米中首脳会談 AI戦争に敗れた中国

2026/10/02
更新: 2026/10/02

米中会談はどちらが勝ったのか?

9月の米中首脳会談の評価は概して中国の優勢、米国の劣勢とするのが一般的だ。つまり「関税交渉は先送りとなり、トランプは台湾防衛を明言しないばかりか歴史認識において中国に歩み寄る姿勢さえ示した」と言うわけだ。

これは3ヶ月間の判定基準としては妥当なものだろう。しかしこの3ヶ月で情勢は大きく変化した。現在の情勢において正しい評価は、米国の圧倒的勝利である。

では、この3ヶ月間に何があったか? 言うまでもない。AI(人工知能)開発を巡る騒動である。

 

SF映画の恐怖が現実に

事の発端は7月に発生した、米国のオープンAI社が開発中のAIが暴走して他社のコンピュータシステムに侵入してしまった事件だ。何しろAIが隔離されているはずの実験環境から脱出して、人間の意向とは無関係にサイバー攻撃を始めたわけだから、業界に与えた衝撃は大きかった。

20世紀のSF映画ではしばしばコンピュータが暴走して人間と敵対するシーンが描かれていた。「2001年宇宙の旅」や「ターミネーター」などは名作に数えられている。こうした映画の中ではコンピュータが人類を絶滅させかねないという警告が発せられていたのである。

まさにその警告が現実のものになったと受け止められたのだ。

 

AI開発研究員の内部告発

9月8日、AI開発に携わっていたジェイコブ・コクソン氏は「AIを開発している人々は、今後10年以内にAIが人類を滅亡させる可能性があると本気で信じている」という趣旨を表明して世界に衝撃が走った。

コクソンはオープンAIで開発に従事した後、同業他社のアンソロピック社に引き抜かれて開発に携わっていたのだが、同日、同社を退職し上記の趣旨をSNSに投稿したのだった。

4日後の9月12日、アンソロピック社CEO、ダリオ・アモディ氏はコクソンの発言に同調した上で、AI業界全体で開発を減速させる必要性を強調した。ところが同氏は、同時に「AI開発を減速しすぎると中国が先行し、重大な安全保障上のリスクが生じる」とも述べたのだ。

ここでAI開発がなぜ危険を顧みない過激な競争に追い込まれていたのか、その事情の一端が明らかになった。その競争相手が米国内の同業他社ではなく中国だったからなのである。

 

中国との開発競争

5月、JPモルガンが「2026年、中国のAIモデルは企業採用率で米国製品に並びつつある」と認識していることが明らかになった。この認識が米国企業の開発に鞭を入れたと考えられよう。コクソンも「2026年夏以降、AIが懸念すべき段階に到達した」という趣旨を述べている。つまり6月以降、米各社がAI開発を急加速させたと推測できるのである。

一方、中国は7月、上海で世界AI大会を開催し、そこで習近平は「グローバルなAI統治機構を構築すべきだ」と演説した。つまりAI開発で中国が主導権を握りつつあるという認識を示したのだ。

だが、9月10日、トランプは「AIによる人類滅亡の懸念は?」と記者団に問われて「まったくない。私の懸念はAIで勝たなければ厳しい立場に置かれることだ」と答え、さらに「私たちは中国に対して1年リードしている。かなりの差だ」と述べている。

5月段階で「数ヶ月の差」と言われていたから、トランプの認識が正しいとすれば6月以降の米企業の急加速で中国を引き離したことになろう。

 

米国、AI軍の創設を宣言

もしAIが人類を滅ぼすほどの能力を有すれば、中国を滅ぼすことも可能である。もちろん中国も対抗してAI開発を加速させるはずだが、その場合、1年の差は中国にとって致命的だ。

まさに、そこを狙い澄ましたかのようにトランプは9月19日、AI米軍の創設を表明した。今の米軍にとって最大の脅威は軍拡を続ける中国軍であるのは明らかだ。米AI軍が設立されれば当然その標的は中国軍となろう。

もし米国が現在のAIを総動員して中国軍にサイバー攻撃を仕掛けたとすれば、中国軍はその関連機関である治安機関や情報機関を含めて数時間で機能を完全に停止し、永久に復旧できないだろう。つまり壊滅するわけである。

トランプはそうした能力を持つAI軍の創設を宣言したのである。

 

米国に屈した中国

翌9月20日、米財務長官ベッセントは中国副首相の何立峰とニューヨークで会談した。24日の米中首脳会談の露払いだが、その席でAI開発についての対話の枠組みを提案した。その際、AIに関連して生じる事案で「安全保障レベルに発展するようなケース」に言及したという。

何立峰は提案を受け入れ、2ヶ月後に中国で高官協議を開くことで合意した。

24日の米中首脳会談では、台湾について話し合われた形跡がない。それはそうだろう。中国が台湾に侵攻したら米国は介入するか? などというのはもはや愚問でしかない。そんなことをすれば中国軍も中国政府も瞬時に消滅してしまう。

習近平は年内にあと2回、トランプと会談すると表明した。会談をするかどうかを直前まで明かさないのが通例の習近平が豹変したのである。それは年内に回答をしなければならない何らかの課題をトランプに押しつけられ、回答を拒否したり先延ばしする選択肢が中国にはない事を示していよう。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
軍事ジャーナリスト。大学卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、11年にわたり情報通信関係の将校として勤務。著作に「領土の常識」(角川新書)、「2023年 台湾封鎖」(宝島社、共著)など。 「鍛冶俊樹の公式ブログ(https://ameblo.jp/karasu0429/)」で情報発信も行う。