ヨーロッパ在住の元中国共産党(中共)当局者、杜文氏はこのほど、中共中央弁公庁が取りまとめ、政治局常務委員の蔡奇が署名し、習近平に提出したとされる内部経済資料を入手したと明らかにした。資料には、中国の雇用情勢が深刻な危機に陥り、一部地域では若年層の失業率が40%を超えていることが示されているという。複数の分析人士は、この危機は経済問題の範囲を超え、社会の安定や政権の安全に影響を及ぼす構造的な課題へと発展していると指摘している。
投資、輸出、内需が同時に悪化 核心は雇用危機
杜氏は「情報源を守るため、一部のデータには加工を施すが、全体の方向性に誤りはない。内容は間違いない」と強調した。
杜氏によると、これらの報告書は投資、輸出、内需の三つの分野を中心にまとめられているが、最終的にはいずれも同じ核心的な問題、すなわち雇用に行き着くという。
投資拡大の勢いが明らかに鈍化
報告ではまず、投資の問題が取り上げられている。杜氏によると、蔡奇は習近平に対し、現在の中国では投資拡大の勢いが明らかに弱まり、地方政府の財政圧力が積み上がっていると報告したという。
杜氏が引用した報告によれば、2025年の新規特別債の発行枠は4兆4千億元に達したが、実際に投資や建設に使われたのは約2兆3500億元にとどまり、予想を大きく下回った。報告は、製造業やインフラなどの分野で投資の伸びが低下し続けており、民間投資の割合も大幅に下がっていると指摘している。
杜氏は「かつて民間投資は投資全体の7割を超えた時期もあったが、現在は4割近くまで低下している」と述べた。
同時に、海外からの投資も明らかに減少しているという。杜氏が引用したデータによれば、2025年には、契約額が1億ドルを超える新規の大型外資プロジェクト数が26.8%減少し、契約金額は46.5%減った。
対米輸出の減少が産業移転を招く
輸出分野の実態は、外部からの印象とは大きく異なるという。
杜氏が引用した報告書によれば、アメリカ市場は依然として中国にとって最も重要な輸出先であるが、対米輸出はすでに数か月連続で減少している。さらに深刻なのは、輸出の落ち込みが産業移転を引き起こしている点だ。杜氏は「輸出減少の最大の影響は、外貨収入が少し減ることではなく、産業の空洞化だ」と述べた。
杜氏によると、2025年時点で重点的な貿易企業の約23%が海外工場の設立を完了しており、さらに大手企業の34%が海外展開を進めている。多くの企業が生産ラインをベトナム、メキシコ、インドなどへ移しているという。
杜氏は「移転しているのは低付加価値の生産能力ではなく、むしろ高度で先進的な生産能力だ」と指摘した。また報告には、一部企業が技術チームと中核的な生産ラインを丸ごと移転させ、国内には空の工場だけを残しているとの内容もあるという。
内需問題が真の焦点
ただし、三つの分野のうち、報告書が最も重視しているのは内需問題だという。
杜氏によれば、報告書は内需拡大を現在の経済政策の核心と位置づけている。しかし、消費低迷の根本原因は雇用難にあると分析している。所得の伸び悩み、資産の目減り、社会保障の不足などが消費マインドの低下を招いており、その中でも最大の制約要因が若年層の雇用問題だとしている。
高止まりする失業率 極めて悲観的な見通し
報告書によると、一部地域では若年層の失業率が40%を超えており、全国全体でも若年層の失業率は20%を上回っている。
同時に、企業の採用需要も減少し続けている。労働市場の求人需要が前年同期比で16.8%減少し、飲食業や不動産業など労働集約型産業では減少幅がさらに大きいとされる。大学卒業生だけでなく、出稼ぎ労働者も大きな圧力に直面している。報告書によれば、インフラ投資の減速と貿易企業の海外移転により、多くの出稼ぎ労働者が故郷へ戻っているという。
報告書は「出稼ぎ労働者が大規模に地元に戻るリスクが日増しに高まっている」と警告している。杜氏によれば、地元に戻る動きは貧困の再拡大、陳情の増加、地方の行政の負担増大といった連鎖的な問題を引き起こしている。
今後の見通しについて、杜氏はこの報告書が極めて悲観的な判断を示していると述べた。杜氏は、これは中国経済がすでに「末期がん」の段階に入ったことを反映していると指摘した。
章天亮氏「中共が恐れるのは失業ではなく、失業者の結集」
この情報は、海外の評論界で大きな関心を集めた。アメリカの飛天大学人文科学部教授、章天亮氏は自身の番組で、「杜文氏が明らかにしたこの報告書が事実であれば、中国は改革開放以降で最も深刻な経済危機に直面していることになる。その深刻さは、1997年のアジア通貨危機の時期を上回る」と述べた。
章氏は、現在の雇用危機はもはや単なる経済問題ではなく、政治および社会安定の問題へと変化しつつあると指摘した。「中共当局にとって、失業そのものは問題ではない。問題なのは、失業者が集まって抗議することだ」と述べた。
そのため章氏は、今後の中国情勢を見る上では、経済指標の変化だけでなく、社会の組織化能力、雇用構造の変化、さらにAIが労働市場に及ぼす継続的な影響にも注目すべきだとしている。
胡立任氏「制度そのものに問題があると気づく中国人が増えている」
雇用危機が広がる中、元中国企業家の胡立任氏は、より大きな政治的視点から、中国社会で進む認識の変化について分析した。
胡氏は自身の番組で、近年、中国社会では習近平と中共体制への見方に変化が起きていると指摘した。特に若い世代の変化は明らかであり、「白紙運動の時期にはすでにその傾向が見えていた」と述べた。
胡氏は、習近平の10年以上にわたる統治がもたらした最大の影響の一つは、ますます多くの中国人が個別の指導者だけでなく、中共の制度そのものを問い直すようになったことだと分析している。
胡氏は「中国の未来の変化は、社会全体が体制の問題をより明確に認識することから生まれる。より多くの人が独立して考えるようになって初めて、中国は本当の意味で新たな未来へ向かうことができる」と述べた。
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