迫りくるAIバブルの「噴煙柱崩壊」 デジャブを感じさせる既視感

2026/08/23
更新: 2026/08/23

論評

現在のAI関連金融資産のバブルは、住宅市場の過熱によって引き起こされた世界金融危機(GFC:Global Financial Crisis)や、「世界を代表するエネルギー企業」と称されたエンロンが、経営陣による巨大な金融詐欺によって劇的に崩壊した際の警告サインと、ますます似通ってきている。その共通点と相違点は、「歴史は繰り返さないが、しばしば韻を踏む」ということを、改めて示している。

エンロンには、実物資産と実際の収益を伴う正当な事業が存在していた。しかし、巨額の損失や債務を隠すために簿外取引の仕組みが乱用されたことで、その事業は蝕まれていった。エンロンの不正は、自分たちが何をしているのかを正確に理解していた経営陣によって行われた。そして彼らは、ウォール街の金融機関や自社の会計士、弁護士にも多額の報酬を与え、不正に協力させていた。

これに対して、世界金融危機と現在のAIバブルは、「首謀者のいない共謀」に近い。エンロン、ワールドコム、あるいはマドフ事件とは異なり、幕の裏側でレバーを動かし、市場を操っている特定の人物を指し示すことはできない。それぞれの関係者は、その時点では完全に合理的に見える経済的インセンティブや市場からのシグナルに反応しているだけである。一人ひとりは、「これはいずれ悪い結末を迎えるのではないか」と疑っているかもしれない。しかし、だからといって何ができるだろうか。その間も、自分に与えられた役割を果たし続けなければならない。実際、それこそが彼らが報酬を受け取っている仕事なのである。

エンロンの経営陣は、簿外債務の担保として使われていたエンロン株の価格が上昇し続けるか、少なくとも横ばいを維持する限り、この見せかけを続けられると考えていた。米国の住宅市場が、それまで数十年にわたって続いてきた安定的な価格上昇傾向を維持していたなら、世界金融危機は起きなかったかもしれない。

後に米連邦準備制度理事会(FRB)議長となるベン・バーナンキ氏が2005年に市場を安心させるために述べた言葉も、こうした期待を反映していた。

「全米規模で住宅価格が下落したことは、これまで一度もない」

そしてAIバブルも、計算需要と、それに対して利用者が支払う意思のある価格が、AIインフラへの数兆ドル規模の投資を正当化するために用いられているTAM(Total Addressable Market=獲得可能な最大市場規模)の予測通りである限り、崩壊することはない。

現在のテクノロジー企業のCEOたちは、世界金融危機の直前の数か月間に銀行家たちがそうだったように、この狂騒を止めることができない状況に置かれている。資金提供や建設を止めれば、競合他社が喜んでそのビジネスを奪うからである。

2007年、金融危機直前に当時シティグループCEOだったチャック・プリンス氏が語った言葉を思い出してほしい。「流動性という意味で音楽が止まれば、事態は複雑になる。しかし、音楽が鳴っている限り、立ち上がって踊らなければならない。われわれはまだ踊っている」

プリンス氏はその4か月後、シティグループが住宅ローン関連証券で数十億ドルの損失を公表する中、踊るのをやめて辞任した。シティは「大きすぎて潰せない」銀行の中でも最大級の存在となり、米政府から巨額の資本注入、すなわち納税者の資金を受けることで、かろうじて全面的な破綻を免れた。

私たちが同様に危険な状況に立っていることを示す警告サインはいくつもある。数兆ドル規模の債務が特別目的事業体(SPV)を通じて簿外に置かれていること、AI企業が顧客に資金を提供し、その顧客が半導体チップなどの製品を購入するという閉鎖的な循環型AI経済、相互に参照し合う企業評価、継続的な営業利益ではなく投資資産の時価評価によって押し上げられる企業利益――これはエンロンが好んだ手法でもある――、さらにソフトウェア・テクノロジー業界への最大級のノンバンク融資主体となっているプライベートクレジット企業で続くストレスなどである。

私たちが同様に危険な状況に立っていることを示す警告サインは数多く存在する。例えば、巨額の負債を特別目的会社(SPV)に移して決算書から隠す「簿外債務」、大手AI企業が顧客に出資して自社製品を買わせ売上作りを行う「循環型AI経済」、企業同士が評価額を相互に吊り上げ合う構図、そして本業の営業利益ではなく出資先の株価上昇による「帳簿上の含み益」で利益を大きく見せる手法――これはかつてエンロンも多用した――に加え、IT・テクノロジー業界に多額の資金を貸し付けている銀行以外の金融機関(プライベートクレジット/非公開の投資ファンド)で高まる経営ストレスなどである。

米国では債券発行が急増している。企業の財務部門が、流動性が枯渇する前に調達できるだけの資金を確保しようとしているためである。AI企業だけでも、2026年最初の8か月間に債券市場で1兆5千億ドルを調達した。

しかし、公募債による資金調達は表面に見えている一部分にすぎない。銀行や債券市場が吸収できる資金量には限界があるため、ビッグテックの債務の多くは、すでに苦境にあるプライベートクレジット市場へと流れ込んでいる。しかも、ビッグテックの記録的な債務は、次第に貸借対照表にすら載らなくなり、簿外取引の仕組みやオペレーティング・リース債務の形で存在するようになっている。

ある主要経済メディアは最近、テクノロジー企業9社の簿外コミットメントが3兆ドルを超えると試算した。このうち1兆2千億ドルはまだ開始していないリース契約上の債務で、1兆9千億ドルは半導体、電力、建設に関する購入義務である。エンロンの隠れた債務は公表債務の2倍だったが、Metaが開示している簿外債務は連結債務の5倍に達している。

Metaのような企業は、主として第三者から資金提供を受ける簿外SPVを利用して、巨大データセンターを建設し、その資金を調達している。Metaは、その事業体自身がリスクを負っているという考えから、その債務を連結対象としていない。しかし、将来のリース債務に関するリスクを負うのはMetaである。

今後20年間の顧客需要と価格が予測通りになれば、Metaの賭けは成功したことになる。そうならなければ、リース債務はMetaに残り続ける一方、それを賄うだけの収益は得られない。

ここで世界金融危機との類似性が浮かび上がってくる。サブプライム住宅ローンを中心とする金融システムが崩壊したのは、単に誰もが問題を見て見ぬふりをしていたからではない。リスクが不透明な仕組みへと移され、高い利回りを求めて疑問を抱かない買い手に売却され、しかも担保資産の価値は上昇し続けるという前提で価格が設定されていたからである。

かつての「住宅」を現代の「データセンター」へ、かつてリスクを覆い隠した「CDO(負債担保証券)の担当部門」を現在の「プライベートクレジット・ファンド」へ置き換えて見れば、現在のAI投資もまた、世界金融危機とまったく同じ危険な筋書きをたどり始め、物語が似たような韻を踏み始めていることがわかる。

エンロンの事業体は損失を隠していたが、その担保となっていたのはエンロン自身の株式だった。それは永久に動き続けると想定された架空の永久機関のようなもので、市場の勢いを受けてロケットのように上昇した。しかし燃料が尽き、重力が作用すると、エンロンの株価は崩壊した。

現在のSPVは、実物資産を保有し、実際のテナントを抱え、実際の現金収入を生み出すことを目的としている。しかし同様に、顧客需要と価格が常にそれらを支える水準にあり続けるという前提に依存している。

ビッグテックの記録的な利益は、継続的な営業利益だけを意味しているわけではない。他のAI企業への投資から生じた多額の時価評価益も含まれている。こうした利益は一時的なものであるにもかかわらず、1株当たり利益(EPS)に反映され、市場はあたかもその利益が永遠に続くかのように、最大30倍もの株価収益率(PER)を適用して評価している。

Alphabetの「その他の収益」は、主としてAnthropicやSpaceXなどへの投資価値の上昇によるもので、前四半期の税引前利益の71%を占めた。Amazonでは「その他の収益」が税引前利益の66%を占め、その背景にはAnthropicへの投資だけで534億ドルの評価益が生じたことがある。

これらの異例な利益を合わせると、S&P500企業の第2四半期利益のおよそ15%に相当する。これらを除けば、Amazonの240%という利益成長率は17%となり、Alphabetの300%は23%にまで低下する。

債券市場はストレスの兆候を示している。国債、社債を問わず債券発行が需要を上回るようになっていることもあり、利回りは上昇している。米30年国債利回りは5.32%に達し、2007年以来の高水準となった。10年国債利回りも4.7%を超え、こちらも高水準に近づいている。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、今年後半に利上げを余儀なくされる可能性がある。その一方で、米財務省は利回りを引き下げ、市場に流動性を供給しようとして国債の買い戻しを始めている。これもまた警告サインの一つである。

Nvidiaは顧客の資金調達を下支えし、その顧客は今度は、自らの顧客でもあるAI研究企業への出資持分について帳簿上の評価益を計上する。AI研究企業の評価額上昇が、その評価益を正当化する。その評価益が利益を膨らませ、その利益が株式価値を支え、その株式価値が信用の裏付けとなり、その信用がデータセンターへの資金提供を可能にし、AI研究企業がそのデータセンターを借りる。

この循環が延々と続いていく。システム内のあらゆる構成要素が、別の構成要素の担保となっていくのである。

この勢いが逆転すれば、システム内の各所が一斉に機能不全に陥ることになる。その引き金となるのは、会計不祥事ではなく、むしろ資金調達コストである可能性が高い。リース債務の支払いが始まり、借り換えコストが高騰するまさにその時に、債務が貸借対照表にのしかかる。非公開企業の評価額上昇が止まり、評価益は評価損へと反転し、報告利益が急減し、株価評価倍率も縮小する。

ロケットのように吹き上がる火山噴火は、燃料を失った後も慣性でしばらく上昇を続けるが、やがて重力がその勢いを上回り、「噴煙柱崩壊」と呼ばれる崩壊を起こす。この崩壊によって発生する火砕流こそが、人命を奪い財産を破壊する最も危険な現象である。崩壊が始まっても噴火自体が終わるわけではなく、重力によってエネルギーの向きが下方や周囲への破壊へと変わるのである。最近のAI投資の過熱ぶりもこれと酷似している。活動中の火山と同じく、このような局面に直面した投資家が取るべき最善の行動は、速やかにそこから遠ざかることである。

免責事項:本記事は金融・投資に関する助言を目的としたものではない。教育目的のみで提供されている。投資を行う前に、自ら調査するか、資格を持つ専門家に相談してほしい。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
マイケル・ウィルカーソンは、戦略アドバイザー、投資家、作家です。ウィルカーソン氏は、Stormwall AdvisorsおよびStormwall.comの創設者です。彼の最新の著書は「Why America Matters: The Case for a New Exceptionalism」(2022年)です。