管理機能は国内に残すケースが多いとする。  

こうした動きについて廖氏は、「政策面での外資誘致と、実際の運用との間に差があるようだ」と指摘している。

周玉